エヴァとのお話編です。
テストとレポートが一段落ついて……いないのですが、時間が空いたので更新します。
第弐拾陸話 妹と『闇の福音』と襲来警報
「……どうぞ」
「お気遣い、有難うございます」
まさか吸血鬼の家に来て、玉露を出されるとは思ってもみませんでした。
まぁ、美味しいから喜んで頂きますけどね。
玉露を淹れてくれたロボットさん——
「綺羅川 子日といったな」
「はい、そうですが?」
「“
「
「————————————————————————フフ、そうだな」
『闇の福音』————一見いたいけな少女、いや幼女にみえますが、保持している力はあまりにも強大——の、はずなのですが……。
「『闇の福音』? 貴女が? 確かに魔族でしょうけど……此の魔力はないでしょう」
殺気を受け流しつつ、もう一口。
………………………ほ。
一息つくって大切ですね。
「……チ。忌々しいが、魔力が少ないのは本当だ」
「封印でもされましたか? 貴女ともあろうお人が」
「買い被ってくれるじゃあないか、え? あの綺羅川の姓を持つ者が」
「誤解を招かないでいただきたいのですが、私は其処まで強くありませんよ?
修業も始めて一〇年かそれくらいですし、まだまだ世間知らずのお子様です」
「それにしては大胆不敵な真似をしてくれる。如何に魔力が封じられていようと、此処が
其処まで言って、『闇の福音』は流し目で横を見ました。
私もつられて見てみると、其処には油断なく構えを取る茶々丸さんの姿が。
「そもそも自身が世間知らずであることを自覚している世間知らず程、
おまけにこの状況下において、貴様はかなり余裕のようだ。自ら虎穴に飛び込んできておいて良く言うわ」
余裕……ではありません。
実は私、対人戦闘を始めとする実戦経験がほとんどありません。
ずっと術の開発や能力の掌握、あとは『
まぁ、あれは組み手という名の
つまり……手の内を知らない相手と戦うのは久しぶりということです。
それも、相手は生半可な実力者ではありません。目の前にいる真祖の吸血鬼然り、ロボット少女然りです。
ですが、此処には“空気”があります。
空気があるということは“水分”もあるわけで、水気があるところなら最高です。
それこそ、四方八方燃え盛る業火に囲まれてもいない限り、私の“能力”は衰えません。
水分がなくとも、自身の水分や血液を操れば良いですし、体術や普通の西洋魔法も使えます。
……いや、そもそも最初から喧嘩腰なのも良くありません。兄さんのため、此処で『闇の福音』との関係が悪化するのも考えものです。
今、両者を繋ぐ関係は全く成立していません。
あの従者は彼女たちのことを全く無視していたのでしょうか?
理由は?
脅威になり得ないから?
潰したところでメリットもないから?
……どうせ来るなら、その辺りのことを聞いておくべきでしたね。
答えてくれたかどうかは分かりませんけど。
できれば、此の吸血鬼には兄さん寄りの中立になって欲しいところです。敵対してくれなければそれで良い。
「私のクラスメイトに、二人の綺羅川がいる」
突然、そんなことを言ってくる『闇の福音』。
……
あ、兄さんが言っていましたね……「諸事情で預かっている子たち」と。確か……アスナとセツナでしたっけ?
「あの二人に接触しようと思ったが、ものの見事に無視されたよ。その途端に
『闇の福音』は其処まで言って、ようやく腰を下ろしました。
「何がしたいんだ、貴様たちは? 貴様たちが陰で麻帆良を握っていることくらい、私は知っている。
その正体が『
「その言い方には少し語弊がありますね」
「……何?」
「今回のことは私の独断です。
貴女のクラスメイト二人の行動については、私も認知外ですし……」
そもそもまだ、顔合わせもしていませんからね。
まぁ、十中八九、あの従者が二人に指示を出したのでしょうけど。
「それに言ったでしょう?……『脅威かどうか確かめに来た』と」
「ふむ」
思案顔になる『闇の福音』。
「手を出すな、ということか?」
「ええ、概ねそんな感じです」
「私がそんなことをしても、メリットなどないぞ」
「『闇の福音』ともあろうお人が、見当はずれな答えを返しますね。
では逆にお聞きしますが、
「ふむ。言ってくれるじゃあないか」
「間違っていますか?」
「……いいや」
『闇の福音』は組んでいた腕を解き、ニヤリと笑いました。
此れが様になっているのが不思議ですね、見た目幼女なのに。
……いや、私も今はもう長身ではなくなりましたから、あまり人のことは言えませんか。
「万全の状態でなら兎も角として、
そもそもあの『絶望の白』の戦い方を知る者は殆どいないし、『狂乱の主』に至っては魔法使いかどうかも良く分かっておらん。もはや伝説級の存在だな」
「貴女に言われたくはないと思いますよ? 悪い子を食べてしまう、御伽噺の吸血鬼さん」
「人をなまはげみたく言うなッ!」
いや、実際なまはげのような扱いでしょうに、とは勿論声に出しませんし、勝ち目が薄いどころか存在しないことも伝えません。
まぁ、『闇の福音』は相手の実力を見誤る程莫迦ではないでしょうから、直接会えば実力の差に気付くでしょう。
教える義理もありませんしね。
「コホンッ! それは兎も角、貴様も
魔力を封じられようとも、真祖の吸血鬼である私の研ぎ澄まされた五感は消えん。
貴様の気配や臭いは、人工物のそれだ」
「御明答です。流石は『闇の福音』」
まぁ、教えるつもりはありませんけど。でも、一応は心の中で賛辞を送っておきましょうか。
「しかし、流石に何も報酬がないのでは、動く気にはなれんな」
「でしたら」
そう、でしたら————————————————ん?
…………………。
何で従者が此処にいるんだぁああああああああああああああああああああああッ!!!???
「……何しているんですか、従者」
「羽蟲が籠から出てしまったので、様子を見に」
………………本当、イチイチ腹が立つメイド野郎ですよねー。
うっかり殺してしまいそうで怖いです。
従者は『闇の福音』を睨み、何気なく呟きました。
「その封印の解除が報酬————というのは如何でしょうか」
「———————————————————————————貴様ッ『
「答えなさい」
……あれ? 機嫌が悪いようですね……。
…………………………………………………あ、原因私か!
「……解けるのか?」
「当然です。では……」
そう言って、従者は指を鳴らしました。
あ、パキンと音が響き——解けましたね、此れは。
封印や解呪については門外漢ですが、そのくらいのことはわかります。
「こ、これは……フ、フフ、フハハハハハハハハハハハ!!
解けた!! 忌々しいあの莫迦がかけた呪いが、遂に解けたぞ!!!
此の私、エヴァンジェリン=A=K=マクダウェル、いや、『
そう言って、今にも小躍りしそうなほどにテンション高く叫ぶ『闇の福音』。
ていうか何ですか、その『ようやく封印が解除されたら主人公たちに倒されたラスボス』みたいな台詞は。ラスボス(笑)臭がぷんぷんするのですが。
……まぁ、いいか。あんなイタイ人は放っときましょう。
「茶々丸さん、もう一杯お願いします」
「はい、綺羅川様」
「あ、綺羅川だと兄さんやそこの白メイドとかぶりますので、子日と呼んでください」
「かしこまりました、子日様」
……何かイイですね、この子。一家に一人欲しいです。
それはそれとして。
「従者、良いんですか? あの
「問題ありません、
其処まで言って、従者は
「自身の足元に蜂が出てくれば、蠅共もマスターどころの騒ぎではないでしょう。
そろそろ潮時かと思っていましたし、今はもう明日菜と刹那が
……それに、“厄介な情報”も入っていますから」
「厄介な情報?」
「ええ。……
……あぁ、すごく嫌な予感がします。
具体的に言うと……厄介事しか起こさないような人が襲来してくるような、平穏を壊すフラグが立ったような……決めました。
麻帆良学園に通いましょう。そして、兄さんを護らなくては。
次回からネギ襲来編……もとい、原作突入する予定です。
ネギアンチが多分に入ることもあるかもしれませんので、御注意ください。
子日は2−Aメンバーに加わる予定です。
200万超えた記念ですが、グラムサイト2様より頂いた『榛名の誕生日会編』と、ケフィア様より頂いた『明日菜と刹那の教育編』を予定しております。原作突入後、少ししたらそれを書く予定です。
グラムサイト2様、ケフィア様、アイディア有難うございます。
御意見御感想宜しくお願いします。
追加の補足説明
子日の性格や行動についてけっこう言われているのですが、彼女はもともと榛名の消極性をカヴァーするために創作したオリキャラです。
一見思慮深く生真面目で優等生気質なのですが、彼女は兄のことが絡むと急に暴走しがちとなります。
よって短絡的に行動したり、勝手に色々引っかき回したり、思い立ったが吉日という精神で行動するのはある意味では彼女のウリです。
よって、生温かい目で見守って下されば幸いです。
追加の補足説明②
ネギの境遇についてです。悪魔襲撃は原作ままですが、本作のネギは村で両親(ナギ&アリカ)とともに暮らしていました(但し秘匿しています)。そして両親も諸事情で動けなくなっておりまして、麻帆良に来ません。
そのためネギはファザコンではなく、魔力制御も原作よりかはマシになっています。
唯、連合の教育が原作より遥かにナショナリズム(?)傾向にあるため、歪んでいるところは原作よりも歪んでいます(あくまでも少し、ですけど)。
両親も教育に集中できているわけでもないので。
そんな設定です。