今回で魔法世界前の準備話というかなんというかは終わりです。
今回はかなり悩みました。では、楽しんでいただけることを願って
別れる道 またね
side ネギ
僕たちは夏休みに魔法世界に行く事にした
その為、今、僕に協力してくれてる皆に声をかけて魔法世界に行くかどうかを聞く事にした
集まったのは、明日菜さん、のどかさん、小太郎君、木乃香さん、刹那さん、古さん、ハルナさん達
「______それで、僕は夏休みに魔法世界に行こうと思うんです。
鈴さんの言った事を、真実を確かめる為に」
僕がそう言うと、のどかさんがおずおずと手を上げながら尋ねてきた
「あの、私も付いて行ってもいいですか?」
「僕も皆さんにそれを聞きたいんです。この中で魔法世界に一緒に来てくれる人はいますか?」
僕がそう言うと、ほとんどの人が僕の言葉に同意してくれた、ある二人を除いて
それは木乃香さんと刹那さんだった
「木乃香さんと刹那さんは、どうしますか?」
「……うちは」
「お嬢様…………」
「うちは怖い。魔法が、魔法使いの人達の考えが怖いんよ。うちはもう魔法に関わってしまったけど、
それでも怖い。皆は怖くないん? 鈴さんの話を聞いても、まだ魔法に関わるつもりなん?」
木乃香さんの言葉に周りは静かになる
すると、明日菜さんが
「鈴さんの言っている事は嘘かも知れないじゃない」
と言いましたが、木乃香さんは明日菜さんの方を見ながら
「明日菜は本当にそう思うとるん? あの、鈴さんの言葉が嘘だと」
「だって……、わからないじゃない」
「あんなに、泣きそうな顔で叫んでいた事を嘘だと言うん?」
明日菜さんも何も言えなくなりました
そして木乃香さんは席を立ち
「ネギ君、ごめんな。少なくとも今は、うちは魔法世界には行きとうない」
そう言って部屋から出て行ってしまいました
木乃香さんが出ていくのに続き、刹那さんも席を立ち
「お嬢様が行かないのであれば私も行くわけにはいきません。すいません、失礼します」
そう僕たちに告げ出て行った
残された僕たちの空気はとても暗く、重かった
その後も話し合いは続いたが、先程のような活気はなかった
結局、他の皆は一緒に来てくれるようだけど、皆の顔は暗かった
side 夕映
私が部屋でゆっくり本を読んでいるとのどかが帰ってきました
しかし、その様子はいつもと違い沈んでいるようでした
「のどか、おかえりです」
「うん」
……何故、こんなに暗いのでしょうか
はっ! まさかあのストーキング先生に何かされたんでしょうか!?
もしそうならば、ベーを刺客として……
私が物騒な事を考えていると、のどかが話しかけてきました
「……ねぇ夕映」
「なんですか? のどか」
「私ね、夏休みにネギ先生達と魔法世界に行こうと思うんだ」
「……え?」
今、なんて言いましたか?
魔法世界に行く?
誰が?
「のどか、本気ですか?」
「う、うん」
「自分が何を言ってるのか分かってるのですか!!??」
「ゆ、夕映?」
「貴方は分かってない!! 魔法世界は楽しいメルヘンの世界ではないのです!!少しの油断が、隙が、命を奪っていく所なんですよ!?
ただの中学生の貴方が行ったら何をされるかわかったものではないのですよ!!」
私はそのような所に貴方を行かせたくない!!
「で、でも、ネギ先生が……」
その言葉を聞いた時、私の中のナニカが切れる音がした
「のどか!! 貴方がネギ先生に好意を持っているのは知っています!! でも、その好意だけで命を捨てに行かないでください!!
私は、親友を、貴方を失いたくはないのです!!」
「……夕映」
「………………それでも、それでも行くと言うのですか……?」
「うん、私は行きたい。単にネギ先生と一緒にいたいからじゃない。自分の目で本当を知りたいから」
そう言ったのどかは、いつものオドオドした姿はなく、明確な決意をその瞳に宿していた
そんな目をしていたら止められないじゃないですか
気づいたら私は部屋から飛び出していました
後ろの方でのどかが私を呼ぶ声が聞こえる
でも、私は振り返らずにただ走っていた
外は雨が降っていた
そんな中、私は何も考えずに、走って、走って、ふと我に返ればいつのまにかエヴァンジェリンさんの家の前にいた
すると、エヴァンジェリンさんの家の扉が開き、茶々丸さんが顔を出しました
「綾瀬さん? どうかしたのですか? そのままでは風邪を引いてしまいます。どうぞ、中へ」
茶々丸さんはそう言って、私を家の中に入れてくれた
中ではエヴァンジェリンさんとチャチャゼロさんが寛いでいた
「む? 綾瀬か。どうしたんだ?」
「……エヴァンジェリンさん」
私の様子から何かを感じたのか、彼女は何も言わずに、私に紅茶を出してくれました
そのまましばらく、誰も話さずに、外の雨の音だけが響いていました
side エヴァンジェリン
綾瀬は何も言わない
ただ、下を俯くばかり
私が無理やり、喋らせてもいいのだが、今はそうするべきではない
こういう時は綾瀬が自分から話すのを待つべき、か
私は何も言わずに、ただ待つ
すると、綾瀬が突然泣き出した
綾瀬は泣きながら、何があったのかを話し始めた
どうやら坊や達も魔法世界に行くらしい
その中には宮崎も入っており、綾瀬はそれを止めたい
だが、宮崎は既に行く事を決意しており、止められない、と
「なぁ、綾瀬」
「……はい」
「宮崎は覚悟を決めたんだろう?」
「……はい」
「なら、お前は何をするべきなんだ?」
「……分からないです」
「そうじゃないだろう? お前は分かってるだろう? ただそれを認めたくないだけだ」
「…………」
「お前が私達と共にいたことで変わった様に、宮崎もまた、坊や達といた事で変わったんだ」
「……」
「人は変わっていく、それは止める事は出来ない。綾瀬、認めろ、いつまでも今のままとはいかないのだ」
「でも、それを、それを認めてしまったら、私はもう、のどかと……」
「道を共に行くだけが友なのか? 違うだろう? 例え、道が別れても、友は友だろう?」
「………そう、なんでしょうか?」
「それを決めるのは私じゃない。他ならぬお前自身だ。私が言えるのは、せめて後悔だけはしないように、だ」
「後悔…………」
「もう、こんな時間か。今日は泊まっていくといい。ゆっくりと考える事だ」
「はい、ありがとうございます」
まったく、世話の焼ける
side 夕映
茶々丸さんに案内してもらった部屋で考える
私は、どうすべきかを
今でも、のどかの事は親友だと思ってる
だからこそ、私は彼女に魔法世界に行って欲しくない
(彼女には彼女の生き方がある)
分かってる
でも、私は貴方がいる場所に帰る事を、覚悟とした
(本当に?)
心の中でそれは違う、と何かが叫んでいる
(始めはそうだったかもしれない。でも、今は?)
今は…………
あぁ、そうです
私はいつからか、のどかの下では無く、あの人達と過ごす日々が日常となっていた
ムラサメさん、エヴァンジェリンさん、茶々丸さん、チャチャゼロさん、ベー、ストルズ
彼等の顔が頭に浮かぶ
のどかが変わったように、私も変わっていたのですね
「明日、のどかと話をするです」
それで、私と彼女の道が別れる事になっても
せめて、後悔だけはしないように
翌日、世界樹の根元にのどかを呼びだした
「夕映、昨日は……」
「その事はもういいです。のどか、もう一度聞くです。貴方は、魔法世界に行くのですか?」
「うん、私は行くよ」
「そう、ですか」
「……うん」
私達の間に沈黙が流れる
「なら、私はもう止めないです」
「え?」
「それが貴方の選択なのでしょう?」
「……うん」
「なら、私達の道はここで別れるのです」
「夕映?」
「そうでしょう? 貴方はその道を選んだのですから」
「夕映も一緒に……」
「それは駄目です。貴方は貴方の道を、私は私の道を、それぞれ選んだのですから」
「夕映……」
「のどか、大好きですよ」
「うん、私も大好きだよ」
「「だから……」」
私達はお互いに涙を溜めながら、無理やりに笑顔を作り、同時に言った
「「またね」」
そう言って、のどかは学園の方へ、私は裏山へと、歩き始めた
お互いに振り向く事はない
これが私達の選択の結果なのだから
でも、今は、今だけは、泣いてもいいですよね…………?
いかがでしたか? 今回は夕映とのどかのお話です。この話は夕映がムラサメ側についてから、考えていたお話です。夕映はムラサメと、のどかはネギと共に行くならば、二人がこれからも共に歩むことはあるのだろうか? と考えたのがこのお話を作った理由です。
さて、次回からいよいよ魔法世界編です。最初に言っておきます、魔法世界編ではかなり無茶をするかもしれませんのでご了承ください。また、ここはおかしいのでは? と感じた事があればおっしゃって下さい。それでは、また次回
今回はおまけは無しです