第117話 運悪く遭遇
無事?にラ・ロシェールという、アルビオンに向かう便が出ている村についた。
アルビオンは空に浮いている。
故にこの町から出ている風石を利用した乗り物で行くのが一般的だ。
行こうと思えば竜に乗って行くこともできる……あまりやらない方が良い方法だけどな。
高度が高いと風は強くなる。
人を乗せて飛行するには少し厳しいだろう。
因みにギャロップには村に入る前に帰ってもらった!
「さてとルイズ達は女神の杵亭に泊ってるから、他の宿に泊まらなきゃな。
でも何かあった時に直ぐ動けるよう、近くなくちゃ駄目だろう……」
周囲を見渡して俺の目に入ったのは、とある酒場だった。
あの酒場はどうやら休憩所も兼ねているようだ。
ならあそこにするとしよう。
そう思って酒場に入ったのだが、そこは厳つい男たちの溜まり場だった。
特に注目もされなかったので、カウンターに向かう。
「何にするお客さん?」
「部屋を借りれるか?」
「休憩かい?」
「いや、宿泊で頼む」
「一晩80スゥだ」
意外とするんだな……まぁこれは経費で落ちるから何の問題もないんだけどな。
俺はマスターに宿代を渡し、二階の部屋へと向かった。
どうやら俺は運が良かったらしい、丁度女神の杵亭がばっちり見える部屋だ。
これで何時でも対応できる。
特にやることもなかったから、ベットに横になっていると……なにやら下の階が騒がしい。
耳を澄ませてみれば、どうやら酒場に入ってきた女性に傭兵達が絡んだらしい。
「どうでもいいか……」
「アン……みたいな……に出来る……がない」
「なんだとこのアマ!」
なんか揉めてるな……。
取りあえず気になったから、ドアを少し開けて階下を覗くと、何処かで見たことある顔が傭兵達をノシていた。
「あれ、フーケじゃん……」
静かにドアを閉めて、ドアに耳を付けた。
話を聞けば明日の夜に女神の杵亭を襲撃する話をしているようだ。
二階まで聞こえる声でそんな話すんな!
まぁこっちとしては助かるけど……。
俺はその後もしばらくの間、ドアに耳をくっ付けていた。
翌朝、窓から外を見た時に見えた光景は髭の紳士っぽい人がサイトを吹っ飛ばしているところだった。
え? 何で決闘してんだ?
許婚でもないんだから、君に相応しい云々のくだりはないはずだ。
あぁ、ただ単に戦力確認か……ルイズもいないしな。
サイトはどうやら落ち込んでいるようだ。
いや、負けるのが普通なんだけどな?
ガンダールヴがあれば最強とでも思っていたのだろうか?
何にしても今俺にできることはないので、窓から視線を外し昼食を取るために下に降りた。
「マスター、昼食は用意できるか?」
「あぁ、そこに座って少し待っててくれ」
「分かった」
取りあえず勧められるまま、カウンターに座って待つ。
昼は傭兵ここに居ないんだな……っていうか客がほとんどいない。
まぁ昼に酒場で飯食うなら、普通に定食屋行くよな。
「出来たよ」
「ありがとう」
俺の前に出てきたのは、トーストとソーセージ二本、そしてスクランブルエッグだ。
朝食の残りか?
まぁ食べれればいいか。
その後出された食事を食べ終えた俺が水を頼むと、店員は表に井戸があるからそこで汲めばいいと言った。
流石に酒を飲むわけにもいかないので、水を汲みに外に出る。
「あぁ、意外と近くにあるんだな……あ」
「……レッド?」
なんてタイミングだよ……。
急いで俺はタバサの手を掴んで酒場の中に戻る。
そしてそのまま部屋まで引っ張って行った。
「……痛い」
「あ……ごめんな?」
「何でここに居るの?」
まぁタバサなら話しても大丈夫かな?
「学院長からの依頼でな。
ルイズ達を陰から助けるっていう……な」
「そう……」
「だからルイズ達には秘密な?」
「秘密……分かった」
何で少し嬉しそうなんだ?
いや別に良いんだけど。
「あぁそういえば今日の夜に襲撃があるかもしれないから気をつけろよ?」
「何で知ってるの?」
「昨日この酒場にフーケが居てな。
傭兵達と一緒に女神の杵亭を攻める計画を立ててたんだ」
「フーケ?!」
「多分脱走したんだろう」
本当ならワルドのことも話した方が良いのかもしれないけど、万が一……本当に万が一だけどワルドがレコン・キスタに属してない可能性もある。
確実じゃない情報は話せないからな。
「だから宿に戻ったら、何か対策をしておいた方がいい。
一応俺も外で援護するけど、あくまで援護だからな……。
どうしても危険だと感じたら合図をしてくれ」
「合図は?」
「俺の部屋の窓に向けて、ライトを飛ばしてくれ」
まぁ照明弾的な扱いだな。
分かりやすいし良いだろう。
ところでタバサさん?
何で君はベットに座ってくつろぎ始めてるのかな?
「戻らなくていいのか?」
「今は自由時間」
「そうか……」
「昔話」
「へ?」
「レッドの昔の話が聞きたい」
なんでタバサは俺の過去を知りたがるんだろ……まぁタバサは俺の話を楽しそうに聞いてくれるから話してて楽しいんだけどな。
「じゃあ今日は俺の学院時代の話をしようか……」
「楽しみ」