今回はまぁ中編みたいなものです
夕映編?はもう少し続きます
覚悟と『日常』
side 学園長
まさかこのわしがここまで追い詰められるとは恐ろしい子になったものじゃな
さすがは、いや、やはりナギの息子じゃな
「つまり、エヴァンジェリンに師匠になってもらいたい、その為の仲介をして欲しいと?」
「はい」
この子は自分が何を言っているのか分かっておるのかのぅ
「ネギ君、君は不干渉の証書を書いたはずじゃが?」
「はい、確かに僕は書きました。ですから学園長先生に頼んでいるんです!!」
屁理屈もここまで来ると立派じゃの
だが、認める訳にはいかん
「ネギ君、それは屁理屈というものじゃ。仮にわしが仲介したとしても最終的には君が関わる、
つまりは彼らに干渉してしまうのじゃ、そんな事を認める訳にはいかん」
「でも!!」
「でも、ではない!!逆に聞きたいのだが何故それほどまでにエヴァンジェリンにこだわる?今の君より強い魔法先生なら
いくらでも居ると思うんじゃが?」
「しかし、ここの先生達ではあのリョウメンスクナをたった一発で倒すことは出来ないと思います」
ぐっ、痛い所をつくものじゃ
どうする?考えろ、考えるんじゃ、近衞 近右衛門。伊達に出会った人全員に妖怪と呼ばれている訳ではない!!
あれ?なんか涙でてきた、おかしいのう止まらないのう
「あ、あの学園長先生?」
「む、どうしたのかの」
「いえ、急に涙を流すものですから」
「…………気にしないでくれんかの」
「はぁ」
「まぁ、とにかくこの話は諦めてくれんかの」
「そんな!!」
あぁ、面倒じゃのう
いっその事本人に任せるかのぅ
あれ?それいいんじゃね?
「わかった、ネギ君。そこまで言うのなら電話をしてやるわい」
「ありがとうございます!!!」
わしはエヴァに電話をかける
『なんだ?』
「わしじゃ、学園長じゃ」
『なんだ?私は今いそがしいのだが?』
「そう言わんでくれ、実はのネギ君がどうしてもお前さんに頼みたい事があるそうじゃ」
『おい、私たちが坊やの事を嫌っているのを分かってるか?』
「それは、まぁ。取り敢えず変わるからの!!」
『おい!!!』
「ほれ、ネギ君」
「は、はい。あのエヴァンジェリンさん、実は頼みが『断る』えぇ!?まだ何も言ってませんよ!!??」
『お前からの頼みなんて絶対に受けたくない。それにお前に関わっても私に何らメリットがないし
ムラサメに嫌われたくない。じゃあな』
「ま、待ってください!!」
電話は切られたようじゃな
「ネギ君、これで無理だということは分かったじゃろう?」
「うぅ、でも僕は強くならなきゃならないんです」
「そうは言ってものぅ、どうしてそこまでして強くなりたいんじゃ?」
「勿論、父さんみたいに立派な魔法使いになるためです」
これは酷いファザコンじゃ
「それは分かっておる。まぁ今回は諦めてくれぃ」
わしはそれだけ言うとネギ君を退出させた
ふぅ、本当に面倒な子じゃ
また短慮な行動を起こさなければいいのじゃが
想像したら胃が痛くなってきたわい
胃薬はどこじゃったかな
side 夕映
「ん?覚悟は決まったか?」
「はい、私はどうしても知りたいです。この世界を」
「………それは『日常』を捨てる覚悟か?」
やはり、この人が尋ねていたのは『日常』を捨てる覚悟
「…………はい」
「なら、試してやる」
青年はそういうと私に拳を向ける
「なにをするです?」
「言ったろ?お前を試す」
瞬間、経験のない私にもわかるくらいの巨大な気配が辺りを包む
そして、その気配が全て私に向けられる
殺される!!私は殺される!!なすすべなくただ虫けらの如く殺される!!
「………あ………」
私はそこで意識を失った
次に目を覚ますとそこは布団の上だった
「ん?目を覚ましたか」
私の横にはあの青年がお茶をすすっていた
「私は………?」
「気絶してた。まぁ当たり前だわな、本気ではないとはいえ俺の気をお前さんに向けたんだからな」
「…………私はどうでしたか?あなたのお眼鏡に適いましたか?」
「………あれじゃあ駄目だな」
駄目、その言葉が私に深く刺さる
「何故ですか………?私のなにが」
「覚悟が足りない」
「足りない?」
『日常』を親友と離れるほどの覚悟でも足りない?
「納得いってないみたいだな」
「当り前です!!」
「……口で説明してもいいんだがな、こういうのは見せた方が早い」
何をいっているのですか?
「ついてこい」
青年はそういうと部屋から出て行った
私は布団から起き上がりついて行く
私が連れてこられたのは屋敷の裏だった
そこには広大な畑が広がっていた
「これは?」
「見てわかるように畑だな」
「それはわかります。私が聞きたいのは何故ここに案内したのか、ということです」
「それなんだがな、お前さんはこの畑を見てどう思う?」
何を聞いてくるかと思えば
「何って広い畑だな、ということぐらいしか」
「まぁ、そうだよな。ちなみにこの広い畑は全部俺が一から造り上げたんだ」
「こんなに広い範囲をですか!?」
「そう、俺一人でだ」
「それは凄いですね」
「でだ、そんな俺だが『日常』を捨てているか?」
そんなはずがない、こんなに広く畑を耕しているのだ
殺すか殺されるかの世界でそんな余裕は生まれないはずです
「………いえ」
「だろう?つまりはこれがお前さんに足りないものだ」
「え?」
どういうこと?
わからないです
「お前さんは俺に『日常』を捨てる覚悟があると言った。だがそれじゃあ駄目だ。『日常』は捨てるもんではない
だが縋りつくものでもない」
「……『日常』があるから覚悟が出来る?」
「そうだ、『日常』があるからこそ、殺すか殺されるかの世界に入っても生きて帰ってこようという気になる」
そんなこと考えもしなかったです
「さてここまで説明してやったが理解は出来たか?」
「……はい、私はまだ覚悟がどういうものかを理解していなかったです」
「で、どうする?」
「また来てもいいですか?あなたの話した『日常』と覚悟は貴方だけのものです。なら私も私だけの『日常』と覚悟を
見つけてきます。その時に教えてください」
私は彼の目をまっすぐ見据えて言う
「くく、くはははははははははは!!いい目だ!!最初に見た時とはもう別物だ!!だが良い!!あの坊主の数万倍は良い!!
気に入った!!気に入ったぞ!!あぁお前だけの『日常』と覚悟を見つけたらもう一度此処に来い!!その時は本当に全てを
教えてやる!!」
青年はそう言うと屋敷に戻っていく
「あの!!」
私は声をかけていた
「なんだ?」
「名前だけ教えていただけますか?」
「………ムラサメだ。あぁ俺の名前は余り言うなよ?気に入った奴にしか教えてないし言わせるつもりはないんだ」
それだけ言うと青年、いやムラサメさんは屋敷に入っていった
私はその背中が消えるまで見続けた
彼の姿が見えなくなってから私も山を下りる
私だけの『日常』と覚悟
次に会うときを楽しみにしていてください
そんなわけでムラサメが完全に気に入るという話でした
すいません!!石を投げないでください!!