遅くなってすいません。今回は本当に難産でした。いや自分でオリジナルを作ったからなんですけどね、まぁ後悔はしていません。
決着
side 鈴
ネギの放った雷の槍は私に当たる筈だった
だが壱号がその身を挺して助けてくれた
壱号はどうなった?
目から流れる血を拭い、前を見る
そこには腹部に大きな穴を開けつつも立ち続けている壱号がいた
「壱号!!」
「は、は……うえ、ご無事で……すか?」
この子はこんな状態になりながらも私の事を気遣う
涙がこぼれそうになる
(駄目、今は泣いてはいけない。今は、今は!!)
「鈴さん!! 後一分です!!」
葉加瀬の言葉が私の耳に届く
後、一分、その言葉を聞いたネギ達が世界樹の下に走りだす
止めなくてはならない
分かってる、でもここで家族を見捨ててもいいのか?
大義の為に家族を見捨てる
それは正しいのか?
私は『家族』を想い計画を行った
その私が、『家族』を見捨てる?
その迷いが私の思考を埋める
その時だった
「母上、行って…くだ……さい。願いを……想いを……遂げて下さい」
壱号が私に言う
「だが!!」
私は壱号を見捨てる事が出来ない
このまま放置しておけばこの子は確実に死ぬ
「行ってください!! 母上の想いは此処で消えて良いものではないのです!! 私の屍くらい越えて行って下さい!!」
壱号の叱咤が私を叩く!!
「…………壱号。私は行かなきゃいけないのか? 我が子が如き存在の屍を越えねばいけないのか?」
「そうです。母上、失礼します」
壱号は崩れていく体を無理やり動かし、その大きな掌で私を包みネギ達の方へと投げた
「壱号!!」
「母上、貴方は言いましたね。自分の意思で行動を起こし自由に行え、と。コレが私の『自由』です」
そう言って壱号はその場に膝を突く
(分かった、分かったよ、壱号。私は計画を成功させる!! だから死なないで!!)
私の願いを聞いたのは神だったのか
世界樹の前に大きな蓮の花が咲き、そこから一人の男が現れた
彼こそは自然の守護者、自然の代行者
「……師匠」
突如現れた彼に全ての人間の足が止まる
しかし彼はそんな事は気にせずに真っ直ぐに壱号の下に歩いて行く
そして壱号に触れると、壱号の樹で構成されていた部分が創り直された
(そうか、壱号も半分は『自然』の一部だったな)
これで壱号が死ぬ事は無くなった
もう止まらなくていい
時計を見る、既に一分は経過していた
私は未だ呆けているネギ達の前に立ち、告げる
「さぁ!! 世紀の瞬間だ!! 魔法の時代はこれで終わりを告げる!!」
世界樹を化学式が包み、それに伴うかのように世界樹の発光が強まっていく
これで、これで未来は!!
しかし突如、世界樹の発光が止まった
「どういうことだ!? 何故止まる!!」
私は辺りを見まわすがネギ達は動いていない
では誰が
まさか…………
「お前か!! 近衞 近右衛門!!」
視線を奥の方に向けるとそこには足元に何かの陣を描いている近右衛門がいた
「すまんが切り札を切らせて貰った」
「何故だ!! 何故魔法が使える!! お前の魔力はもう無いはずだ!!」
「そう、魔力はもう…ない。故にこれは魔法ではない、己の……生命力を対価に発動する禁呪『魔吸引之法』
自身を中心とし周囲の魔力を全て己に吸収するものじゃ。………だが君の子達との戦闘でわしも消耗していたようじゃ。
ここが……限界か。だが、これで十分じゃ」
なんてことだ!!
まさか、まさかこんな手を持っていたなんて!!
「鈴さん!! これでは化学式を十全に発動できません!!」
「くっ」
どうする? どうすればいい!!
諦める? 否だ!! それだけは駄目だ!!
「う、あぁぁあぁあぁぁあぁぁ!!!!」
私は葉加瀬の下に走り、化学式を操作するためのコンソールを取る
こんな所で諦めてたまるか!!
全世界に魔法を知らしめることが出来なくとも、せめて、せめて楔を打ち込んでくれる!!
体を蝕む痛みなどどうでもいい!!
ただ我武者羅にコンソールを叩く
世界樹の魔力の4割は近右衛門に吸われた
だが!!
化学式が変化していく
ネギ達は私が未だに諦めていないのを確認すると私に向かって走ってくる
「鈴さん!! もうやめてください!! このままでは貴方が!!」
「黙れ!! 黙れ黙れ黙れ!! 私はあの人達の、あの人の為にもやらなければいけないんだ!! 裏の世界の住人でありながら
ぬるま湯に浸かり、善人ぶって何もしない貴様等に私の願いを!! 想いを!! 止められてたまるか!!」
既に化学式は元の原型を保ってはいない
それは『世界に魔法の存在を知らしめる』式ではない
それの劣化版と言ってもいいだろう
『一度、魔法を認識すれば忘れる事は出来ない』式だ
つまりは記憶の操作が出来なくなる今以上に魔法の秘匿が難しくなるということだ
世界中にいる未熟な馬鹿共はそれを知らずに魔法を発動すれば魔法の存在は知られる
そして化学式は世界樹を包み輝き、そのまま空へと昇り弾けた
「これで…………私は」
私は勝った、そう叫びたかった
だが脳が限界を迎えた
種は尚も私を蝕む
でも、もうどうでもいい
私は勝ったのだ
あの人は喜んでくれるだろうか
そして私は前に倒れ込んだ
side ネギ
「あ、あぁぁ。世界樹が……」
僕たちは鈴さんを止められなかった
既に世界は魔法を知ってしまった
でも、おかしなことにこれで良かったのだと思っている自分もいることだった
「ネギ先生!! 鈴さんが!!」
のどかさんの言葉で僕は鈴さんの方を見る
彼女は前のめりに倒れ込んだ
「鈴さん!!」
僕たちは鈴さんのもとに走りだす
そこで見たのは体を植物の根の様なもので蝕まれた鈴さんだった
「これは……」
その場にいる全員が言葉を失う
それほどに酷かった
その時
「どけ」
あの人がこちらに来た
アスモデウスと戦い勝った人
魔法世界史上最高額の賞金首『代行者』
その人は僕たちを押しのけ鈴さんに近づく
そして鈴さんの心臓付近に手を伸ばす
「な、なにをするつもりですか!?」
しかし彼は答えない
まさか鈴さんを殺すつもりなんじゃ
鈴さんを守らなきゃ!!
僕が鈴さんの前に立つとのどかさんや明日菜さん達も立ってくれた
「俺は、どけと言った」
「どきません!! 鈴さんは殺させません!!」
僕がそう言うと彼は一度深い溜息を吐くと
「コラン」
彼が何かを呼ぶと足元から樹の虎が現れ僕達を吹き飛ばす
その間に彼は鈴さんの心臓付近に手を近付けて何かを取りだした
それは種の様だった
「ムラサメ殿、彼女は?」
学園長先生が木乃香さんに支えられながらこちらにやってくる
「種は取りだした。死ぬ事はないだろ」
「それは重畳、彼女には言いたい事があるのでな。しかし貴方は何故彼女を助ける気になったのですかな?」
「……こいつは俺の事を家族と言った。それに良い物を見せて貰ったからな」
彼、ムラサメさんはそう言うと立ちあがり地面をつま先で叩くと再び大きな花が咲きその中に入っていった
「ムラサメ殿、彼女が目を覚ましたら連絡を入れます」
「おぅ」
学園長先生と短く会話した後、ムラサメさんは消えた
side 鈴
頭が痛い
私が目を覚まし最初に思ったのはそんな事だった
次に状況の確認をする
どうやら何処かの布団の上にいるらしい
「目が覚めたかね、鈴君」
「お陰さまでね。それにしてもここは何処だ?」
「わしの隠し部屋のような場所じゃ。ここは他の魔法関係者も知らない正に秘密基地みたいなものじゃ」
そういった近右衛門はいたずら小僧のような笑みを浮かべるがその目は決して笑ってはいない
その時、私は気付いた
移植した種が機能していないということに
「種が、ない?」
「種ならムラサメ殿が取って行ったよ。君が死ぬ事はもうないだろう」
「そう」
また、あの人に助けられたのか
「さて、鈴君。単刀直入に聞こう、君はどんな楔を我々に打った?」
本当に単刀直入だな
まぁ、話しても良いか
既に楔は打たれたのだから
それにこの人はあの人の数少ない『理解者』であったのだから
私は先程の化学式について説明した
「_____ということだよ。ふふ、これは小さな楔だ、だけど確実に貴方達『魔法使い』を苦しめる楔だよ」
「確かにの。これからの事を考えれば魔法協会の理事としては頭が痛いわい。じゃが、個人としてはこれで
良かったと思っておる」
「やはり貴方は『理解者』だ」
私達の間には先程まで敵だったという空気は既にない
すると
「鈴君」
「なにかな?」
「すまなかった」
突然、近右衛門が私に対して頭をさげた
「未来の事とは言え君の体を壊してしまった事を一人の魔法使いとして謝罪させて欲しい」
「…………その言葉は素直に受け取らせて貰うよ。……ところで壱号達は?」
「彼等ならばムラサメ殿の所じゃ。後で彼と共に来るだろう」
「そうか。それで私達をどうするつもりだい?」
それが問題だ
私は楔を打った
魔法使いからすれば明確な敵
「未来に帰ってくれて構わんよ」
「なに?」
「この度の騒動は超 鈴音が起こした事。鈴という名の少女ではない」
「それが通用するとでも?」
「その為の権力じゃろうて。まぁ超 鈴音はわしが殺したという事にしておくわい」
「狸め」
「ふぉっふぉっふぉ」
その時だった
「近坊、入るぞ」
あの人がやってきた
「おぉムラサメ殿」
あの時は目が余り見えなかったが今は見える
未来で私に名前を与えてくれた時と同じ姿
自然と胸が温かくなる
「鈴、あいつ等がうるせぇんだ。さっさと引き取れ」
彼がつま先で床を叩くと召喚陣の中から壱号達が出てくる
「「「「「母上ーーーーーーー!!」」」」」
壱号達が現れたことで部屋の中が一気にせまくなる
師匠は彼等を出した後
「それでこれからどうするんだ?」
そう聞いてきた
「帰るよ、自分の時代に」
「そうか」
「無論、我等は母上に付いてきます!!」
「お前達、いいのか?」
「これが我等の総意であり『自由』です」
まったく嬉しい事を言ってくれる
「わかったよ。近右衛門、我々は帰るよ」
「……もう行くのかの?」
「既に目的は達したからね。でも私に協力した人に伝言を頼んでもいいかな?」
「そんな事をせずに直に挨拶すればよかろう」
近右衛門はそう言うと隣の部屋の襖を開く
そこには葉加瀬や茶々丸、龍宮がいた
「鈴さん、挨拶もなしは冷たいですよ」
「私は雇われだったけど友達とも思っていたんだがね」
「鈴さん」
三人からの冷たい視線が刺さる
「悪かったよ。皆、世話になった、ありがとう」
「鈴さん、貴方のお陰で私は研究者としても人としても成長出来ました。有難うございます。
あちらでもお元気で。また会いましょう」
「鈴、私は貴方に協力した事を誇りに思うよ。報酬は餡蜜でいいさ」
「鈴さん貴方のお陰で私はマスターにムラサメさんに会えました。私を創りだしてくれた事を感謝します。
また会いましょう」
三人の言葉はどれも再会を望む言葉
本当に、ここの人達は温かい
「私もまた会える事を願うよ」
私は時間跳躍システムを起動させる
最後にあの人の姿を見る
「再。我的可的人」
この学園祭編は本当に落とし所が難しかったです。鈴の完全勝利ではこれからの話が続きませんしネギ側が完全勝利しても作者の心境的に納得がいきませんでしたから。そんなこんなで痛み分けのような感じで終わらせました。ちと無理やり感が否めませんがこれが作者の精一杯です。後、締めの言葉は漢字から察することは出来るでしょうが意味は『また会いましょう。愛しい人』です・・・・・くさ
さて次回から魔法世界編に入ります。つまりはムラサメの活躍、暗躍が始まるということです。ここで問題なのが皆のアイドル?龍樹とテオドラの扱いです。作者のいミスでテオドラ嬢は大戦で出せませんでしたから。本当に人とのつながりが無い主人公なことで・・・・・・・・・・
さて、どうしようかな。ではまた次回で
久々のおまけ
エヴァ「むぅ、どうしたものか」
チャチャゼロ「ドウシタンダ?御主人」
エヴァ「近頃、ムラサメの私に対する反応が冷たいというかなんというか」
チャチャゼロ「ナンダヨ、ノロケカヨ」
エヴァ「の、のののののろけではないわ!! というか何処をどう見たら今のがノロケになるのだ!! この馬鹿従者!!」
チャチャゼロ「ア〜ヤダヤダ、自覚ガナイッテコワイナァ。イイゼ証拠ヲミセテヤルヨ、妹!!」
茶々丸「はい、姉さん。ムービーを再生します」
エヴァ「さて、と」
ムラサメ「フラスコなら洗浄していつもの所だ」
エヴァ「わかった。・・・・・あ」
ムラサメ「魔法薬の素材なら補充しておいた」
エヴァ「すまん。ところで」
ムラサメ「今日の飯はセンチュリースープを入れたフルコースだ」
エヴァ「そうか、それは楽しみだ」
ムラサメ「ほれ、行ってこい」
エヴァ「ムラサメも畑頑張れ」
チャチャゼロ「何ダ、コイツラ。ツーカー過ギテ怖イナ」
茶々丸「時々見ているこちらが恥ずかしくなります」
エヴァ「う、うるさい!! この馬鹿従者共!!」