遅くなってすいません。矛盾がないように慎重に書いていたらこのざまです。
しかし、おかげで矛盾はないと思うのでお楽しみください
それでも何かあればすぐに言ってください
世界が変わったら
side 夕映
魔法世界に行くには世界各所にあるゲートと呼ばれる物を使って移動するらしいのですが、
やはりというか、ムラサメさんには関係がありませんでしたね
彼は私たちの前に大きな蓮の花を咲かせました
エヴァンジェリンさん曰く、これで魔法世界とこちらを行き来できるそうです
「あの、ムラサメさん、こういった魔法というか、花の存在って向こうにばれたら色々と問題が起きる気がするのですが」
「起きるだろうな、だが、関係あるか? それに」
「……ないですね、それに」
「「つっかかって来たなら潰せばいい」」
私とムラサメさんの言葉が重なる
ふふ、こういった言葉が出る時点で私も大分変わりました
そう、人は変わっていく
私は花に入る前に一度、女子寮があるであろう方角を見つめた
「先に行ってるですよ、のどか。また会えたら会いましょう」
魔法世界ヘラス帝国
それは魔法世界において南の帝国と呼ばれる国である
この国を形成するのは一般に亜人と呼ばれる者達であり、メガロメセンブリアとはまた違った発展を遂げた国である
生活の基盤に魔法があるのはメガロメセンブリアと変わりないが、帝国ではそれに加え『自然との協和』がある
これには、帝国を形成しているのが亜人であると言う事が大きな理由となる
数多くある部族の中には生まれつき精霊との繋がりが強い部族が存在する
例をあげるならば、フェイトに従っている少女の一人、調ことブリジットの部族である
それだけならば自然との協和という理念はそこまで浸透しないだろう
しかし、彼等は見たのだ
20年前の大戦において、代行者とそれに従う樹の巨人達を
そして彼等は、代行者、いや自然という存在に畏怖と敬意を抱いた
何より、それを見た人物の中に皇族がいたことも理由としてあげられるかもしれない
その後、大戦が『紅き翼』によって終結した、と『聞かされて』から帝国は自国の復興に伴い
自然との協和を目指し始めた
この復興作業において陣頭に立ったのが、代行者をその目で見た皇族
それがヘラス帝国第三皇女テオドラであった
そして現在、ヘラス帝国は彼女を陣頭に見事復興を遂げた
いや、変化したと言ってもいいだろう
今では、家と家の間に木があるのは当然であり、帝国市民もこの生活に満足していた
話は変わるが、ここヘラス帝国には守護聖獣と呼ばれる存在がいる
守護聖獣とは文字通り、ヘラス帝国に危機が訪れた時、その強大な力を持って帝国を守護する存在である。彼等は基本は帝国各地にある遺跡にて眠っている
そんな守護聖獣の一体に龍樹と呼ばれる存在がいる
それはその名の通り、樹で構成された身体を持つ古龍である
その力は英雄ジャック・ラカンと同等とも言われる
しかし、今の龍樹がジャック・ラカンと戦えば、龍樹は勝つであろう
理由はヘラス帝国に自然が多くなったためである
龍樹は龍でありながら樹でもある
つまりは自然が多ければ多いほど彼の力も増すのである
その結果、龍樹はヘラス帝国守護聖獣の中でも最強の座を冠する事になった
龍樹も本来ならば遺跡にて眠るのだが、この自然と協和を成した帝国の首都が気にいったのか
彼だけは常時、首都にとどまるようになった
そんな龍樹を見つめる女性が一人いた
褐色の肌を持ち、頭に大きな角の様な物を生やした、見たところ18〜20歳程の美しい女性だった
彼女こそ、ヘラス帝国第三皇女テオドラであった
彼女は龍樹を眺めるのを日課としていたのだった
龍樹はそんな彼女を気にするでもなく、いつも首都の真ん中で眠っているのだが、その日は違った
テオドラが彼の下に尋ねると、彼は眠っておらず、何処か遠くを見つめていた
そして、龍樹が突如吠えた
「RuOooooooooooooooooo」
それは何かを警戒しているようにも見えたが、テオドラには主君を迎える騎士の様に見えた
side ムラサメ
俺達は真っ先にメガロメセンブリアには向かわずに、まずはヘラス帝国に赴いた
理由としては色々と下準備をしたいのと、フェイト達がこの近くにいる筈なので、造物主の奴に会わせて貰う為である
そんな訳で帝国の首都へと転位したのだが、テレポートロータスから出た瞬間に帝国中の自然から歓迎を受けた
「……わかった。歓迎はありがたいが、少し静かにしてくれ。流石に脳がキツイ」
そう言うと、静かになった
すると、一つの存在が声をかけてきた
(ようこそ、代行者。我々は貴方達を歓迎します)
(……お前は?)
(申し遅れました。我が名は龍樹、ここヘラスを守護する者の一人です)
(そうか。歓迎感謝する)
「ムラサメさん、どうかしたのですか?」
「茶々丸か。何でもないさ、ちと歓迎の言葉を受けていただけだ」
「ここの自然達からですか?」
「まぁそんな所だ」
「おい、ムラサメ。これからどうするんだ?」
「帝国観光でもしててくれ。俺はちと会わにゃならん奴がいる」
俺がそう言うと、エヴァ達は明らかに胡散臭そうな顔をする
まぁ、当然だろうな
戦争をするつもりで来てるんだからな
だけどなぁ、造物主に会いに行ってくるとは言えんし
「……そんな訳だから。ちと行ってくるわ。あぁ終わり次第直ぐに迎えに行くから」
俺はそれだけ言うと、エヴァ達から離れた
side 夕映
ムラサメさんはさっさと行ってしまいました
すると
「……怪しい。そうは思わないか?」
エヴァンジェリンさんがそう言いました
「怪しいとはどういうことですか? マスター」
「それは、ほら、あれだ。雰囲気というか、何というか」
「シドロモドロジャネェカ」
「う、うるさい!! …………はっ、まさか女の所か!?」
「そ、そうなんですか? マスター、どうしましょう!!」
吸血姫とその従者が異様にテンパリ始めました
どうしましょう
いえ、私も気にならない訳じゃないんですよ?
ただ、あの感じは女の人という感じじゃないな、と思いまして
まぁ、根拠はないんですけど
強いて言うなら女の勘、です
「オーオー、テンパッテヤガル。夕映、ドウスルヨ?」
「放っておきましょう。ムラサメさんは観光でもして来いと言っていたので私は適当に歩いてきます」
「オイオイ、アイツラ、俺ガ面倒見ンノカヨ」
「……では行ってきます」
「コノ薄情者!!」
チャチャゼロさんの言葉を背中に受けながら私は歩を進めました
街の中は自然が多いですね
適当に歩いていると、大きな樹の龍が目に入りました
一目見て分かりました
あれは強い、と
そして次に目に入ったのは頭に角を生やした女性でした
女性は龍に何かを尋ねていますが、龍はそれを無視し、何処かをじっと見つめています
……あれ? ひょっとして私を見てます?
どうやら、その勘は正しかったようで
彼? はじっと私を見つめています
すると女性も気付いたようで
「む、そこの者。ちとこっちに来い」
手招きをしました
「はぁ。なんですか?」
「なに、龍樹がじっとお主を見ているのでな、気になったのじゃ。おぉ自己紹介がまだじゃったな、
わしはヘラス帝国第三皇女テオドラじゃ」
「綾瀬夕映です、よろしくです」
って、皇女!?
なんでそんなお偉いさんがこんな街中を普通に歩いてるんですか!!
私の心中を見透かしたのか、彼女は微笑みながら言った
「なに、わしは龍樹を眺めるのが日課での。市民の皆も知っておる。あ、決して政務が嫌で逃げだした訳じゃないからの!!」
「は、はぁ」
なんというか元気な人です
適当に話したら退散するです
そう思ったのですが、腕をつかまれ
「ここで会ったのも何かの縁。お茶でもしようではないか」
「え? え? はぃぃぃ!?」
テオドラさんはそう言って私を引きずっていきました
side ムラサメ
「よぅ、フェイト」
「驚かない、驚かないよ。君が突如現れるのにはもう慣れたからね」
「フェイト様、コーヒーこぼれてます」
焔にそう指摘され、フェイトは急ぎコーヒーを拭った後
「今回は何の用だい?」
無理やり真面目な顔になった
しかし、後ろの方で焔などが
『フェイト様のレア顔見ちゃったっ!!』
と騒いでいるのでどうにも締まらない
「……あ〜、今回はお前に用はないんだ」
「ん、どういうことかな?」
「アイツに用がある」
アイツ、その言葉にフェイトが反応した
「どういうことかな? 協力でもしてくれるのかい?」
「まさか。ただ、ちとこれから暴れるからな、それについてだ」
俺の暴れるという単語を聞いたフェイトは今度こそ、その顔に汗を流す
「君が暴れる? 一体どうしたんだい?」
「それの説明も兼ねてるから、アイツに、造物主に会わせろ」
「……わかった、ついて来てくれ」
フェイトはそう言い、奥にある転移陣まで案内してくれた
「これに入れば、あの方の下に行けるよ。じゃあ行こうか」
「あぁ。……そういえば調はどうした?」
「彼女なら任務だよ」
「そか」
そう言いながらフェイトは君が来てた事を知ったらまた騒ぐんだろうな、とゲンナリしていた
転位した先には仮面を付けた男が立っていた
「む、どうした?」
「デュナミス、彼があの方に話をしたいらしくてね」
フェイトはそう言って俺に視線を移す
デュナミスと呼ばれた男は俺を見ると、しばらく言葉を失っていた
「……待て、待て、待て。何故ここに大地創造がいるのだ」
「何故って、造物主に話があるからに決まってんだろ」
「用とはなんだ、話ならば私が聞こう」
「おーい、造物主! ちと話がある!!」
「無視するな!!」
そんなデュナミスの叫びも空しく、声が響く
『懐かしいな、大地創造。話を聞こう』
その後、俺の足元に転移陣が再び現れる
それに乗ると、俺は造物主の前にいた
「よぅ、久しぶり、でいいのか?」
「構わんだろう。それで何用だ、大地創造」
「あぁ、ちぃとここ魔法世界で暴れる事になりそうだ」
「ほぅ、それは代行者として動く、と言う事か?」
「当然だ、俺が自発的に行動を起こすならばそれしかない」
「だろうな。それで目的は? メガロメセンブリア上層部が開発している『除草剤』か?」
「……やっぱ知ってやがったか。そうだよ、それとそれに連なる全てを破壊する。というか何で知ってる?」
「当り前だろう、我は仮にもこの紛い物の世界を創った本人なのだ。ある程度の情報ならば入ってくる。
それに、上層部からフェイトに連絡が入っておった故」
どうやらメガロメセンブリア上層部の一部は『除草剤』を手土産にまたも寝返るつもりのようだった
「だが。安心したぜ。『除草剤』の開発にお前らが関わってなくてよ。関わってたらまたお前と潰しあわないとならん。
それは勘弁だ」
「まったくだ、再び主と戦うのは勘弁だ」
「「だが」」
「戦えば、俺が勝つ」
「戦えば、我が勝つ」
「あぁ? 俺に吹っ飛ばされたのを忘れたのか?」
「ふん、我をあの時のままと思ってもらっては困るな」
しばらく睨みあった後、
「やめだ。お前と戦うつもりはないっての」
「それもそうだな。それで、話は終わりか? 暴れる事なら気にする事は無い。むしろ助かるな、我らが行動を起こす時の
敵が減るのだからな」
「……そうか。じゃあな、俺も仲間を待たしてるんでな、ここらで失礼するぜ」
「うむ、ではな」
俺は造物主に背を向け、転移陣に歩いていく
すると
「大地創造」
「なんだ、造物主」
「世界が変わったのなら、また話そう」
「……酒でも用意しておけ」
「ふむ、それもそうか。楽しみにしておけ。ではな」
「あぁ、また今度な」
今度こそ俺は転移陣に入った
エヴァ達と合流したら早速行動を起こすとするか……
ヘラス帝国と守護聖獣に関してはねつ造です。というか原作の方で守護聖獣って龍樹しか出てないような気がします。まぁいいんですけどね。
さて、次回はネギ達が魔法世界へ、そして夕映とテオドラのお茶会が中心になります。それではまた次回
すいません、今回はおまけは無しです