第114.5話 魔法の相性考察
レッドが教室から出て行った後のギトーの授業。
それはもう凄まじい空気の中で行われていた。
「糞!」
そう言って教壇を思い切り叩くギトー。
その姿を見て、同情する生徒は誰一人としていなかった。
「今日の授業はここまでだ!
後は各自自習していろ!」
そう言ってギトーは、凄い勢いで教室を出て行った。
皆呆れすぎて声も出ない。
「兄様苛立ってたみたいね」
「そうなのか?」
「多分……前に聞いたことあるんだけど、昔クラスの友達が同じようにギトーに吹き飛ばされそうになったんだって。
多分その時のことを思い出したんだと思うけど……」
「あぁ、それ聞いたことあるわね……その吹き飛ばされそうになった本人からだけど」
「キュルケ! アンタいきなり会話に入ってくるんじゃないわよ!
……怪我はなかったの?」
「な〜に〜、心配でもしてくれてるのかしら?」
「そ、そんなんじゃないわよ!
もしアンタが怪我したなら、しばらくアンタの顔見なくて済むから、気になっただけよ!」
顔を赤くして、顔を背けながら言ってもなぁ。
そう思ったサイトは悪くないと思う。
そんなサイトの考えを感じ取ったのか、ルイズは弁慶の泣き所にトゥキックをかました。
「イッテェ!!!!!
何すんだよ!」
「なんか不愉快なことを考えていた気がしたのよ!」
サイトドンマイ!
「所でルイズ。
貴方なら最強の系統なんて答えたのかしら?」
「私?……私なら虚無って答えたと思うわ」
「虚無?」
「ダーリンは知らないのね……良いわ私が教えてア・ゲ・ル!
虚無っていうのは伝説の系統で、どんな魔法があるのかよく知られてないの。
でも始祖ブリミルがこの系統だったことから、生半可なものじゃなかったんだろうって言い伝えられてるわ。
伝説によればエルフの先住魔法すら打ち破ったとか……」
「(良くわかんないけど……)凄いんだな!」
「ってルイズ、虚無は抜きなさいよ。
四系統の中ならどれだと思うのよ?」
「四系統の中で……う〜ん」
ルイズは少し考え込んだ。
「相性次第かしらね……」
「「相性?」」
「火は攻撃に特化してるからある意味最強かもしれないわ。
風は攻撃が不可視だったり、凄く速かったりする。
しかも遍在っていう凄い魔法もあるわ」
「そうね」
「でも土だって錬金は凄く色々な使い方があるから、弱いとは言えないし、ゴーレムだって高位のメイジが作ればとても強い。
水だって攻撃に向いてないとか言われてても、使い方次第でどうにでもなるって兄様も言ってたでしょ?」
「そうだったわ……レッドの水魔法の攻撃力は、確かに高いわね」
「でしょ? だから簡単に最強なんて決められないのよ」
キュルケはその結果に納得したのか、その話を続けることはなかった。
ところ変わって、ある日の暗い地下牢でのお話。
そこには一人の女性がいた。
「全く……土くれのフーケ様ともあろう者が、あんながきんちょ達にしてやられるなんてね。
焼きが回ったのかね?」
その女性はついこの間レッド達が頑張って捕まえたオールド・オスマンの秘書、ミス・ロングビル改め土くれのフーケだった。
レッド達に気絶させられて、衛兵に捕まり、今はここに居る。
杖は勿論のこと、装飾品からメガネまで持っていかれてしまった。
「ふぅ、どうしようかねぇ」
「ならば、私たちに手を貸すというのはどうかね?」
「誰だい!?」
牢屋の檻越しに仮面を付けたメイジが立っている。
何時の間にあそこに居た?
「私は名乗るほどの者ではないよ。
所でさっきの話はどうだね?」
「アンタ達に手を貸すって話かい?
ハンッ! 牢屋に捕らえられた盗賊なんてどうするっていうんだい!」
「こんな牢屋など有ってないようなものだ。
もし手を貸す気があるのなら、ここから出してやろう」
「それはそれは……魅力的すぎて怪しいね?」
牢屋から罪人を自由に出来る立場にある人がこの組織には、いると言うことだ。
バックがしっかりしている組織は途中で抜けることが難しい。
どうする……?
「悩んでいるようだな……私たちは優秀なメイジが必要なのだ。
そう土くれのフーケ……いや、マチルダ・オブ・サウスゴータ」
「なんでアンタがその名前を?!」
「ちょっと調べさせてもらったよ」
「……」
「私たちに組みすれば、憎きアルビオンの王族に復讐が出来るぞ?」
「なんだって?」
「私たちは今度、アルビオンを攻める。
その際に王族を一人たりとも生かすつもりはない」
「何で私にそんなことを……まさか?!」
「いや、口が滑ってしまった。
これは困ったな……仲間にならないなら始末するしかなくなってしまったな」
「……最低だねアンタ」
「それは褒め言葉かい?」
フーケは顔を歪めて仮面の男を睨んだ。
これで選択肢は一つしかなくなった。
「元からここに居ても恐らく死罪だっただろう?
なら私たちのために力を使いたまえ」
「しょうがないね……アンタ達に従うよ。
で、一体アンタ達は何者なんだい?」
フーケはそう尋ねた。
「私たちか?
私たちは……レコンキスタだ」
仮面の下の表情はきっと歪んだ笑いだっただろう……。