第114話 ギトーの授業
非合法カジノの調査が終わり、数日が経過した。
今俺は学院長に呼び出されて、学院長室に向かっている。
特に何もヤらかしてないから、何で呼ばれるのか分かんないんだよなぁ。
「失礼します」
「フム、入ってきてくれ」
俺はドアを開けて、学院長室に入って行った。
他の先生はいない……と言うことは俺だけか?
視線を動かして周囲を見渡す。
「お主だけじゃよ」
「そうですか」
「まぁ畏まることはない。
今回呼んだのは、二年生の生徒に連絡を伝えてほしいのじゃ」
「連絡? っていうか何で僕なんですか?」
本来ならこういう役は俺じゃなくて、コルベール先生じゃないのか?
俺の考えてることが予想出来たのか、学院長は苦笑しながら説明してくれた。
「最初今日授業があるギトー君に授業前に話す予定じゃったんじゃが、呼び出す前に教室に行ってしまってのぅ。
コルベール君は実験に失敗して気絶しておる」
「何やってるんですかあの人……。
分かりました、お引き受けします。
肝心な連絡内容はなんですか?」
「おぉまだ教えとらんかったな!
連絡内容は使い魔品評会に姫様がお見えになるということじゃ」
「……そうですか」
うわぁ……会いたくねぇ。
どうも前世の時から好きになれなかったんだよ。
何で友達って言っておきながら戦場に行かせるかな?
信用できる相手なのはわかるけど、まだ一人の学生に過ぎないルイズを一人戦地に送るなんて正気の沙汰じゃない。
自分のミスの尻ぬぐいを親友に任せるっていうあの姫はどうも好きになれない。
「今はギトー君が授業をやっているころじゃが、連絡だけじゃから今から行っても大丈夫じゃろう」
「そうですね」
「じゃあ頼んじゃぞ?」
はぁ伝える内容も伝える相手も不本意だな……気が進まないけど、行くとしますか。
教室前まで来たけど、やっぱり授業中に入って行くのは度胸がいるな。
なんだろう、遅刻したような気分?
「そこの平民、貴様は最強の系統を知っているか?」
「知らないです」
「フンッ、だろうな……
ではミス・ツェルプストーは答えられるか?」
この声はサイトか?
あれ、これ原作でもあったような気がする。
確かこの後は……。
「それなら火に決まってますわ。
全てを情熱の炎で焼き尽くす事が出来るのですから」
「違うな、そうではないのだよ。
論より証拠だ……君の魔法を私に放ってみなさい」
そうだ、この後キュルケの炎をギトーが……。
止めないと!
「では胸を借りるつもりでいきますわ!」
「来たまえ!」
「ちょっと待ってください!」
「ファイヤーボール!」
「エアハンマー!」
「クッ、アースハンド!」
俺はキュルケの身体を引き倒して、炎を纏ったエアハンマーから避けさせた。
あぶねぇ……もし当たってたら火傷だけじゃ済まなかったぞ?!
俺は壁に轟音を立てて当たった風の槌を一瞥して、ギトーを睨む。
「ギトー先生……今何をなさったか分かってるんですか?!」
「レッド先生、今は私の授業中です。
邪魔をしないでいただきたい!」
「僕は、今、何をしたか、聞いているんです」
「見ればわかるだろう?
風こそが最強だということを身をもって証明してあげたのですよ」
いや、クラスが違う時点でその比較成立しねぇぞ?
お前スクウェアだろうが……。
っていうかそれ以前に生徒に向かって怪我するような魔法を使うな!
「貴方はあくまで今のを授業と言うのですね?」
「当り前だろう」
「では学院長に今のことを報告してもよろしいですね?」
「な?! なんだと?!」
「これは貴方の教育方針で、学院長の許可を得てやっているのでしょう。
なら僕が学院長に確認を取っても大丈夫じゃないですか?」
さぁどう返してくる?
「今のはギリギリの所で、エアハンマーを解く予定だったのだ!
貴様が来なければそうするつもりだった!」
「(いやいや俺が引き倒さなかったら、普通に直撃だったぞ?)そうだったのですか……どちらにしても報告はしますけどね?」
「何故だ?!」
「教室の壁……壊れてしまいましたからね。
理由を話さなければなりませんから」
「クッ!……そうだ、貴様こそ人の授業中に教室に入り込んで授業妨害ではないか!」
授業妨害……最強の系統聞いて、尚且つ生徒に向かって教室内で攻撃魔法使うことが授業ね?
ははは、笑わせてくれるなよ?
「それは、申し訳ありませんでした」
「全く誰の許可を得て、私の授業を妨害「ですが」なんだ……」
「学院長から至急連絡事項を伝えてきてくれ、と言われて来ましたので大目に見てほしいです」
「なんだと?」
「皆さんも聞いてください。
もう少しで使い魔の品評会がありますね?
今年は、何とアンリエッタ姫がいらっしゃるそうです!」
ザワザワし始めたな……まぁしょうがないけどな。
そんなことよりギトーの視線がウザったすぎる。
調子に乗りやがって的な目が対応に困る。
「僕の連絡は以上です。
皆さん品評会に向けて頑張ってくださいね?
あぁ後ミス・ツェルプストーは怪我とかないと思いますが、もしどこか痛かったら僕に言ってください。
薬を渡しますので」
「ありがと、レッドせんせ!」
「ではギトー先生……授業の続きをお願いします」
「……邪魔だから出て行きたまえ!」
「それではみなさん頑張ってください」
俺が教室を出ると、何かを硬いものを思いっきり叩いたような音が聞こえてきたが、聞かなかったことにした。