第106話 フーケの正体
やっぱりでけぇな……フーケのゴーレム。
アイガの三倍以上デカイとかどうよ?
「レッド、作戦はどうするんだ?」
「サイト君は陽動を頼む。
この中で一番動きが早いからね」
「分かった」
「あぁ後この杖、僕は使い方が分からないんだけど、サイト君は分かるかい?」
俺はサイトに破壊の杖と言う名の兵器を手渡した。
彼は受け取った物を見て凄く驚いていた。
「これは……ロケットランチャーじゃねぇか!」
「ロケットランチャー? それはなんなんだい?」
「あ、あぁ平民でも使える魔法の杖と思ってもらえれば……」
「それは凄い!」
大丈夫かな?
俺白々しくない?
「でも、これがあれば……レッド!」
「どうかしたのかい?」
「あのゴーレムの動きを止められるか?」
「出来なくはないよ……どうして?」
「破壊の杖を使う」
「使い方が分かるのかい?!」
「あぁ、だからアイツの動きを止めてくれ!」
「分かった」
俺達はゴーレムの攻撃を避けながら、作戦会議を終了した。
動きはそんなに速くないから避けるのはそれほど難しくなかったしな。
「キュルケ、ルイズ、タバサ!
シルフィードの上から援護を頼む!」
「「「分かった!」」」
三人は俺の指示にしたがって、上空からの援護射撃を開始した。
空から降り注ぐ氷の槍、炎の弾丸、そして爆発。
それらの魔法を受けゴーレムの身体は砕けるが、直ぐに再生してしまう。
ルイズ嬢達の表情は強張っている。
「僕達も参加するとしますか!
アイガ、ストーンエッジ!」
「ジ!」
ゴーレムの真下から石の刃が高速で飛びだしていく。
石の刃は容赦なくゴーレムを穿つ。
腕が飛び、脚が飛び、胴体を貫通したが、再生してしまう。
しかしその再生中は動けない。
「いくらやっても再生してしまうならこれはどうだ?
プリズンロック!」
俺はゴーレムの周囲に石の壁を作り出し、閉じ込めた。
このまま押しつぶすこともできるけど……。
「サイト君、動きは封じたよ!」
「了解!
じゃあ今から三秒後に前面の壁を崩してくれ。
そこに破壊の杖を使う!」
「OK、じゃあ3・2・1……0!」
「発射!」
俺が前面の壁を崩すと、そこに向かってボヒュという音と共にロケットランチャーの弾が飛びこんでいく。
そして着弾。
続く轟音。
その結果ゴーレムは俺の作った壁と共に木っ端微塵に吹き飛んだ。
その光景を見た三人はシルフィードから下りて、こちらに駆け寄ってきた。
「今の爆発は何?!」
「凄い音だったわね?!」
「……バラバラ」
「あぁ、サイト君が破壊の杖を使ったんだ。」
「「えぇ!?」」「驚いた」
「アンタ何で破壊の杖使えるのよ!!」
「何でも何もあれは、俺の世界の兵器だからなぁ……」
「兵器?」
「あぁ皆さん無事だったんですね!」
サイトが何故破壊の杖を使えるのか言及されそうになっていたが、今まで何処に行っていたのか分からなかったロングビルが登場したことで話は途切れた。
「ミス・ロングビル?
今まで何処に?」
「私は怪しい人影が見えた気がして、その影を追い掛けていたんです。
でも凄く大きな音がしたので、皆さんが心配で戻ってきたんです……あ、それは破壊の杖じゃないですか!
良かった……一応確認させていただけますか?」
ここからは気が抜けないな……。
彼女がどんな行動を取るかは分かっているんだけど、もしかしたらイレギュラーがあるかもしれない。
「はい、どうぞ」
「どうもありがとう」
ロングビルは破壊の杖を受け取って、少し後ろに下がるとこちらに銃口を向ける。
最初皆は状況が理解できていなかったが、次第に理解出来てきたようだ。
「アンタ達、杖を捨てな!」
「ミス・ロングビル……それはどういうことでしょうか?」
「いやぁ、助かったよアンタ達。
あのままだったら二束三文にしかならなかったからねぇ」
「まさか……アンタが土くれ?!」
「そうさ!
全く長かったよこの時まで……あのエロ爺の秘書を続けて数年。
漸くこれを手にすることが出来た!」
「でも何で……盗んでそのまま逃げなかったのよ!」
「私だってそうしたかったさ!
でもねぇこの破壊の杖の使い方が分からなくてね……駄目もとでアンタ達に賭けたんだけど賭けには勝ったようだね!」
ルイズとキュルケは憤りを顕わにし、タバサは隙を見て攻撃しようとしている。
しかしフーケも馬鹿ではない。
「杖を捨てなって言っただろう?
捨てないなら、ゴーレムすら木っ端微塵するこの破壊の杖の餌食になるよ!」
「クッ!」「しょうがないわね」「不覚」
俺は別に杖を捨てても指輪型発動体があるから、特に問題ないんだけどね?
「そこのアンタ達も剣を捨てな!」
「分かった」「分かりました」
俺達は地面に剣を刺して、少し離れた。
デルフは空気を読んで喋らない。
「それじゃ……アンタ達には死んでもらうとするかね」
「「な!?」」「「……」」
「何を驚いているんだい?
正体がバレた以上生かして返すわけがないじゃないか」
「始めからそのつもりで……最低!」
「それはそれは心が傷つくねぇ……それじゃあ原因を消すとしますかね!」
フーケは俺達に向けて破壊の杖の引き金を引く………が弾はいつまで経っても出ない。
硬直しているロングビルをサイトがデルフを地面から引き抜いて、剣の腹で一閃した。
上手い具合に入った剣での打撃は、フーケの意識を容易く奪い去った。
またも状況についてこれていない女性三人。
「……えと、何で破壊の杖は発動しなかったの?」
「あぁ、あれは単発式なんだよ」
「単発式?」
「一回使うともう使えないってことだよ」
まぁ弾があれば別だけどと小さく呟いていたのを聞いたのは俺だけの様だな。
なんにしてもこれで一件落着かな?
「なんにせよ破壊の杖も戻ってきたし、フーケも捕まえた。
これで一件落着ですね」
「そうね!」「早く帰ってお風呂に入りたいわ……」「本の続き」
「じゃあ帰るとしますか!」
俺達はフーケを縛って馬車に寝かせるとそのまま学院の帰路へとついた。