アンケートにお答えいただきありがとうございます。
途中経過を報告します。
1、39票
2、10票
3、9票
4、22票 となりました。
コードギアスが断トツですね。何だかもう決まった気もしないでもしますが一応完結までアンケートは続けます。
それでは本編をどうぞ
ソリダスター
メガロメセンブリアの近郊に爆発音が響く
それは市民の避難誘導を終えた騎士団と樹獣達がぶつかり合った音だった
「一歩も退くな! 俺達の後ろには守るべき街が、国が、命があるのだ!!」
『オォォォォォォォォォォ!!』
騎士団を指揮している男が声を張り上げる
それに応え、周りの騎士達が雄叫びを上げる
既に、騎士団とぶつかり合っている樹獣の数は100を超えていた
樹獣達は、己が傷つくのも顧みずに唯ひたすらにその巨大な拳を振るう
拳が振るわれる度に、一人、また一人と騎士が吹き飛んでいく
「くそっ。なんて数だ! 援軍はまだか!?」
「マーカス隊長! これ以上は……っ!」
「耐えろ! 直に市民の避難誘導を終えた援軍がやってくる! それまで耐えろ!」
マーカスと呼ばれた男が部下を鼓舞するが、既に彼が指揮する騎士団は崩壊しそうだった
『右翼全滅! 左翼も危険です! 至急援護を!』
『援護は出せん! こちらも手一杯だ!!』
援護要請を断らざるを得ないこの状況に彼は唇を噛む
—これ以上は無理か!?
その時だった
左翼の方角から歓声が上がった
何事かと思い、視線をそちらに向けると一際巨大な樹獣がメガロメセンブリアから出撃した鬼神兵により殴り倒された
「鬼神兵が起動したか! これならば……!!」
「えぇ。……それにしても、よく上層部がアレの起動を承認しましたね」
「確かにな。だが、この状況ならば起動せざるを得んだろう」
「そうですね」
マーカスの言葉に部下が頷く
「マーカス隊長! メガロメセンブリアより通信です! 全市民の避難完了との事!
それに伴い避難に使われた戦艦、騎士団全てが援軍として来るそうです!!」
「よし! 間に合ったか。総員、聞いたな! 後少しだ、奮起せよ!!」
『オォォォォォォォ!!』
その頃、夕映達はムラサメの下に向かう為に進行を続ける樹獣達の背後から進んでいた
樹獣達は夕映達の存在を気にせずに進み続ける
その為、夕映達は樹獣と争う事なくムラサメの下にたどり着く事が出来た
「ムラサメさん!」
夕映がムラサメの名を呼ぶ
当然ながら返事は返って来ない
返って来たのは、木の根による攻撃だった
木の根は確実に彼女等の急所を狙ってきた
「っ、魔法の射手土の4矢!」
木の根を魔法の射手で弾く
木の根が弾かれた事でムラサメの首がグルンと夕映達の方を向く
その動きは人間では到底行えない動きだった
「■■■ッ!!」
ムラサメが吼えた
ムラサメの咆哮に呼応し、彼の周りにいた樹獣達が一斉に夕映達に襲いかかる
その中にはジガン・コラン・ヨルンがいた
彼等の瞳も他の樹獣と同じく光が無かった
「ジガンさん!」
茶々丸がジガンの名を呼ぶが、彼は答えなかった
そして、茶々丸がジガンの拳で殴り飛ばされる
「茶々丸さん!!」
「……やはり、私達の声は届かないのですね」
「茶々丸さん……」
「それでも、諦めるわけにはいきません。綾瀬さん、止めましょう」
「はい! フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ。おお、地の底に眠る死者の宮殿よ我等の元に姿を現せ」
「鈴さんが残したこの兵装を貴方達に向ける事となるなんて……。CODE『Druid』起動」
夕映が呪文を唱え始め
茶々丸の腕に巨大な砲身が展開された
「冥府の石柱!」
「砲撃を開始します」
天空から巨大な石柱が振り注ぎ、茶々丸からの砲撃が樹獣達に直撃する
この時、彼女達は威力を一切抑えていない
それは樹獣達の強さを最も間近で見てきたからである
すなわち、これ『如き』では足止めが精いっぱいであるという事である
事実、直撃を喰らった樹獣達は足がちぎれるなどしているが、既に再生を始めている
「やはり……」
「えぇ。ですが想定の範囲内です。このままムラサメさんに近づきながら、樹獣の皆さんを無力化していきましょう」
「それしかないですね」
夕映と茶々丸は互いに頷き合い、攻撃を再開した
夕映と茶々丸の戦いをエヴァンジェリンは少し離れた場所から見ていた
彼女の傍にはチャチャゼロが立っていた
「オー、オー。ヤッテルナ」
「綾瀬、茶々丸……」
「デ? 御主人アンタハドウスンダ? ココデ見テイルダケカ?」
「…………」
チャチャゼロの問いにエヴァンジェリンは何も言わない
そんな彼女の様子にチャチャゼロは耐えかねたのか
エヴァンジェリンの脛を思い切り蹴った
「何をする!」
「ウッセェ! 何デ動カネェンダヨ! 好キナ奴ガ暴走シテンダ! 動ケヨ!!」
「でも、あれはもうムラサメじゃない……」
「ムラサメダ! ドンナニナロウト、アレハ、アイツハ、ムラサメダ!!
ムラサメジャネェッテンナラ、引ッ叩イテデモ目ヲ覚マサセロヨ! コンナ所デ泣イテンジャネェヨ!
動ケ! エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル!!!」
チャチャゼロの叱咤でエヴァンジェリンは顔を上げる
顔を上げた彼女の目に入ったのは、傷つきながらも戦う夕映達の姿
そして、後ろから彼女達を叩き潰そうとしている樹獣の姿
二人は、後ろの樹獣に未だ気付いていない
このままでは、二人が死ぬ
そう思った瞬間に、エヴァンジェリンの足が前へ動き、呪文を詠唱していた
「リク・ラク ラ・ラック ライラック 来れ氷精、爆ぜよ風精、氷爆!!」
エヴァンジェリンが唱えた呪文により、空中に大きな氷の塊が出現した
氷の塊はそのまま夕映達を潰そうとしていた樹獣の上に降り注ぎ、爆発した
「綾瀬、茶々丸! 無事か!?」
「エヴァンジェリンさん!」
「マスター!!」
「綾瀬、茶々丸、遅くなった。ムラサメの目を起こすぞ!!」
「「はい!」」
上空からの戦艦による援護砲撃に加え、次々に投入される鬼神兵の活躍により、
メガロメセンブリアを防衛している騎士団の士気は高まっていた
今もまた、鬼神兵により一体の樹獣が殴り倒される
「よしよしよし! 代行者の軍勢恐れるに足らず!」
「そうだ、いけるぞ。この戦い俺達の勝ちだ!!」
騎士団から歓声が上がる
彼等の胸中には既に絶望は無く、街を、市民を護れるという想いだけがあった
この時、騎士団の中に大戦時の代行者の軍勢を知る者が少しでもいれば今この場において油断するという事はなかっただろう
「GYaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
突如、鬼神兵の一体が咆哮を上げる
何事かと思い、鬼神兵の方に視線を向けた
そこには体から樹を生やし始めた鬼神兵の姿があった
鬼神兵の姿は直ぐに樹で覆い尽くされた
既に鬼神兵の瞳から光は消えており、鬼神兵は騎士団達の方を向くと、先程まで樹獣達に向けていた武器を
騎士団に向け、振るい始めた
「鬼神兵が……取り込まれた!?」
「嘘だろ……」
既に騎士団から歓声は聞こえない
何が起きたのか分からないといった様子だった
いち早く、現実に戻ったマーカスは声を張り上げる
「ボサッとするな! 何故、取り込まれたかは分からんが、一体は一体だ!
他の鬼神兵を使って、倒せ!」
マーカスの指示に呆けていた騎士団が動き始め、他の鬼神兵に指示を送ろうとした
「だ、駄目です! 鬼神兵が制御できません!」
「なんだと! どういうことだ!?」
「わ、わかりません!!」
「ま、まさか……」
誰かが言うでもなく、騎士団の目は残りの鬼神兵に向けられる
そこには樹に覆われ始めた鬼神兵の姿があった
悲鳴があがった
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!」
その悲鳴につられるかの様に、そこかしこから悲鳴が上がる
「落ち着け! 落ち着かんか!!」
マーカスは部下を落ち着けようとするが、騒ぎは収まらない
「ここまで、とは……。はは、無理だ」
マーカスも諦めかけた時、一人の男が飛び出し、鬼神兵の一体に拳を放った
「うぉぉぉ! 気突鬼十三連!!」
繰り出された拳は一つにしか見えないのに、破砕音が十三回した
そして、拳をくらった鬼神兵の身体に大きな穴が空き、そのまま地面に倒れた
「諦めるな! 退くな! 立ちあがれ! 誇り高き騎士団!!」
鬼神兵を粉砕した男、高畑・T・タカミチがそう叫ぶ
その姿に、マーカスはかつての英雄の姿を重ねた
タカミチの周りを鬼神兵が取り囲む
しかし、タカミチは動かない
それどころか、その顔には微笑がうかんでいた
そして、鬼神兵達の武器が振り下ろされようとした時、上空から大量の武器が降り注ぎ、
鬼神兵達を串刺しにしていく
「……遅かったですね、ラカンさん」
「うっせぇ、これでも急いだ方だ」
タカミチの言葉に答えたのは、いつの間にかタカミチの横にいたラカンだった
大戦の英雄、『紅き翼』の一人、ジャック・ラカンの登場
そして、上空から龍樹達、守護聖獣も降りてきた
ラカンと守護聖獣達の登場により、騎士団達の目に再び生気が戻る
「おめぇら! ボサッとすんな! 行くぞ!!」
『オォォォォォォ!!』
ネギ達はラカン達の戦いを上空に浮かぶヘラス帝国の戦艦から見ていた
そこには彼女達が夢見ていた華々しい魔法の世界は無く、あるのは唯ひたすらに明日を掴もうと戦い続ける
人々がいた
傷だらけになりながらも、進む
守るべき物の為に、護るべき人の為に
ネギは外に飛び出そうとした
しかし、それはテオドラによって止められる
「どこにいくつもりじゃ?」
「僕も行きます。皆さんと一緒に戦います」
「戯け! お主が行って何になる!! これは戦争じゃ! お主の様な子供が行ってもなんの役にも立たんわ!」
「それでも! 何もせずにはいられません!!」
「ならば、見届けよ! 魔法世界に起きたこの戦乱を! その目に焼き付けよ!!」
テオドラはそれだけ言うと、視線をネギから戦いへと向ける
彼女の手は握り締められていた
エヴァンジェリンが参戦した事により、夕映達の方にはある程度の余裕が出来てきた
夕映が無詠唱呪文で樹獣の出鼻を挫き、茶々丸とチャチャゼロが砲撃と斬撃で足を止め、
エヴァンジェリンが高威力の大呪文で倒していく、といった戦法が可能となっていた
しかし、樹獣達もただやられるだけでは無かった
この場において危険レベルが最も高いのは夕映達と判断したのか波状攻撃を仕掛けてくるようになったのだ
目の前の樹獣が倒れようと、その体を乗り越え迫ってくる
同族を踏み倒しながらも迫りくるその様には恐怖を抱かせた
そして、遂に一体の樹獣がエヴァンジェリン達の攻撃を潜り抜け、迫ってくる
樹獣はその大きな口で夕映達を丸のみにしようとした
「おぉぉぉっ! 天壊!!」
それを死角から放たれた呪文が吹き飛ばした
エヴァンジェリン達が視線を呪文が飛んできた方向に向けると
そこには近右衛門が立っていた
彼の格好は同じ和服でも、色は白一色であった
「学園長先生!?」
「挨拶はいらん! 進め!!」
近右衛門はそれだけ言うと、樹獣の大軍に駆けていった
「……進むぞ!!」
エヴァンジェリン達はここを近右衛門に任せ、ムラサメの下に向かった
ムラサメは樹獣達の真ん中にいた
彼は何かをしている訳ではない
ただ、立っているだけだ
前を見ているようにも見えるが、何も見ていないようにも見える
ムラサメの下に行こうとする彼女達を阻むかの様に樹獣達が周りを取り囲んだ
「ちぃっ! 邪魔をするな! ムラサメェ!!」
「ムラサメさん!!」
エヴァンジェリンと夕映がムラサメの名を呼ぶが、彼は反応しなかった
再び、樹獣達とエヴァンジェリン達との間に戦いが始まった
「リク・ラク ラ・ラック ライラック 来たれ氷精、大気に満ちよ。白夜の国の凍土と氷河を! こおる大地!!」
エヴァンジェリンの呪文により、樹獣達が氷漬けとなった
その隙に夕映がムラサメの下にたどり着いた
夕映はムラサメの手前で止まった
「ムラサメさん」
夕映は一度、彼の名を呼び、静かに語りかけた
「私の声が聞こえますか? ムラサメさん、聞いてください。私は最初は魔法というものに興味があっただけでした。
魔法を知りたい、非日常を知りたいという想いで貴方に師事してきました。ですが、いつからか魔法を教わるよりも、
非日常を過ごすよりも、自分の覚悟の基盤とした親友との日常よりも、貴方達と過ごす事の方が大事になっていたんです。
ムラサメさん、私は貴方達との日常が大好きです。…………私は貴方が好きです。
だから、帰ってきてください! ムラサメさん!! もう一度私に貴方が好きですって言わせて下さい!!」
夕映の言葉が届いたのか、ムラサメがゆっくりと夕映の方を向く
「…………」
「ムラサメさん……」
そして、木の根が夕映の心臓付近を貫いた
まぁたこんな所で切ってすいません。ですが、これで後は終わりまで一直線です。
今回は集結し終える戦力と、エヴァンジェリンの復帰、そして夕映の想いを書くのが目的でしたから。
ネギに関しては、今までほとんど関わってこなかったのにいきなり現れるのもどうかな、と思い、今回は傍観してもらうことにしました。ごめんね、主人公。
後、学園長が輝き過ぎてます。まるでムラサメよりも主人公のような・・・・
まぁ、ムラサメはラスボスというか、なんというかにするつもりだったんですが。
今回のサブタイトル「ソリダスター」の花言葉は『私に振り向いて』です。
メインは夕映です。
では、また次回