第120話 想定外の傷害
なんとか大っぴらに出来る航空手段を手に入れた俺。
取りあえず飛竜を連れて、街を出ることにした。
先ずは名前を付けようか……。
これから長い付き合いになるだろうしな。
「なんて名前にしようか……」
「グルルルル」
緑っぽい鱗、飛竜……リオレイア?
よし、レイアにしよう!
「お前の名前はレイアだ!
これからよろしく頼む」
「ギュイ!」
気に言ってもらえた様でなによりだ。
あれ、所でレイアって性別どっちだ?
メスじゃなかったら、リオレイアの名前は……ま、まぁ本人が気にしてないならOKだな!
「じゃあレイア、あの島まで飛べるか?」
「……ギュイ!」
少し悩んだようだが、行けるようだ。
なら準備をしようか。
「流石にこのままレイアの背に乗ってアルビオンに行くのは、少し厳しいから鞍を付けさせてくれ」
「ギュイギュイ!」
「OK、じゃあ錬金!」
俺は近くにあった木を錬金で鞍にしてレイアの背に乗せたが若干大きさが合わなかったので、もう一度錬金を掛けてピッタリのサイズにした。
レイアは若干拘束される感じが微妙に気になるようだが、そこは我慢してほしい。
硬い竜の鱗の上に直で座ると、股に途轍もないダメージを受けそうなんだ!
俺が鞍に跨ったのを見計らってレイアは勢いよく翼を動かし始めた。
「よし、じゃあ行くとしますか!
目的地は天空の城ならぬ、浮遊大陸アルビオンだ!」
「ギュィィィィィィィイ!」
そうして俺達は、気ままな空の旅とは程遠い空中散歩を始めることとなった。
アルビオンはハルケギニアの上空三千メートルに存在する浮遊大陸だ。
国土はトリステインと同じ程度で、浮遊大陸なだけはあって空軍が強い。
ルイズ達はアルビオンの港ともいえるロサイスから首都ロンディニウムに向かうはず。
なら俺もロサイスからアルビオンに入って、少し情報収集を行うとしよう。
恐らくルイズ達は目立ってたはずだから分かることもあるだろう。
何故俺が今こんなことを考えているかと言うと……。
「寒い……めちゃくちゃ寒いぞ!!」
「ギュ……イ」
「寝るな! お前が寝たら俺も死ぬ!!」
そうか、飛行距離が問題じゃなくて寒さが問題だったのか!
と先ほど理解したわけだが、それで寒さをどうにかできるわけもなく、俺は薄着のまま真冬の様な気温の中強い風に吹かれながら空を飛んでいます。
飛竜は種によっては寒さに強いのかもしれないが、流石に高度三千メートル以上で空中戦する竜騎士はアルビオン以外には殆どいないだろう。
「寒いと思うからきっと寒いんだ……あぁ暑い、暑いなぁ!!
もう焼け死んでしまいそうだよ!?」
「……ギュイ?」
「何言ってんだコイツみたいな顔で見るな!
ちゃんと前見て飛びなさい!」
「ギュ〜イ」
「やっぱりお前……見た目にそぐわず人間味溢れすぎだぞ?!」
まぁ接しやすいから良いんだけどな?
いや、それにしても寒い……えらい寒い。
もう正直リザードンでも呼ぼうかと迷うくらい寒いぞ?
早くアルビオンに着かないと俺が、そしてレイアが死ぬ。
プリーズ陸地!
「それにしても、見えてるのに中々着かないな……」
「グルルルル」
「いや、お前の所為だって言ってるわけじゃなくてな?
アルビオンがデカイのは知ってたけど、やっぱり遠くからも大きく見えるから距離感が分かりにくいんだよ。
まぁそれでも大分近づいて来てるのは分かるんだけどな」
流石に結構な時間飛んでるからな……多分、後十分位飛んでれば着くだろう。
でもやっぱり普通は飛行船で行くところを飛竜で行くのは無謀だったな。
「レイアも御免な?
こんな強行軍に連れてこさせて……今度お見合いさせてやるからな?」
「ギュイ?!」
「うぉ?! いきなり首をこっちに向けるんじゃない!
身体が微妙に捻じれて落ちるところだったぞ?!」
「ギュイ!」
「見合いの件ならこの仕事が終わってからな?
っていきなりスピード上げるなぁぁぁぁぁ!!!」
「ギュィィィィィィィィィィィィイ!!」
ギャロップの時もそうだったけど風が痛い!
あの時は葉っぱや砂とかが顔に当たって痛かったんだけど、今回は寒い風が肌を突き刺す様に俺を襲うんだ……ロサイスに着く前に俺は死ぬかも知れん。
あぁ光が見えるよ……天国かな?
「ん、あれが天国……じゃない! ロサイスだ!!
やっとだ、やっと着くんだな!」
「ギュイ!!」
「急げ! 急ぐんだレイア!!」
「ギュィィィイ!!」
寒い! 痛い! 眠い!
でも……後少しで暖かいスープが……・・・暖かい料理が……待ってるんだ!!
スピードを上げるレイア、寒さに負けそうだが目の前の光に導かれるようにドンドンとロサイスの港へと近づいていく。
そしてついに……。
「着いた……着いたぞ!」
「ギュイ!!」
「ようこそ浮遊大陸アルビオ……って君大丈夫か?!」
「寒いです……」
「それは当り前じゃないか!!
何でこんな薄着で、しかも飛竜で飛んできたんだ!
飛行船に乗れば良かっただろうに……」
「ははは、ちょっと無茶したくなりまして……」
「取りあえずあそこで身体を温めた方が良い!
飛竜はそこに預けてられるからね?」
俺は彼の言う通りに、港の建物に入って行った。
取りあえず言えることは、外に比べて建物の中はまるで天国の様だったということだ。