今回は正義vsムラサメです
ジャック?No、邪悪だ!!
side ???
魔法世界、メガロメセンブリア、一室
そこは見るからに高級志向の調度品で彩られていた
部屋の中心には円卓と15の席
現在、その席は全て埋まっていた
席に座っているのはいずれも此処メガロメセンブリアでは『立派な魔法使い』として
名をはせている者達だった
彼等は『立派な魔法使い』であるだけでなく上級議員の子息であることでも有名だった
勿論、彼ら自身もそれなりの役職についている
そんな彼らが一つどころに集まっているのには意味があった
「諸君、よく集まってくれた。この場に集まってくれた事に感謝の意を表する」
円卓に座っていた一人が席を立ちそう述べた
「挨拶はいい。アラン、俺達を招集したのは何が理由なんだ?」
「良い質問だ、私達は今まで『立派な魔法使い』として色々やってきた。
だが近頃は魔法使いとしての仕事よりも議員としての仕事の方が多いだろう?」
「まぁそうだな、別に悪い事ではないだろう」
「そうかも知れんが、このままでは私達は一議員で終わってしまう。
そこで私は提案する。歴史に名前を残さないか?」
アランのその言葉は部屋にざわめきを起こすには十分だった
「歴史に名を残す……。興味が無いわけではないが一体どうするんだ?」
「なに簡単な話だ。ある賞金首を狩る」
「賞金首?おいおいアラン、ボケたか?俺達は今までありとあらゆる賞金首を狩ってきたが
それだけで名前が残る訳ないだろう」
周りもその言葉に同調する
それも当然だろう、彼らは今までにかなりの数の賞金首を狩ってきたのだ
それでも賞金首を狩る程度では歴史に名を残すには至らない
しかし
「それは普通の賞金首なら、の話だ。人の話は最後まで聞くものだ。
私が提案する賞金首は諸君も、いや全魔法世界の住人ならば知っている奴だ」
その言葉で勘の良い者は気付いた
「……まさか」
「そう、そのまさかだ。魔法世界史上最高額の賞金首『代行者』を狩る」
瞬間、部屋に怒号が飛び交う
その内容はいづれも否定の言葉だった
「アラン、それは無理だ。君も知っているだろう?『代行者』はあの紅き翼でも討伐出来なかった
化け物だぞ?それをどうやって倒すと言うのだ」
周りもその言葉に続くがアランは薄く笑い
「だこらこそだ、あの紅き翼でさえも打倒出来なかった化け物を倒せば私達の名は確実に歴史に残る。あぁ、安心してくれ。何も無策で挑む訳ではない、勿論私に策がある」
「策だと?あの化け物に策が通用するのか?」
「する」
「いやに自信があるようだが一体どのような策なんだ?」
「良いだろう、説明しよう。簡単に言えば罠を仕掛ける、捕縛用ではない殲滅用の最上級魔法を仕掛ける。最初から発動一歩手前まで準備しておけば詠唱という一番の隙はなくなる。次に仕掛ける最上級魔法だがコレは氷属性の魔法を仕掛ける、何故氷かと言うと奴の力は自然を操る事にある、炎では燃やした後に灰が残る。これではむしろ奴にとって有利となってしまう。灰は肥料となるからな、故に氷だ。凍らせれば奴の植物は役に立たない。そして凍らせた後私達の持ちうる魔法で奴を、狩る」
「待ってくれ、打倒する策は分かったがどうやって奴をおびき寄せるんだ?
いくら罠を仕掛けてもかからなければ意味はないだろう」
「その通りだ、だがそれも私に考えがある。『代行者』は自然の味方だ、自然が無意味な破壊にあった時に奴は現れる。ならば自然を破壊すればいい」
「な!?『立派な魔法使い』である我らが自ら破壊活動をするというのか!!」
「何を言う、これは『正義』なのだ。『正義』が行うならば全ては許容される」
アランの言葉はその場にいる全員の心に響く
策は完璧とは言えない、だが現実的ではある
なにより彼等も人間だ
向上心や野心と言ったものはある
故に
「アラン、その策に俺も乗ろう」
一人がそう言えば全員が参加の意思を表明する
「ありがとう、では早速準備をしようではないか」
アランはそう言うと笑った
このアラン・アーノルドにはもう一つ目的があった
それを語るには彼の生い立ちについて知る必要がある
彼はとある上級議員の隠し子だった
その上級議員というのが大戦時に完全なる世界に協力をしていた人間の一人だった
彼等は皆代行者によって潰されたが唯一生き残った議員こそが彼の親だったのだ
生き残ったとはいえ精神は壊れてしまったが……
別にアランは復讐がしたいわけではない
彼は消したいだけなのだ
自分が裏切り者の血筋である事を知っている者を
全ては己の保身の為に
side ムラサメ
ネットワークを通じて叫びが入ったのは家でゆっくりしていた時だった
すぐに出所を探る
『世界樹、場所は?』
『魔法世界、メガロメセンブリア近郊の森です』
『……馬鹿共が、まだ懲りて無かったのか』
『動きますか?』
『当然だ』
『ご武運を』
俺はすぐにテレポートロータスを咲かせる
「ストルズ、留守の間の守りを頼む」
俺がそう言うとストルズは勇ましく吠えた
side 三人称
転位を終えたムラサメの目の前に広がるのは無残に破壊された森の跡のみ
すでに悲鳴は聞こえない
この森はもう…………死んでしまった
その時だった
「今だ!!」
今まで何処にいたのか15人の男達が現れ、ムラサメを囲む
「……この森を破壊したのはお前らか?」
「そうだ、お前を誘き出すためになぁ!!『絶対零度』発動!!」
男が言うと同時にムラサメを中心に魔法陣が展開し発動し、一瞬で氷漬けになる
「くくく、これがあの『代行者』か?楽勝じゃないか」
「そういうな、いくら奴でも植物を使えなければ唯生命力が強いだけよ」
「よし、さっさと止めを刺すとしよう。これで俺達も英雄だ!!」
男達は笑いあう
しかし彼等は知らない
代行者という存在がどういったものなのか
一度、彼に敵対すればどうなるのかを
アランを中心とした魔法使い達は各々得意とする上級魔法の詠唱に入る
しかし
「こんなもんで俺を止めたつもりか……?」
氷の中から声が響く
そして巨大な植物が生え、彼を氷から解放する
「な、何故だ、何故絶対零度の中で植物が生える!?」
「ザゼンソウ、氷点下でも花を咲かせる為22℃まで発熱出来る。一つ賢くなったな。
じゃあ死ね、ホウセンカ」
ムラサメが何かの種を落とし、そこから生えてきたのは成人程の大きさのホウセンカ
ホウセンカの種は子孫を広く残すためにはじけ、遠くへ飛ばす
通常の大きさならば人間が気にする必要はない
しかし今咲いているホウセンカは成人程の大きさ
故にその種も必然的に大きくなり、その種のはじける様は例えるならばガトリング
男達は詠唱を取りやめ障壁を張る
種は障壁によってはじかれる
男達は種をはじいたことに一安心の息を漏らす
それが間違いだとは露ほども知らずに
「何を安心してるんだ?お前らがはじいたのは種だ、種が地面についたんだ、次がどうなるか予想
出来ないはずがないだろう?」
そう言っているうちに地面へと落とされた種が急成長を遂げ、再びホウセンカの花が咲き乱れる
男達の顔が絶望に染まる
そして、ホウセンカが再びはじけた
はじけた花の数は優に100を超える
当然、障壁で全てを防ぎきれるはずもなく
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」 「ひ、ひぃぃっぃぃぃ」
「いてぇ、いてぇよぉ」 「いやだ、いやだ、助けてくれぇ」
場は阿鼻叫喚の場へと変わる
種の嵐によって命を落としたのは7人
この7人は運が良かったのかもしれない
これから始まる地獄を見ずに済んだのだから
「ア、アラン、どうするんだ!?」
「うろたえるな!!俺達は『立派な魔法使い』だ、『正義』なんだ!!!!!!」
アランは叫ぶと詠唱を始める
生き残った男達もそれに続く
しかし、それを悠長に待ってくれる代行者ではない
彼は何かの種を地面に落とす
そこから生えてきたのは大きな、豆の木
その大きさは優に30mを超える
「ジャックの豆の木ならぬ邪悪な豆の木ってな」
次の瞬間、生き残りの二人の上半身が消える
「「「「「「は?」」」」」」
アラン達が見たのは動く豆の木
その蔦の一本、一本の先に蛇のような顔がついておりそれが二人を喰ったのだ
既に男達は放心状態だった
そして始まる虐殺、いや捕食光景
邪悪な豆の木はその名の通り大きな豆の木だ
普段は普通の豆の木に擬態しているのだが、目の前に獲物が通れば
その蔦の一本、一本についている蛇のような顔で獲物を捕食する食獣植物なのだ
そして残ったのはアランただ一人
「は、ははは、なんだこりゃ。なんなんだよぉ!!!!!」
「知るか、お前達が自然を嘗めたからだろう?」
目の前には代行者
そして後ろには人食い植物
この状況でアランが取った行動は
「た、頼む!!ほんの出来心だったんだ、命だけは助けてくれ!!助けてくれたのならあんたを
賞金首から外すようにするし、自然も守る事を誓う!!だから!!!!」
父親と同じ命乞いだった
しかし、代行者は止まらない
何故なら既に森は殺されたのだから
「黙れ。それ以上喋るな」
ムラサメはアランの顎を砕く
「ひぐ!いぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
アランは余りの痛さに転がる
ムラサメはアランを持ち上げその心臓を左腕で貫いた
返り血がムラサメに降り注ぐ
代行者としての役目を終えたムラサメだが彼の表情は優れない
彼は森があった場所へと近づく
「……俺が賞金首でなかったのなら、俺が存在しなければお前達は死ぬ事は無かったのだろう。
すまない、すまない…………」
その時だった
『ありがとう、助けてくれてありがとう!!』
何処からか声が響く
ムラサメが辺りを見渡すと
森のあった場所にポツンと小さな木の芽が一つ生えていた
『ありがとう』
ムラサメの目から涙が流れる
ムラサメはこの小さな命を守るため、ここ等一帯に自身の力で森を創る
そして、ムラサメはテレポートロータスを咲かせ、その場から消えた
後に残るは広大な森と小さな、小さな命
家に着いたムラサメを迎えたのはエヴァンジェリンだった
「……ムラサメ血の匂いが酷いぞ。洗ってこい」
「あぁ、そうするさ」
「…………後悔しているのか?」
「後悔、おかしな事を聞く。俺は代行者だぜ?自然の為に戦う、そこに後悔などある訳がない」
「なら、その泣きそうな顔をなんとかして来い」
「俺は泣きそうな顔をしているか?」
「あぁ、お前のそんな顔は見たくない。だから洗ってこい」
「……………おぅ」
ムラサメが去ろうとした時
「ムラサメ、お帰り」
「ただいま、エヴァ」
代行者は止まる事を許されない
例え、己が新たな騒乱の種となり、それが原因で自然が失われようとしても
彼は止まれない
自分が原因となり自然が消えるならば、消えた自然よりも多くの自然を残し、創る為に
なんか変な感じになってしまった・・・・・
エヴァがどんどん良い女になってきてるような
質問に答えたいと思います
hakiさんからの質問です、いつもありがとうございます
『ムラサメに質問です。(トリコ的な)意味でエヴァの捕獲レベルはどのくらいですか?』
ムラサメ「本気のエヴァなら大体トリコの副料理長レベルだな、つまりはほとんど計測不能だ。まぁこれは勝手な予測だが90〜95じゃないか?」
茶々丸「ムラサメさんが相手になるとマスターの捕獲レベルは途端に1以下になりますけどね」
エヴァンジェリン「余計なことを言うな!!このボケロボ!!」
次は999さんからの質問です。有難うございます
『カモミールはどうなったか?』
ムラサメ「やつに植えた種からの情報によると現在は頑張って禁欲生活をしているようでまだ無事だ。・・・・・・チッ。まぁいつまでも我慢できるわけもないだろうから近いうちに花が咲くだろう」
さて、ここでお知らせです
感想にてエヴァの黒歴史をもっと知りたいという意見が出ました
作者としては嬉しいのですが、作者が考えるとどうも失敗する未来しか浮かびません。そこで皆さんにはどういった時の黒歴史が知りたいか、感想でお聞かせ下さい。毎回そこからひとつ書きたいと思います。それでは、また次回で