第126話 アルビオン脱出
ルイズを連れてサイトの部屋まで向かっている途中、俺は道中ルイズに何があったのか聞くことにした。
聞いている限り、ワルドがルイズを口説こうとしない以外は殆ど原作と変わらないようだ。
ただサイトとワルドの決闘の経緯については、結構変わっていた。
「私が広場に着いた時にはもう向き合っていたの。
そしてワルドが話し始めたのよ……広場に関する逸話と、これから向かう場所が危険に満ち溢れてるということを」
「結局は奴の傍に居るのが一番危険だったんだけどね?」
「今思うと怖いことしてたのね……って話が逸れちゃうじゃない!
兄様は静かに聞いてて!」
「はい……」
「そこまではサイトも特に変化なく聞いていたの。
でもワルドは次に魔法も使えない平民が有事の時にメイジを守る事なんてできない!って言ったの。
その台詞が気に食わなかったみたいで、アンタだって杖を奪われたら平民と変わらないじゃないか!って……そうしたら一瞬ワルドの顔が無表情になって、また普通の顔に戻ったんだけど明らかに空気が変わった」
まぁそりゃそうだよな。
学院帰ったらサイトに貴族についてミッチリ教え込まないと駄目だな……。
「そこからは一方的だったわ。
サイトの剣は確かに早かったんだけど、一撃も当たることはなかった……」
「サイト君は特に剣術を学んだことがないみたいだからね」
「そうなの?」
「サイト君の剣は確かに早いけど、剣を振る先に視線が行くから避けようと思えば出来なくもないんだ」
「そうだったんだ……あ、でその後はワルドの突きを剣で受けて吹き飛ばされて御終い」
「あれ? ギーシュ達はその時何してたんだい?」
「ギーシュは私の横で決闘を見てたけど、キュルケは部屋で寝てたみたいだし、タバサは多分朝御飯食べていたんじゃないかしら?」
「ギーシュは何か言っていなかったかい?」
「ギーシュが?
……そう言えば彼も訓練に誘うべきだろうか?とか言ってた気がするかも。
でも訓練ってなんのかしら?」
ギーシュ……俺はいきなりサイトを連れてこられて訓練に入れてくださいって言われても、多分断るぞ?
俺は自分が訓練をつけるのに納得できる理由がないなら訓練を付ける気はない。
只ワルドに負けたから強くなりたいとか言う理由なら、絶対に認めることはできない。
まぁワルドにルイズが誘拐されたことを聞いて、ルイズを守れるだけの力が欲しいとかだったら……まぁ少し考えるけどね?
でも俺としてはもしかしたら何かの拍子で、サイトに前世のことがバレる可能性がないわけではないからサイトを訓練に加えるのは好ましくない。
「その後で気絶してたサイトが目を覚ましたんだけど、目に見えて落ち込んでたの。
私もワルドはグリフォン隊の隊長何だから負けてもしょうがないって言ったんだけど、不貞腐れちゃって……今も機嫌が悪いみたい」
まぁ今まで学院の決闘で勝ち、フーケ戦で活躍してたからなぁ。
少し天狗になっていたところを、綺麗にへし折られたんだろうな……。
決闘の後も基本的には原作通り、空賊に扮したウェールズに人質にされたり、ウェールズの戦争に行く理由に憤ったりしたらしい。
話が終わるとほぼ同時にサイトが寝ている部屋の前に着いた。
「入るわよ!」
「へ?」
ルイズは特にノックをすることもなく、扉を開けるとその状態で固まった。
取りあえず俺はルイズを持ち上げて、ドアを閉めた。
普通逆だろ……サイトも着替えの時ぐらい鍵掛けろよ。
少しの間廊下で待っていると、部屋のドアが内側から開いた。
「入ってくれ」
「……」
「じゃあお邪魔しようかな?」
流石王宮だな……部屋が広い。
まぁそんなことより、この沈黙をなんとかしないとな。
「取りあえず要件から言わせてもらうと「ちょっと待ってくれ」何だい?」
「今さらかもしれないけど、何でレッドがここに?」
「あぁ、その事か。
僕は学院長に頼まれて、君たちを影からサポートしてたんだ。
一応フーケが宿に襲撃掛けてきたときに、傭兵の数減らしたりしてたんだよ?」
「そうだったのか……」
「で肝心な要件なんだけど、急ぎこの国から出ないといけない」
「……戦争が始まるのか?」
「そうだね」
「そうか……」
一瞬静かになったが、サイトはここを出る準備を始めた。
因みにウェールズとワルドのことは、聞かれたら応えようと思う。
取りあえずアルビオンを出たらのことだけど……ここでレコンキスタが気に入らないから戦うとか暴走されても困るからな。
「ところでレッド……どうやってアルビオンから出るんだ?」
「そう言えばそうよね……どうするの兄様?」
「多分そろそろ来ると思うよ?」
「「来る?」」
俺達はそのまま歩いて城を出ると、門の前に三人の人影が見えた。
タバサは確り伝えてくれたみたいだな。
「アンタ達無事だったのね!」
「来るってキュルケ達のことだったのか……」
「シルフィードは街の外で待機してる」
「来る途中で戦艦が飛んでるのを遠くに見かけたから、急いだ方がいい!」
俺達はキュルケ達と合流して街の外に向けて歩き始めた。