今回は始めが明日菜視点、残りが第三者視点でお送りします。
第参拾参話 動き出す英雄の息子
翌日。
酷く落ち込みながらも、何とか授業をしていた(生徒に落ち込んでいたと悟られる時点で問題だと思うが)ネギは、サラリと
パートナ云々でまきちゃんとか
「何か来た?」
「感(反応)のサイズからして、ヒトではないな。小動物……若しくは使い魔・式神辺りだろう」
「アレかもしれないな」
「あれ?」
刹那と話し合っていると、刹那の横で我関せずと突っ立っていた真名が口を開いた。
「オコジョ妖精」
「あぁー……」
オコジョ妖精。
魔法世界には“オコジョ刑”と言う刑罰がある。文字通りの意味でオコジョにされ無償奉仕をやらされるか、収監所に収監される刑罰だ。彼らも、オコジョ妖精の一種となる。
オコジョ妖精には特定の人物に関する他者からの好意を計り取ることができたり、特定の魔法使いの運命的なパートナーの存在を感じ取ることができたりする能力があるという。早い話が、使い魔としてなかなか優秀な存在だ。
「誰かのオコジョ妖精が、紛れ込んだのかな?」
「……その“誰か”について、物凄く嫌な予感がするんだが」
刹那の勘はよく当たる。
後になって、そのことを嫌というほど思い知ることになった。
ネギ=スプリングフィールドは、父親と母親とともにウェールズに住んでいた。
しかし、とある事情(ネギは知らない)によりほぼ隠居している状態で、ネギも周囲のほとんどの人間に両親と暮らしていることを隠していた。そして両親は、スタン老やメルディアナ校長にネギを預けてはしょっちゅう雲隠れしていた。今も、何処で何をしているのかはよく分かっていない。
しかし、ある程度の常識は(主に母親から)教わっていた。魔法の秘匿や危険性などだ。
が、常識はあくまで常識、それも限定された常識だった。
自身が受け持つ生徒に凶悪な元賞金首がいるなど、完全にネギに対処できる“常識”の範疇を超えていた。
そして、自身が完膚なきまでに(しかも従者に)敗北したという事実に打ちのめされていたネギには、学園長に報告するという基本的なことすら失念していた。
「なんとかしなきゃ……“
ネギの両親は教育を半ば他者に丸投げしていたせいで気付きもしなかったが、昨今の連合配下の魔法教育機関の教育は酷いものだった。
経済破綻、戦争の敗北によるメセンブリーナ連合の崩壊(分裂)の危機を防ぐため、戦争の大敗をできる限り隠蔽し、生徒に愛国心や西洋魔法使い絶対主義を骨の髄まで叩き込んでいた。
幸いなことに現実世界では、すでに連合に見切りをつけている組織も多かった。
が、周囲を敵に囲まれた麻帆良学園(関東魔法協会)は、連合との縁が切れればそれこそ終わりだ。しかし、こんな戦時教育まがいなメチャクチャな教育は、何とか防ぐことができた。
元々、日本出身者も多い麻帆良で、本国(連合)への愛国心を育てること自体が無茶だったのだ。
しかし、メルディアナは防げなかった。
“英雄の息子”がいるのだから、ネギのカリキュラムは全て逐一連合からの
勿論メルディアナは反発した。内政干渉も甚だしいものだったから当然と言えよう。
が、結局本国には逆らえなかった。
連合の教育は、魔法戦力が絶対的に不足していたことから、魔法使いを増やすことに焦点が与えられた。簡単に言うと、“
帝国の脅威をひたすらに叫び、魔法使いを“国防の要”とし、
無論、実際の戦争を知る者は此れを冷笑したが、戦後生まれのティーンズは此の影響を少なからず受けていた。
それこそ、ネギのように“
「何とかしてマクダウェルさんを……あの人を止めれば、僕は……」
ネギの中で、使命感が業火の如く燃え盛っていた。もっとも、それが“使命感”などではなく“野心”であることに、当のネギは気付いていない。
「兄貴、ネギの兄貴! 助けにきやしたぜ!!」
その日、
「……絡繰さん」
多分に緊張を含んだ声で
其処には、肩にオコジョ妖精を乗せたネギ=スプリングフィールドが立っていた。
その気迫に並々ならぬ気配を感じた茶々丸は、如何考えても友好ムードではない空気を感じ取りつつ、警戒態勢を取る。
「絡繰さん……マクダウェルさんを止めるのに、協力してくれませんか? このままでは、生徒に危険が及びますし……僕も、覚悟をしなくてはなりません」
覚悟、とは何だろう? と茶々丸の
無論、“覚悟”という単語の意味を考えているわけではない。その言葉を此処で言い放った、ネギの真意を考えているのだ。
魔法世界でも屈指の実力者『
或いは……
「協力してくれますか?」
何処の世界に
もっとも、自分はエヴァンジェリン=A=K=マクダウェルに従うだけの従者である以上、例え平身低頭で頼みこまれたとしても「Yes」という選択肢などないのだが。
「そうですか……では、仕方がありません。“
ラス・テルマ・スキル・マギステル————」
どんな理由ですかと、思わず口に出しかけつつ、茶々丸も武装を展開する。
まさか、“
しかし、この戦い————そもそも戦ってもいないのだが————に、突発的な乱入者が現れたことは、双方にとって誤算だった。
ネギ、そしてオコジョ妖精アルベール=カモミールがバッタリと倒れたのである。
「認識阻害すら無しの魔法使用、加えて……生徒に対する暴力行為未遂、見過ごせませんね」
連合の教育の犠牲者ともいえるネギですが、本作ではネギアンチを貫きます。
子日は茶々丸と仲が良く、猫への餌やり場で待ち合わせをしていた時に尾行中のネギを探知。咄嗟に隠れて様子を窺っていました。
そしてネギが攻撃に入ろうとしたので、催眠魔法でネギとカモを眠らせました。
ネギとカモの最悪コンビ結成。魔法協会のリミットが加速する……!!
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