第6話 父の過去
誕生日の翌日の朝。
俺は昨日疑問に思った父さんの過去について聞くため、書斎へと向かっていた。
ノックをして中に入った俺を父さんは静かに迎え入れてくれた……仕事を邪魔して御免よ父さん。
父さんの机の前に立ち、早速父さんに質問を投げかける。
「昨日父さんに命を救ってもらったっていう伯爵様がいたんですが、父さんは昔何をしていたんですか?」
父さんは一瞬固まって、筆を置き、書いていた書類を脇に寄せた。
そして少し厳しい顔を俺に見せる。
「まだ二歳のお前に教えるには早い」
「でも……知りたいんです」
「お前は確かに二歳に思えないほど聡い。俺の過去を聞いても理解できるかもしれない」
「なら!」
「だが二歳のお前に人の生死が関わる話をするわけにはいかない!」
父さんは厳しい顔をしてたが、その中に少し悲しそうな顔も混ざっている気がする。
俺は自分のことしか考えていなかったようだ。
幾ら自分の危険に関係してくるとはいえ、人の古傷をほじくり返していいわけではない。
自分の配慮に欠けた言葉に、父さんが傷ついたと考えると申し訳ない気持ちになった。
父さんはそんな俺を見て、教えてもらえないから悲しんでいると思ったらしく、小さくため息をついて言った。
「はぁ……少しだけだぞ?」
申し訳ない気持ちに変わりはないが、俺は父さんの話に耳を傾けることにした。
長い話になったので要約すると、
父さんは昔軍の偵察部隊にいた。
その時の上官がグラモン伯爵だったらしい。
グラモン伯爵率いる軍は、オークの大群の討伐を命じられた。
偵察隊の父さんはオークの大群がどのくらいの数になるのか確認しに行く。
匂いに敏感なオークは、大勢で偵察に行くと見つかってしまうので父さんの単独任務だったらしい。
オークの数を大方数えた父さんは軍に戻ろうとしたのだが、まだ若かったグラモン伯爵は父さんの報告を聞く前にオークの大群に突貫していった。
最初こそ破竹の勢いでオークたちを切り倒していったが、作戦もなく突撃した決して多くない軍は防御など考えていない。
一人また一人とオークの物量に押しつぶされていく。
グラモン伯爵も奮闘していたが気付かぬ内に突出してしまったらしく、気づけばオークに囲まれていたらしい。
1匹が一般兵士5人分に匹敵するオーク10頭以上に囲まれた伯爵は流石に不味いと思ったのか、もう殆ど残っていない精神力で魔法を使い、なんとかオークの一角を崩し一時撤退することを決めた。
しかし運悪く魔法で倒したオークの持っていた棍棒が足に当たり、捻挫してしまったのだという。
走ることはできそうにない。
「どうせ死ぬなら一匹でも多く道連れにしてくれるわ!」
と意気込んで未だ10匹以上いるオークたちに剣一本で立ち向かおうとした。
そんな時突然激しい光が目の前に広がった。
そして聞こえてくる声。
「少し手荒になりますがお叱りは後で受けます」
そう言って父さんは肩にグラモン伯爵を担いで、フライを使いその場を急ぎ離れた。
肩に担がれた伯爵は一瞬状況が飲み込めなかったが、次第に理解していった。
ライトの魔法を高出力で発動し、オークたちの眼を眩ませている内に私を連れてきたのだと……。
「すまん……恩に着る」
「ホントですよ! まったく俺の報告を聞いてから行動してください!」
いつもとは違う父の口調に驚きつつ、自分を本当に心配してくれたことが分かった伯爵は申し訳なさそうに謝った。
「すまん……軽率だった」
「いえ、こちらこそ無礼な口を聞いてすいません」
「いや助けてもらったのだから、それぐらいは気にしないよ」
それからしばらく無言だったが撤退済みだった軍が見えてきたところで伯爵は呟いた。
「大きな借りを作ってしまったな」
それを聞いた父さんは笑いながら
「それじゃあ、今度美味い酒でも奢ってくださいよ」
と言った。
その返事は予想外だったのか、伯爵は一瞬ポカンとして、次には声をあげて笑い始めた。
笑いが収まってから伯爵は父さんに楽しそうに言った。
「ああ! 最高の酒を用意しよう!!」
それから父さんと伯爵は偶に一緒に飲む仲になったらしい。
因みに残ったオークの大群だが、ヴァリエール公爵夫人が一掃したらしい……あの人は化け物か?
話を聞き終わった感想は……なにこの人めっちゃカッコいいんですが!!!!
父さんあんた凄いな!
っていうかこれ以外にも絶対とんでもないエピソードあるだろ!
パーティの時に、父さんに命助けられたって話他にもいくつかあったぞ?
その話も聞いてみたいと思ったが、グラモン伯爵を助けた時に父さんの部隊の人も何人か亡くなったらしく、父さんは少し遠くを見ていた。
流石にこの空気で、もっと話を聞きたいとは言えない。
とりあえず話してくれたことに対してお礼を言って、少し世間話をして部屋を出た。
自分の部屋に戻った俺は父さんの話を思い出しながら、コモンスペルでも使い方次第では非常に有用だと改めて感じ、絶対魔法を使えるようになろうと心に決めた。
とりあえず明日母さんに相談してみよう。
俺は明日の予定を頭の中で決めて、その日はもう寝ることにした。
俺にしては少し長かったかな?
誕生日の翌日の朝。
俺は昨日疑問に思った父さんの過去について聞くため、書斎へと向かっていた。
ノックをして中に入った俺を父さんは静かに迎え入れてくれた……仕事を邪魔して御免よ父さん。
父さんの机の前に立ち、早速父さんに質問を投げかける。
「昨日父さんに命を救ってもらったっていう伯爵様がいたんですが、父さんは昔何をしていたんですか?」
父さんは一瞬固まって、筆を置き、書いていた書類を脇に寄せた。
そして少し厳しい顔を俺に見せる。
「まだ二歳のお前に教えるには早い」
「でも……知りたいんです」
「お前は確かに二歳に思えないほど聡い。俺の過去を聞いても理解できるかもしれない」
「なら!」
「だが二歳のお前に人の生死が関わる話をするわけにはいかない!」
父さんは厳しい顔をしてたが、その中に少し悲しそうな顔も混ざっている気がする。
俺は自分のことしか考えていなかったようだ。
幾ら自分の危険に関係してくるとはいえ、人の古傷をほじくり返していいわけではない。
自分の配慮に欠けた言葉に、父さんが傷ついたと考えると申し訳ない気持ちになった。
父さんはそんな俺を見て、教えてもらえないから悲しんでいると思ったらしく、小さくため息をついて言った。
「はぁ……少しだけだぞ?」
申し訳ない気持ちに変わりはないが、俺は父さんの話に耳を傾けることにした。
長い話になったので要約すると、
父さんは昔軍の偵察部隊にいた。
その時の上官がグラモン伯爵だったらしい。
グラモン伯爵率いる軍は、オークの大群の討伐を命じられた。
偵察隊の父さんはオークの大群がどのくらいの数になるのか確認しに行く。
匂いに敏感なオークは、大勢で偵察に行くと見つかってしまうので父さんの単独任務だったらしい。
オークの数を大方数えた父さんは軍に戻ろうとしたのだが、まだ若かったグラモン伯爵は父さんの報告を聞く前にオークの大群に突貫していった。
最初こそ破竹の勢いでオークたちを切り倒していったが、作戦もなく突撃した決して多くない軍は防御など考えていない。
一人また一人とオークの物量に押しつぶされていく。
グラモン伯爵も奮闘していたが気付かぬ内に突出してしまったらしく、気づけばオークに囲まれていたらしい。
1匹が一般兵士5人分に匹敵するオーク10頭以上に囲まれた伯爵は流石に不味いと思ったのか、もう殆ど残っていない精神力で魔法を使い、なんとかオークの一角を崩し一時撤退することを決めた。
しかし運悪く魔法で倒したオークの持っていた棍棒が足に当たり、捻挫してしまったのだという。
走ることはできそうにない。
「どうせ死ぬなら一匹でも多く道連れにしてくれるわ!」
と意気込んで未だ10匹以上いるオークたちに剣一本で立ち向かおうとした。
そんな時突然激しい光が目の前に広がった。
そして聞こえてくる声。
「少し手荒になりますがお叱りは後で受けます」
そう言って父さんは肩にグラモン伯爵を担いで、フライを使いその場を急ぎ離れた。
肩に担がれた伯爵は一瞬状況が飲み込めなかったが、次第に理解していった。
ライトの魔法を高出力で発動し、オークたちの眼を眩ませている内に私を連れてきたのだと……。
「すまん……恩に着る」
「ホントですよ! まったく俺の報告を聞いてから行動してください!」
いつもとは違う父の口調に驚きつつ、自分を本当に心配してくれたことが分かった伯爵は申し訳なさそうに謝った。
「すまん……軽率だった」
「いえ、こちらこそ無礼な口を聞いてすいません」
「いや助けてもらったのだから、それぐらいは気にしないよ」
それからしばらく無言だったが撤退済みだった軍が見えてきたところで伯爵は呟いた。
「大きな借りを作ってしまったな」
それを聞いた父さんは笑いながら
「それじゃあ、今度美味い酒でも奢ってくださいよ」
と言った。
その返事は予想外だったのか、伯爵は一瞬ポカンとして、次には声をあげて笑い始めた。
笑いが収まってから伯爵は父さんに楽しそうに言った。
「ああ! 最高の酒を用意しよう!!」
それから父さんと伯爵は偶に一緒に飲む仲になったらしい。
因みに残ったオークの大群だが、ヴァリエール公爵夫人が一掃したらしい……あの人は化け物か?
話を聞き終わった感想は……なにこの人めっちゃカッコいいんですが!!!!
父さんあんた凄いな!
っていうかこれ以外にも絶対とんでもないエピソードあるだろ!
パーティの時に、父さんに命助けられたって話他にもいくつかあったぞ?
その話も聞いてみたいと思ったが、グラモン伯爵を助けた時に父さんの部隊の人も何人か亡くなったらしく、父さんは少し遠くを見ていた。
流石にこの空気で、もっと話を聞きたいとは言えない。
とりあえず話してくれたことに対してお礼を言って、少し世間話をして部屋を出た。
自分の部屋に戻った俺は父さんの話を思い出しながら、コモンスペルでも使い方次第では非常に有用だと改めて感じ、絶対魔法を使えるようになろうと心に決めた。
とりあえず明日母さんに相談してみよう。
俺は明日の予定を頭の中で決めて、その日はもう寝ることにした。
俺にしては少し長かったかな?