第105話 破壊の杖奪還への道
あの後一旦部屋に帰ってから待ち合わせの場所へ向かった。
但しアイガを連れて。
もう待ち合わせ場所には全員が揃っていた。
「遅くなりましたね」
「いえ、皆さん今来たところです。
所でそのゴーレムは……」
「あぁ、僕の使い魔のアイガです。
きっと役立てると思いますよ?」
「そ、そうですか」
ロングビルは引き攣った顔でアイガの方を見ている。
誰かにアイガの話でも聞いたのか?
俺の視線に気付いたのか、ロングビルは軽く首を横に振って俺達のことを見渡した。
「それでは全員揃ったので、馬車に乗ってください。
皆さんが乗り次第、怪しい人影を見たという情報があった森へ向かいます」
「「わかったわ」」「「わかった」」
全員が馬車に乗ると、ロングビルが馬に指示をして馬車を進ませた。
因みにシルフィは上空を飛んでついて来ているらしい。
「ねぇミス・ロングビル。
貴方は何故学院長の秘書を?」
キュルケは移動し始めて、しばらく経つとそんな質問をロングビルに投げかけた。
どうやら暇だったらしい。
「え? えぇ、そうですね……酒場で給仕をしていたところをスカウトされまして、一応私もメイジですし……」
「へぇ〜そうだったんだ。
でも何で貴族なのに給仕なんて?」
「アンタちょっと考えなさいよ!」
「だって気になるじゃない?」
確かに不躾な質問だな。
メイジなのに酒場の給仕をしているということは、普通没落したか勘当されたかだろう。
ストレートに聞くことは時に良いこともあるけど、今回はちょっとな。
「いいんです、ミス・ヴァリエール。
私の家は没落してしまったので、生活のために働いていたのです」
「そうなの? ところでなんで没落「アンタホントにいい加減にしなさいよ!!」何よ別にいいじゃない!」
なんか何時も通りの口げんかに発展したんだけど……。
まぁ気負うよりは良いと思うけど、緊張感ないなぁ。
所でタバサとサイトはどうしてるんだ?
「なぁ、何読んでるんだ?」
「……本」
「いや、確かにそうなんだろうけど……どんな内容の本なんだ?」
「英雄譚」
「……そうですか」
「そう」
中々会話に難儀しているな。
俺は取りあえずアイガの隣に座って少し休むことにする。
「アイガ、何かあったら起こしてくれ」
「ジ!」
俺はそうアイガに頼んで目を瞑った。
俺が目を覚ますと目的地は直ぐそこだった。
……所で何で俺にもたれかかって寝ているのかな、タバサ?
そして出来れば睨まないでほしいよルイズ嬢。
「そろそろ目的地に着きます。
寝ている人は起こしてくださいね?」
「分かりました。
タバサ嬢、そろそろ目的地に着くらしいですよ?」
「ん、分かった……起きる」
俺はタバサを起こすと、外の様子を窺った。
森が見える……っていうか目立つものが森しかない。
「ミス・ロングビル、怪しい人影を森で見かけたという情報を聞いたって言いましたよね?」
「はい」
「具体的にはどの辺りとか聞いてませんか?」
「そうよ! 森って言われても範囲が広すぎるわ」
「私の聞いた話では森の中に少し行くと、小屋があるらしいです。
そこがフーケのアジトなのではないでしょうか?」
「そうですね……一先ずその小屋を探してみることにしましょう」
森に着いた俺達は、馬車を降りて小屋を探し始めた。
まぁ直ぐに見つかったんだけどね。
「あれじゃないですか?」
「そのようです。
それでは誰があの小屋の中に入りますか?」
「何かあっても対処できる実力があった方がいいですね……僕が行きましょう」
「私も行くわ!」
「いや、ルイズ嬢はここで待っててくれ。
もしゴーレムが出てきた場合爆発で牽制してくれ」
「分かったわ、でも……気をつけてね兄様」
「分かっているよ」
俺はルイズ嬢の頭を軽く撫で、アイガを連れて小屋へと向かう。
小屋の中は意外と綺麗で驚いた。
もしかしてロングビル昨日ここで寝たのか?
取りあえず俺はアイガに警戒を任せて破壊の杖を捜す。
すると少し大きめの箱を見つけ、開いてみるとそこには未使用のロケットランチャーがあった。
「やっぱりこれか……アイガ目的の物は見つけたから、ここを出「兄様!早くそこから出て!」……こうなるか。
アイガ、ゴーレムが出てきたら任せても大丈夫か?」
「ジ!!」
「OK、それじゃ任せたぞ?」
アイガが首振りで俺の問いに答えてくれるのとほぼ同時に、小屋の屋根を突き破ってゴーレムの拳が襲いかかってきた。
アイガはその拳を横から殴りつけて、矛先を強引にずらす。
俺とアイガはゴーレムの二撃目が来る前に急いで小屋から飛びだした。
「兄様!」「「「レッド!」」」「きゅい!」
「僕とアイガは無事だ!
そんなことよりもあのゴーレムをどうにかするぞ!
取りあえず破壊の杖は見つかったから、後はあのゴーレムをどうにかしてフーケを見つけ出せばこの件は解決だ!」
さて、ここからが正念場だな。
サイトにロケランを使ってもらわないと、もしフーケに奪われると厄介だ。
「取りあえずゴーレムの足止めを僕とアイガでするとしますか!」
「ジ!」
「皆は上から援護してくれ!」
「俺も手伝うぜレッド!」
「サイト君……あぁ!
でも無理はしない様にな?」
「分かってるって!」
「兄ちゃんの言うとおり、無茶すんなよ相棒」
こうして俺達はフーケのゴーレムと戦うことになった。