第94話 魔法の世界の吸血鬼
決闘の後処理も終わり、しばらく経って虚無の曜日の前日を迎えた俺だが……、俺はまたシルフィに乗ってガリアへの空路を進んでいる。
「はぁ……結局今回も流された……」
「どうかしたのね?なんか元気ないのね?きゅいきゅい」
「いや、お前のせいなんだよ?」
なんか勢い良く俺の部屋に入ってきて、休日にガリアにお出かけしたいからレッドにもついて来てほしい。
その後外出届を学院長に提出させて、あの装備をさせた時点でもう唯の外出じゃないのは分かってたんだよ……。
でも……なんかコイツ行かないっていうと泣きそうな顔するんだよ。
コイツが泣くと子供泣かしている様な罪悪感に包まれるんだよ……。
「はぁ………」
「きゅい?」
「ごめんなさい」
タバサも俺が渋ると少し俯く。
片や見た目子供、片や精神子供。
胃薬……探そうかな?
学院長もこの事を知ってか知らずか
「もし彼女が死ぬようなことになったら国際問題になりかねんから気を付けるんじゃぞ?」
とか小声言うし……。
いやもちろん文句は言ったんだよ?
それだったら俺じゃなくてもいいじゃないか!って言ったよ?
でも「彼女よりも弱い者を連れていっても護衛にならんじゃろ?」って返された……まぁ正論だけど。
コルベール先生やギトーなら大丈夫じゃないのか?とも聞いてみたんだけど、
「コルベール君は今だ戦闘に拒否感を強く持っておる。
ギトー君は……あの……分かるじゃろ?」
そんなわけで学院長の頼みもあり、俺が渋々着いていくことになった。
「おぅ、ヘイじゃねぇか!
意外と早い再会になったな!」
「……あぁ予想外だがな」
なんかタバサが任務を受けに行っている間、基本的にここにきているなぁ。
まぁ俺としてもここの連中は親しみやすいから居心地いいんだけど……。
「そういえばお前って何時も誰と待ち合わせしてんだ?」
「あぁそうでヤンス!!
そう言えばヘイが町の外で小さな女の子と一緒にいるのを見たって団員が言ってたでヤンス!!」
「「「「「何ーーーーーーーー!!」」」」」
「………いや、なんだこの驚きようは?」
「お前……恋人いたのか?」
「いやいない」
俺がそう返すと、団員達+チャンは安心したかのような深い息をついた。
なんか腹立つな。
「そうだよな! お前はそうだと信じてたぞ!」
「……チャン、お前どうしたんだ?」
「いや、何でもないぞ?
チョイが実は美人の奥さんいるからとか全然関係ないぞ?」
あぁ奥さんいたのかチョイ。
なんか何時も猫背なのに、今は胸張ってるな。
チョイ……威張るのは良いんだけどな?
お前の後ろに団員達が凄い顔で立ってるぞ?
「ん?な、なんでヤンスか?!
もしかしてお前たち……羨ましいんでヤンスか?」
「「「「………」」」」
「お前達も何時か綺麗な奥さんもらえるでヤンスよ。
まぁ家の奥さん程可愛い奥さんは、いないかもしれないけど……。
な……なんでヤンスか、皆拳を振り上げて……」
「「「「「「「ふざんけんなーーーーーーーーー!!」」」」」」」」
「ギャーーーーーーーーーーーーーー!!」
あ〜あ、フルボッコだな。
俺も一応一発入れとくか。
ところでチャン……お前真っ先に相棒殴りに行ったな。
いいのかそれで!?
あの後好きなタイプとかの話を延々と話していた訳だが……中学校の修学旅行か!?
まぁ予想外な情報とか聞けて面白かったけど……だってチャンの好きなタイプが小柄な可愛い子だよ?
いやいや、なんて犯罪っぽゲフンゲフン……予想外だよね!
「レッド?」
「あぁ……いや、なんでもない。
で、今回は何処で何をするんだ?」
「今回はサビエラ村に出た吸血鬼の退治」
「……吸血鬼?」
「そう」
「ヴァンパイア?」
「そう」
「ノーライフキング?」
「そう」
「そっか………よし! 帰ろう!」
「もうちょっとで着くのね」
「嫌だ! 帰ろうぜ! 直ちに帰って部屋の隅でガタガタ震える準備はOKだよ!?」
「何言ってるの?」
だって……吸血鬼だろ?!
確かにアーカードの旦那に憧れはしてるよ?
でもね、戦えって言われたらマッハで逃げるよ!!
………ってあれ、そう言えばこの世界の吸血鬼ってどんなんだっけ?
「タバサ、吸血鬼の特徴ってどんなの?」
「日の光に弱い、聖水、銀、流水、火に弱い。
胸に白木の杭を刺されると死ぬ。
魔力と身体能力は極めて高いため、とても危険」
「えっと、なんか変な能力とか持ってない?
真黒な犬を自分の身体から出したり、世界を限定的に作り出したりしない?」
「? そんな能力はない」
……はは、はっはっはっはっは!!
何だ!なら大丈夫だ!!
どんとこいやーーーーーーーーー!!!!(自棄)
この時主人公はこれがヤバいフラグになることを微塵も知らなかった……。
吸血鬼編は大分オリ展開で行きます。
理由は……後ほど。