第118話 傭兵たちの強襲
気付けば夕方になっていたので、タバサを宿へと帰す。
話が微妙なところで終わってしまったので、微妙に不満そうだったが……。
「下の階が騒がしくなってきたな。
そろそろフーケ達も動き始めるかな?」
俺はここから傭兵の数を減らすのが、主な仕事になりそうだな……。
もしかしたらタバサから救援要請が来るかもしれないが、意外と負けず嫌いなところがあるからな。
「お、動きだしたな」
酒場からフーケを筆頭に、傭兵達がドンドンと出て行く。
フーケも宿の側面に立つとゴーレムを作り始めた。
傭兵達は入口に張り付いている様だ。
開戦は近い……。
フーケはゴーレムを作り終え、傭兵に手で指示を与え始める。
そして指示を与え終えると本人は杖を振り、ゴーレムに宿の一室を殴りつけさせた!
それと同時に傭兵達が宿に雪崩込んでいく。
俺も仕事しますか!
「ロックスピア」
石の槍が宿に突入しきれなかった傭兵達の手足を貫いていく。
これでもまだ半分以上残ってるな……。
突然の攻撃に傭兵達も困惑しているが、フーケが何かを言うと傷ついた仲間を放置して宿へと歩を進める。
大方成功報酬の話でもしたんだろう。
「まぁ、成功を許す気はないけどな
もういっちょ、ロックスピア」
再び傭兵の何人か石の槍に貫かれ、行動不能になる。
でも一回目程じゃないな……流石に警戒されてるか?
フーケも周囲を見回している。
どうやら中でも動きがあったようだな。
宿から火の手が上がっている。
「お? タバサ達が出てきたな……」
キュルケとギーシュはなんか驚いてるな。
フーケはギーシュを睨みつけている。
あ、ギーシュがやったと思ったのか?
フーケが何か騒いでる。
「傭兵はほぼ全滅、フーケはあの三人に任せれば大丈夫だろう」
なんかタバサこっち見てるし……。
取りあえず口パクで頑張れって言って、俺は酒場を後にした。
〜タバサ side〜
レッドはルイズ達の様子を見に行った?
少し残念な気持ちが、私の中に生まれる。
「やってくれたねアンタ……傭兵相手に奇襲なんてやるじゃないか!」
「奇襲?」
フーケは周囲に転がる傭兵達に目を向けながら、ギーシュに向かってそう言い放った。
ギーシュは不思議そうな顔をしている。
「白々しい真似を!
アンタが傭兵達の手足を、魔法で貫いていったんだろうが!」
今ギーシュの頭の中は疑問でいっぱいだろう。
自分がやった覚えのないことを怒られている様なものなのだから。
「ねぇ、タバサ……これ誰がやったの?
ギーシュじゃないわよね?」
「……知らない」
ここにレッドがいて私たちの援護をしているのは、彼と私だけの秘密。
そう思うと私は頬が緩むのを感じた。
「タバサ?」
「何でもない」
「でも貴方笑ってるわよ?」
「気のせい」
「アンタ達! 私を無視するんじゃないよ!」
「今はフーケの相手をするのが先決ね……後で笑っている理由聞くからね!」
「……秘密」
こうして締まらない始まり方をしたフーケとの戦いは、終わり方も締まらなかった。
ギーシュが薔薇の花びらを油に錬金して、それに火を着けることでフーケのゴーレムを燃やしたのだ。
その後はキュルケとフーケのキャットファイト……女同士の戦いはフーケの勝利、彼女は煙幕を使って逃げてしまった。
ここで深追いをすると言う選択肢は取れない。
手負いの獣は何をしてくるか分からないし、今はルイズ達の方が気になる。
彼らの方に奇襲はなかっただろうか?
〜side end〜
俺がルイズ達の様子を見に来た時には、既にサイトがワルドの遍在と戦っていた。
そしてサイトは………ライトニング・クラウドで撃たれた。
痛そうだ……だけどこれでサイトは戦闘に対する甘えを消せるはずだ。
サイトはまだ人を殺したことがない。
そんな甘い考えではワルドを相手にするのは厳しい。
原作では勝ったかもしれないけど、今回はルイズとの結婚式イベントは起こらない。
故にアルビオンに行った後は何があるか分からないのだ。
今一番ルイズの近くに居ることの出来る人間はサイトだ……俺は影からの援護が任務内容だし、表立って守るのはサイトの役目になる。
だから油断をしないで欲しい……自身がこれほどの怪我を負えば、ここが戦場で何時死んでもおかしくないと理解したはずだ。
俺の妹分を頼んだぞ……サイト。
ルイズ達がアルビオン行きの便に船に乗るのを見届け、一旦酒場に戻った。
部屋でアルビオンにどうやって行くか考えるためだ。
タバサ達はシルフィに乗って飛んでいくはずだ。
だが一緒に行くのは選択できない。
ならどうする……当初の予定通り飛竜で飛んでいくか?
「それが妥当だな」
飛竜の代金は学院長が持ってくれる。
ならこれが一番良い方法のはず多少危険は伴うけどな。
本当ならプテラとかに空を飛ぶで連れて行ってもらうのが良いんだが、如何せん目立つだろう。
「今日はもう飛竜を扱ってる店が閉まってるか……明日だな」
俺は明日やることを頭の中で整理しながらベットに横になると、ゆっくりと睡魔に身を任せていった。