第127話 韻竜の気持ち
アルビオンから脱出するために、シルフィードの待っているらしい場所に向かっている俺達だったが、俺は向かう先がレイアに待機を命じた場所に近いことに気がついた。
まぁそれがどうというわけはないんだけど……ん?
「何か聞こえませんか?」
「特に何も聞こえな「しっ! 静かに」……」
一旦ルイズ達は歩みを止め、全員耳を澄ませる。
すると遠くから何かの鳴き声が二匹分聞こえる。
片方はどうやらシルフィードの声の様だが……もう片方の声は?
なんか聞いたことあるんだよなぁ。
「シルフィードの声みたいね?」
「何かと争っているみたいだな……」
「とりあえず行ってみましょう!」
「そうですね」
シルフィに何かあったら大変だからな……。
俺達はシルフィの声がする方に歩いているんだけど、近づけば近づくほどはっきり声が聞こえてくる。
どうやら戦闘をしているわけではないようだ。
それにしてもやっぱり聞き覚えのある鳴き声だ。
「あれシルフィードじゃないか?」
「前に居るのは飛竜?」
「野良かしら……」
俺はルイズ達の後ろから少し身を乗り出して、その飛竜の姿を確認した。
………何やってるんだレイア?
「あれは僕の飛竜だよ……」
「え、兄様の?!」
「なんでレッドの飛竜がシルフィードと睨みあってるんだ?」
「それは僕にも分からない。
取りあえず止めないと!」
俺は二匹を止めるために間に入った。
すると俺達に気付いた二匹は同時に俺に目を向けた。
「きゅいきゅい!」「ギュイギュイ!」
「……いや分からないから。
取りあえず喧嘩は後にしてください。
今は一刻を争う事態なんです」
「きゅい?」「ギュイ?」
若干不満そうだが二匹から険悪な空気が取れ、同時に首を傾げる。
俺はこれからアルビオンが戦火に包まれることを二匹に言い、急いでこの国から出たいと告げた。
そうすると二匹とも首を縦に振ると、ゆっくりと俺達に背中を向けてくれた。
「それじゃあ俺はレイアに乗っていくから、皆はシルフィードに乗って「きゅい!」……これは何かな?」
俺は服の裾をシルフィードに咥えられている。
なんかレイアの眼が険しくなってる気がする。
「シルフィード……僕はレイアの主人なんだ。
だから僕はレイアに乗って行く」
「きゅきゅい!」
「シルフィ、駄目」
「きゅ?!」
タバサの杖での一撃でシルフィは口を離してくれた。
なんかじと〜ってした目で見てくるんだけど……そこはスルーしておく。
因みにその時のレイアは勝ち誇った顔をしていた。
皆がシルフィの背に乗って、俺はレイアに跨った。
「多分飛ぶスピードは一人しか乗っていないレイアの方が早いと思うから、ラ・ロシェールで待ち合わせしよう」
「きゅい?!」
「それじゃ、先に行かせてもらうよ?」
「ギュイ!」
俺の合図を受けて、レイアはラ・ロシェールに向かって飛び始めた。
〜シルフィ side〜
なんなのねあの子!
私の方がレッドとの付き合いは長いのに!!
「シルフィ、貴方もラ・ロシェールに向かって」
「きゅい!」
私はお姉さま達を乗せて飛び立った。
それにしてもあのレイアとかいう飛竜……偶々私が空中散歩していた時にバッタリ会ったんだけど、レッドの匂いが付いていたから、レッドを知っているか聞いてみたら何の迷いもなく相棒って答えたのね。
私を放っておいて、新しい竜に乗るなんて……浮気なのね!!
学院に帰ったら埋め合わせを要求するのね、きゅいきゅい!!
それにしても、あの子が相棒なら私はレッドにとってなんなのかしら?
お姉さまの使い魔? 昔助けた相手? それとも友達?
きっと友達に近いのね!
じゃあ私にとってのレッドは………なんだろう?
知り合い……もっと親しいと思うのね!
仲間……何かしっくりこないのね。
友達……これもしっくりこないのね。
じゃあなんだろう………番い?
な、何考えてるのね!!!
レッドは人間、私は韻竜!
種族が違うのね!!
でも…………レッドのことを考えると胸がポカポカしてくる。
初めて出会った時は命を救ってもらった。
その恩を返そうと出会った場所に何度も行ってみた。
でもいつも会えなかった……居ないことが分かる度にレッドの服の匂いを嗅ぎながら、彼を思い出した。
あの森に行かなくなってからも、レッドを何度も探そうと思った。
もう既にその時には恩返しよりも会うことが目的だったと思う。
数年が経ってレッドの服もボロボロになってきちゃって、もう会うのも諦めかけてきたところでお姉さまに召喚された。
鏡を通ったのは正直自暴自棄だったのかもしれないのね……でもお姉さまからは、もう忘れかけていた懐かしい匂いがした。
その匂いを嗅いだ瞬間、世界が輝いた気がしたのね。
お姉さまにここにレッドがいるかどうか聞いてみたら、教師をやっていると答えてくれた。
正直何をやっているかとかはどうでもよかった……ただ彼に会えるならそれだけで良かった。
そこから先はお姉さまの任務で一緒に行動したり、レッドが使い魔に会いに来た時に一緒に遊んだりして楽しい毎日を送ってきた。
でもそれだけじゃ少し物足りないような気もしていた。
何が足りなかったのか、私も何回か考えてみたのね……でも分からなかった。
只レッドと触れ合っている間は充実していたと思うのね。
私はレッドと一緒に居たい……触れあっていたい。
これが発情なのか、それとも人間で言う恋なのかは分からない。
最近はお姉さまもレッドが気になっているみたいだし、一回お姉さまと確り話をした方がいいのかな?
「なぁギーシュ、なんかシルフィードが百面相している気がするんだけど……」
「僕に聞かれても困るよ……それよりも僕としては、ヴェルダンデの扱いが気になるんだけど?」
「しょうがないだろ、背中に乗せたら落ちちゃうかもしれないんだから」
「だからと言って手で握られたままって言うのは……」
「最初は咥えて運ぶって言う話だったんだから、それよりはましじゃないか?」
「当り前だよ!
何かの拍子でシルフィードのご飯になってしまう可能性がある運び方なんて、危険すぎて駄目に決まってるじゃないか!」
「お前本当にヴェルダンデが好きなんだな……」
ノリで書いた結果がこれだよ……
修正しました