吸血鬼編は本話で終了です。本作ではあくまでネギは脇役ですので、ネギの戦闘などの詳しい描写はあまりしません。
あと、今回は短いです。
第参拾肆話 妹と娘達の不燃ピリオド
「幾ら喧嘩を吹っ掛けられたからとはいえ、白昼堂々結界も張らずに攻撃を仕掛けるのは厳禁でしょうに……人通りが少ないとはいえ此処は学園。近くに人がいない保証などありません」
「……茶々丸さん」
「……子日さん」
子日は茶々丸を見ると、静かにため息を吐いた。
「……貴女が『
「……妥当な判断です」
「………まぁ、今回の件を学園側が仕組んだのなら、茶々丸さんや『闇の福音』は罪には問われないでしょうね。
一応、学園側にバレないように色々と細工をしていますが、問題無いでしょう。西と東の間で交わされた人員交換派遣協定……これにより、優秀な麻帆良教員の大部分が西に行きました。代わりに麻帆良にやってきたのは、本国から体の良い左遷となった連中です。
こういった
麻帆良に送られてきた連中はほとんどが三番目ですかね。今のところ、麻帆良に残っている戦力でマトモなのは学園長を除いて……高畑先生、ガンドルフィーニ先生、シスター・シャークティくらいでしょうかね。後は新人か西洋魔法絶対主義者か、或いは
其処まで言って、子日は無表情だった顔を皮肉げに少し歪めた。
「つまり、麻帆良の警備・監視網はかなり落ち込んでいます。誤魔化すのはそうそう難しいことではありません」
「…………」
それを茶々丸は無言で返す。彼女にとって、子日は大事な親友だった。だが、彼女は従者の立場だ。マスターの命令に従わなくてはならない。
それでも————
「……助けていただき、有難うございました」
「私は喧嘩が始まりそうでしたので、仲裁しただけです」
子日はネギとカモを抱えたまま、茶々丸に背を向けて歩き出した。
「ネギ先生、目に見えて落ち込んでいるな……」
「なんでも、再びエヴァンジェリンに決闘を挑み込んで……完膚なきまでにやられたらしい。魔法教師が結構騒いでいたよ」
真名の言葉を聞いて、私は頭を抱えました。もう今月に入っただけでも何十回目になるのでしょう……数えるのも鬱になります。
「『英雄の息子』だろうが何だろうが、一〇歳の子供が『
「封印状態なら大丈夫だと思っていた節があるな。そうは問屋がおろさなかったわけだが」
「……? 学園側は掴んでいなかったのか?」
だとしたら、ハク様の『闇の福音』を囮にするというお考えが根底から歪んでしまいますが……。
「勿論気付いていたさ。だがな、刹那。封印が解除された『闇の福音』を一〇歳の子供と戦わせようなどという案は、マトモな人間の思考からは出てこないだろう」
「……成程、反対を警戒し、上層部……学園長だけで握りつぶしていたということか」
となるとやはり、学園側の狙いはネギ先生に実戦経験を積ませること、そしてあわよくば倒して英雄の息子の
……馬鹿馬鹿しい。英雄譚じゃああるまいし、戦えば友情が芽生えるとでも思っているのでしょうか?
私でしたら、自分を封じた男の息子になど、良い感情を抱けませんよ。戦えば、溝はさらに増すでしょうね。しかも結果は、ネギ先生の惨敗で終わってますし。
まぁ、『闇の福音』は女子供を殺さない主義とは聞きますけど、“主義”は所詮何処まで行っても“主義”です。別に女子供を殺せば、自分が死ぬわけでもない。殺す手段だってそれこそ無数にあります。
「……まぁ、そこらのことはもういいだろう」
そう、ネギ先生のことは明日菜からしてみればそこそこの心配事かもしれませんが……私にとってはどうでもよいことです。お父様に頼まれたのなら吝かではありませんが……。
それよりも、今は。
「修学旅行……か……」
問題なのは、その行き先です。よりによって京都ですからね……。いや、一般人のみのクラスでしたら、何の問題も無いわけなのですが……関係者も多く、担任と副担任ともに魔法関係者である我が3−A。
クラスではハワイ行き派と京都行き派でモメにモメて、結局は京都に決定しました。
だから仕方がないと言えば仕方がないのですが、学園側が関西呪術協会を本気で警戒しているのならば、そもそも京都など“候補”にも挙がらないでしょう。
今や関西呪術協会は麻帆良以外の日本全土を手中に収めていると言っても過言ではありませんが、本山の京都でなければ、まだ目を瞑れたでしょうに。
「……やっぱり嫌な予感がする」
後になって、私は悟ることになります。自分の勘は、取り敢えず信じた方が賢明だと。
修学旅行編は原作とかなりかけ離れることとなります。
補足説明:吸血鬼事件
ネギはエヴァに決闘を申し込むも惨敗(+血も吸われる)。魔法先生(連合から派遣された西洋魔法絶対主義者)の手で回収された後、学園長から一連の事件が解決したと知らされる(エヴァがネギと戦う価値がなくなったと判断したため)。さらに、京都にナギの別荘がある事を知らせる。
吸血鬼事件は学園長が裏で糸を引いていた事件。エヴァは報復ができ、血も吸えるから了承。学園長はエヴァの封印が解けたことを知っていながら隠蔽。封印が無くとも、エヴァなら手加減すると思っていた。しかし、エヴァは手加減しつつも終始ネギを圧倒。
明日菜と刹那はネギの決闘では(ネギが自ら望んだのに加え、決闘を妨害するのは流石にまずいと思ったから)見物すらせずにノータッチ。
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