第102話 喋る魔剣
しばらく馬で走り続けた俺達は、ついに街に到着した。
「あぁぁぁぁ、尻が……尻が割れるぅぅぅぅ!!」
「なな、何言ってんのよ!!」
「尻は最初から割れてるよ……だから途中で相乗りしようかって言ったのに」
サイトの馬は結構気性が荒かったらしく、途中何回かロデオっぽい動きをしていたので、流石に不味いかなと思って一回聞いたんだよ。
でも「いや、まだ行ける!」って言ってここまで我慢してたんだけど、降りた瞬間今の状況になったというわけだ。
「くっそ! 何時か乗りこなしてやるからな!!」
「ブルルルッ!」
「何馬と張り合ってんのよ……」
ルイズ嬢が微妙に引いてるからそこら辺にしといた方が良いぞサイト?
俺達は馬を預けて、街の中へと足を踏み入れた。
「おぉ……意外と狭いし、人も少ないな」
「何言ってんのよ!
広いし、人もいっぱいいるじゃない!」
「いや、俺の暮らしてたところじゃあ、この何倍も広い道がいっぱいあったし、人の多さもこの比じゃないぞ?」
まぁ当たり前だろう。
サイトが言っているのは東京だろ?
なら人は腐るほどいるし、道も道路のことを言っているなら、軽く3倍位のとこもあるしな。
ルイズはそれを想像できないのか、サイトの話を信じていないようだ。
「まぁその話は置いといて、サイト君。
財布には注意しておいた方がいいよ?」
「何でだ?」
「おっと、こういう風に意外とスリが多いからね」
なんでこのタイミングでスルかなぁ……。
まぁ説明に信憑性が出たから良いんだけどね?
「は、離せ!」
「謝罪は?」
「気を抜いてたお前が悪いんだろ?!」
「……有罪」
「ガッ!」
俺は速やかに顎を片手で掴んで、左右に高速で動かした。
するとスリの意識は綺麗に飛んだ。
「兄様……今何をやったの?」
「ん? あぁ頭を高速で揺らすと、人は直ぐに意識を失ってしまうんだ。
まぁ前に僕がヴィリエ君にやったのが近いかな?」
「そうなの……私にもできる?」
「う〜ん、少し難しいかな?」
「……残念ね」
ルイズ嬢……君は一体どこを目指しているんだ?
なんかサイトが引いているぞ?
「よし、僕は彼を衛兵に渡してくる。
武器屋には先に向かっていてくれ」
「分かったわ」「分かった」
俺は急いで衛兵にスリを引き渡し二人を追う。
二人の背中が見えたところで声を掛けようとしたが、ふと誰かの視線を感じた。
……誰だ?
俺は二人を歩いて追いかけながら、途中でバッと振り返る。
歩行者は何事かと思って俺の方を見たが、代わりに俺は壁に隠れている見覚えのある赤い髪を見つけた。
何で彼女が……と少し思ったが、原作を思い出して納得した。
とりあえず声をかけるために彼女たちに近づいていく。
「キュルケ、君はここで何をしているのかな?」
「レッド?! 何でここがバレたの?!」
「いや、髪の毛がはみ出てたよ?」
「もう、そうならそうと教えてくれればよかったのに!
タバサも意地悪ね?」
「珍しいな……タバサも来ているんだ?」
「えぇ、さっきまで一緒に居たんだけど……」
俺は周囲を少し見渡そうとしたが、マントを引っ張られたことでその行動をキャンセルした。
ゆっくりと振り返った先には、いつも通りの青髪の少女がそこに立っていた。
「タバサまでひきつれて、君は何をしようとしてたのかな?」
「何もしようとなんてしてないわよ?
只ルイズとダーリンが、出かけたのが気になって追いかけてきたのよ」
「……タバサは?」
「レッドの昔話の続きが聞きたい」
それは学院に戻ってからでも良かったんじゃ……と思ったが微妙に目をキラキラさせてたから、突っ込めなかった。
はぁ、この容姿は反則だと思うんだ。
「取りあえず、ルイズ達と合流するかぁ」
「いいわね〜、それじゃあレッツゴ〜!」
「……ご〜」
なんか微妙に一波乱ありそうだな。
俺達が武器屋に着くと、既にサイトはデルフリンガーを見つけ出していた。
あ〜……出会いを見逃したか。
「兄様、遅かったで………後ろの二人はどういうことかしら?」
「あぁ二人は「偶々街でレッドを見かけて声を掛けたら貴方達も一緒だって言うから、ついてきたのよ、ね?」……あぁ」
まぁいいんだけどね?
取りあえずルイズ嬢……顔が怖いぞ?
「そう、じゃあもうアンタ達はアンタ達の用事を済ませに行けばいいじゃない!」
「別に急ぐことでもないから、私達も一緒に見て回ることにするわ。
別に良いでしょう?」
「良くないわよ!」
俺は二人が揉めているのをスルーして、サイトが持っているデルフを見に行った。
はた目から見るとやっぱりボロいな……。
「サイト君、剣は決まったのかい?」
「あぁ、これが良いかなって思って」
「おうおう、俺様をこれ呼ばわりなんて失礼じゃねぇか!
俺にはデルフリンガーっていう立派な銘があるんだよ!」
「インテリジェンスソードか……面白い剣を見つけたね?」
「だろ?」
まぁ面白いだけじゃなくて、メイジ殺しな能力も持ってるんだけどね。
人は見掛けによらないっていうか、剣は見掛けによらないってところだ。
「おい、兄ちゃん」
「ん? 僕かい?」
「そうだ、アンタだ。
アンタ剣使うだろう?」
「まぁ……多少ね」
「レッドさんって剣も使うのか?!」
「多少ってレベルじゃないだろうが……。
使い手もこれくらい出来りゃ良かったのによぉ」
「サイト君には今後に期待と言うことで……ね?」
「分かった。
使い手! お前も剣を使う気なら、困った時はそこの兄ちゃんに聞きな」
「あ、あぁ分かった」
ガンダールヴのルーンがある限り、早々困ることはないんだけどね。
それに攻撃用の剣術はそんなに練習してないから教えるのもなぁ。