更新が一時途絶えてしまって申し訳ありませんでした。
200万記念……と言いたいところなのですが、一カ月の間に300万を超えてしまいました。
よって、300万突破ということで。
なんてこったい。
300万アクセス突破記念 過ぎゆく日々
榛名の誕生日会編
此方の世界にやって来た日にしようとも考えたんだけど、自分の“誕生”した瞬間をはっきりと記憶しているのは、どうにもしっくりこない。
まぁ、どうでもよかった、というのが本音だった—————んだけれど。
誕生日というものは、本人が自覚していようがいまいが、本人にとって特別だろうが歯牙にもかけない事だろうが、生きている限りは毎年やってくる。
そんな当たり前のことを、我が従者は思い出させてくれた。
最初はデザートだと思ったけど、薄く笑ったハクから「御誕生日おめでとうございます」と言われて、僕はようやくそれに気付いたわけだ。
それが、僕とハクの記念すべき第一回目の誕生日。
その後も、ハクは毎年毎年様々な方法で僕の誕生日を祝ってくれた。
ケーキが豪勢になったり、二人でダンスを踊ったり、ハクが歌を歌ってくれたりとか。
でも、こういう奴っていうのは、大概“一周”するものだ。
つまり、豪華にしよう、その次の年はもっと豪華にしよう……とかそんな感じになっていくうちに、いつの間にか原点復帰して、シンプルな(味気ないという意味じゃあない。当然だけどさ)ものになってしまう、というわけだ。
“規格外”という点では、誰かに引けを取らないどころか、大人げない程の完全独走で突っ走っている我が従者も、その点においては例外ではなかったらしい。
最近はケーキと紅茶のセットだけとプレゼントという、無人島で二人でバカンスしていた頃に比べれば、随分と
もっとも、それは明日菜とか刹那といった新たな面子が加わって、僕が知る“誕生日パーティ”というものに近付いた(近付かざるを得なかった……ともいえるかもしれないけど)というのも、多分関係しているだろうけど。
前世の時は、まぁ大学生だったし、カラオケ行ったり飲み屋に行ったりして祝うのが、僕と遊び仲間らの常だった。
勿論、“長いものには巻かれろ”がモットーの僕としては、誘われればついていくし、自分が主人公だったら即答で是を唱えてたからね。
そんなわけなんだけど。
僕の誕生日パーティは、明日菜や刹那が来て以来原点復帰して……同時に、ちょっと荒っぽくなった。
綺羅川 ハクは、榛名のサポートのために生まれた存在である。
それは、何も戦闘に限った話ではない。家事などの生活面をサポートするという分野においても、彼女は文字通りの意味での“万能”だった。
その
といっても、所要時間は精々二、三分。
それだけで、テーブルの上にはホールケーキが置かれて甘い匂いを漂わせる。
ハクにとって、榛名のケーキを作ることは完遂しなければならない重要な仕事だが、それに
彼女の第一の仕事は、榛名の傍に寄り添い、榛名を護り続けることだ。
手抜きはしない。が、時間をかけたりもしない。
ハクは、
正確には、ケーキの前に「複数の」という描写が入るだろう。
テーブルの中央に陣取った綺麗な造形のケーキを挟むように(牽制してるように見えなくもないのが不思議である)、手作り感溢れるケーキが一個ずつ置かれている。
ダージリンの香りがポットから漂ってきたのを確認しつつ、ハクは無機質な瞳を、真横に向けた。
そこにはエプロンを脱ぎながら、一仕事をやり終えた後のような達成感に満ち満ちた顔の
「…………」
「え? ハク様?」
此処に来て、刹那はハクの視線を感じて顔を蒼褪めさせた。
ハクのことを知っているのなら、ハクは刹那に何の興味も持っておらず、言葉を発しないのも単に言葉を発する必要性が無いだけだと気付くのだが、それでも怖いモノは怖いのである。
綺羅川家のキッチンは広い。
三人が占領して同時に料理をしても、それ程支障はない(はず)。
大体、刹那たちが目障りだったら、ハクはとっくに二人を叩き出していただろう。文字通りの意味で、である。
無論、刹那と明日菜もそれを承知しているから、ハクが二人のキッチンへの“侵入”を許可した時点で、二人はケーキ作りに精を出すことにしたのだが…………。
「…………………………」
案の定、ハクは刹那達から視線をずらし、ティーポットに視線を戻した。榛名の舌の適温となるよう調整しているのだろう。
それを確認し、刹那と明日菜は互いを見合わせ、あからさまにホッとしたように肩をすくめあった。
綺羅川家では、(榛名を除いて)ハクの機嫌を損ねれば、生存確率は確定的に下がるのである。
「あとは、プレゼントが……受け取ってもらえるといいな」
明日菜のこの一言を、周囲の二人は聞かなかったことにしておくようだ。
というより、全員同じようなことを考えていたからだろう。
訪れた沈黙は、榛名が階段から下りてくる音が響くまでは、その場を支配し続けていた。
明日菜と刹那の教育編
「拷問と訓練の違いって、何だと思います?」
綺羅川 刹那をしてこう言わしめたのが、綺羅川 ハクによる刹那と明日菜の教育である————などと、ちょっと現在の状況を客観視s————
「あ、刹那、死んだ」
ウンザリしたような悟りきったような口調が耳に入ると同時に、私は激しい痛みに悶絶する羽目になりました。
……ええ、どうせ私には、説明なんてできませんよ。客観視したうえでの論理的説明なんて到底無理ですよ。血反吐吐いて倒れているほうが、性に合ってますよ。
なんて考えているうちに、顔面に膝蹴りを喰らわされ、私は数回転しながら吹き飛びました。
「……進歩なし、ですか」
顔をあげると、いつの間にか目の前にいたハク様が溜息をついています。
明日菜は……うん、予想通り、血の海に沈んでいますね。
「本気の刹那も出していない私相手に、〇,一秒で一万回殺されるとは……それでは、マスターの足元に跪く資格すらありません」
身体のけがや疲労感が回復していくのを感じ、私は立ち上がりました。
足元に転がっていた太刀を拾い、私は再び構えを取ります。
負けたくない。
勝ち目なんてあるわけもない————でも。
どんなに憂鬱でも、報いなきゃいけない人がいる。
「……それで良いのです」
長い脚で地に立ち、長い手を私に向けながら、ハク様は無表情のままで命じました。
「進み続ければ、貴女もそれなりに輝くでしょう。しかし————」
其処まで言って、ハクは一息ついた。
そして、戦闘服に包まれた美しい身体は、刹那という少女を喰い殺す牙となる。
「そろそろ、マスターのティータイムの時間ですので、とっとと消えなさい」
その言葉とともに、私の意識は完全に途絶えた。
「……たまーに、普通に家事の教育とかあるから、拷問とはまた別でしょう?」
「明日菜……。ですが、実戦訓練などの戦闘訓練によっては、最早拷問のレヴェルですよ……。
実際、それまがいなこともされたではないですか。対拷問訓練ってヤツです」
「ああー。……でも、あんな拷問を例としてやるのは、ハクだけだと思う」
次話からは本編です。
ハクと榛名もようやく出てきます。
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