前話の補足説明。
ネギはのどかを普通に(軽く身体強化しましたが)助けました。明日菜にも目撃されていません。
今話はドッジボール編です。
第弐拾玖話 妹の奮闘と先生観察
前世の時の私にとって、体育がある日は不幸の誕生日でした。
私は運動神経がからっきしで、走れば転び、ドッジボールは真っ先に脱落し、サッカーは適度にDFの位置を動き回っていました。
此の世界にやって来た今も、それは変わりません。
勿論、以前とは運動神経は比較にならないのですが、どうも苦手意識がこびり付いてしまっているというか、嫌悪感があるというか。
高い戦闘能力を持つと言っても、同時にスポーツが得意になるわけでもないのです。
要するに、今も昔も体育の授業は嫌です。
「子日、行こう」
明日菜に呼ばれ、私は渋々ながら頷き返しました。
嫌いですが、出なくて良い理由にはなりません。
帰っていいですか?
何か目の前で、数人がもめています。
クラス委員長の
ちなみに、此処は女子中等部校舎屋上にあるバレーコートです。
バレーは苦手なんですよね。
十中八九、顔面セーブする羽目になりますから。
……逃避している場合じゃあないですね。
私は前世の時はクラス委員長とかを務めていましたが、麻帆良に来てからはその役目を雪広さんに譲っています。
私が今まで委員長とか務めていたのは、周囲に推薦されたというのが大きく、自ら望んだことはありません。苦痛だったというわけではありませんが。
しかし、このクラスにはやたらと気合十分で立候補してくれる方——まぁ雪広さんなのですが——がいてくれたおかげで、私が委員長になることはありませんでした。
ですが、どうも雪広さんは熱いというか何というか、高飛車というか自信家というか……“我が強い”というのが一番適切ですかね、兎に角そういうところがありまして…………冷静さに欠ける人です。
まぁ、このクラスで“没・個性”を探すほうが難しいですし、我が強くなければ率いることなどできないのですけど。
兎に角、これは……ええと、高畑先生は……所用でいないのでした。
ああもう、本当に何で担任やっているのか分からないくらい役立たずですね。
じゃあ、スプリングフィールド先生は……って、体育の授業にあの先生がいるわけないじゃあないですか。あの人副担任ですし、英語教師ですし。
横を見ると、明日菜が私を流し目で見ていました。
Go?
行けと?
私、人見知りなのですが……ふぅ、委員長時代を思い出しますね。
「はぁー……わかりましたよ。明日菜、刹那、フォロー頼みましたよ」
「やる気はないけど、わかった」
「え? 私もですか?」
流石にあれは……抗争が勃発しそうな勢いですし、いい加減に止めておきましょうか。
ていうか、貴女たち、どれだけやりたくないんですか。
本ッ当に可愛げのない……。まぁ、あの従者に比べれば京倍マシですけど。
「雪広さん、そして皆さん、一先ず落ち着いてください」
「子日さん?」
「ネノ、どうしたの?」
人垣をかきわけ(決して威圧してどいてもらっているわけではありません。無表情で相手を見つめるだけです)中心部へと向かいます。
ちなみに、“ネノ”とは私の渾名です、双子の
前世では名字+さん付けがデフォルトだった時と比べると、なかなか新鮮でイイですね。
「雪広さん、委員長である貴女が率先して噛み付いてどうするんですか?」
「うッ……しかしですね、子日さん……」
「しかしも
「それは……」
「貴女方も、です」
言い淀む雪広さんを取り敢えず無視し、ウルスラ女子高生の方々に向き直ります。
理由を聞くと、自習が
向こうは自習でしょうが、此方は正規の通常授業。先生はいなくとも、その点に変わりはありません。
故に、優先順位なら此方にあります。
それに、高等部の生徒が此方に出張ってくるのも妙な話です。
「申し訳ありませんが、無断での使用を不用意に認めるわけにはまいりません。御退出を願います。
最悪の場合……」
「子日さん、子日さん」
其処まで言って、肩を刹那に叩かれました。
彼女の指先を見ると……。
「スプリングフィールド先生」
慌てた様子で汗をかきながら、屋上へ通じる扉から出てきたのは、此方の副担任でした。
そして、その後ろには、
「お前達、何をしておるか!」
「げっ」
あの人は……推測ですが、ウルスラ女子高生たちの担任か、広域指導員かその辺りでしょう。
あとで聞いた話なのですが、スプリングフィールド先生は私たちより少し前に来て、この騒ぎを見るや否や引っ込んでいったそうです。
おそらく、自分では収拾不能と判断して応援を呼びに行ったのでしょう。
ウルスラの校舎は、此処から然程離れてはいません。
その応援の先生はスプリングフィールド先生と私たちに頭を下げ、私たちも下げ返しました。
乱闘騒ぎ直前になったのも事実ですからね。
そして招かざる客+αが帰った後、ネギ先生は号令をかけました。
体育の教師が都合でいなかったため、彼が任されたようです。
私の部屋は、女子寮の古くて物置扱いになっていた部屋です。一人部屋です。
最初はクラスメイトの
修業時代に色々と稼ぎましたからね。水を操って宝石を研磨したりとか。
まぁ、標準的な女子寮の部屋に戻しただけですけど。
スプリングフィールド先生のことは、兄さんから色々と聞いています。
教師としても人間としても、評価はできても尊敬はできない……そんな感じですね。
同年代の子供に比べれば、優れた部分も色々とあるでしょうけど。
見たところ、拙いなりに真面目にやっていますし其処は評価できますが……魔法使いとしての点は、どうでしょう?
秘匿に関しては今のところ文句ありませんが、それはあくまで最低基準です。秘匿されなければ話になりません。
実力に関しても、ある程度は把握できます。ていうより、戦うことを想定する意味もありません。
問題なのは、魔法使いとしての矜持や価値観です。
私たちや兄さんのことが万一にも知られたとき、どうなることか……あまり想像したくありませんね。
……………………しゃしゃりでてきた私が言うのも何ですが、学園は何を考えているのでしょう?
案外、何も考えていないのかもしれませんね。
さて……兄さんを護ると意気込んで来たわけですが、普通に学園生活を満喫してしまってますね。
まぁ、私自身中学くらいは卒業しておきたいですし、兄さんもそれを望んでいるでしょうし……此れは此れで一向に構わないのですが……。
考えてみれば、先生だけでなく学園全体で何らかのアクションを起こす可能性もあるわけですし、今回ばかりは迂闊に動くのは下策ですね。
そもそも、先生に私のことを話しても、コンタクトを取ってもメリットは何一つありませんし。
私の予感が正しければ、スプリングフィールド先生が正式に教師になった時点で、何かが起こる気がします。
……どのようにして決めるのでしょうか?
この時点で、どうにも嫌な予感がするのですが。
今週末に実家に帰省するため、更新が一時期途絶えます。
来月まで更新できなくなるかもしれませんが、御容赦ください。
次回は200万アクセス突破記念を投稿する予定です。
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