第128話 悲しみに暮れる
〜サイト side〜
シルフィードの奇行を見ながら俺は、一つ思い出した。
「ルイズ、ところでワルドはどうしたんだ?」
「……アイツは死んだわ」
「「「え!?」」」「……」
「何時?!」
「今朝よ」
「誰に殺されたんだ?!」
「兄様よ」
「「「レッド(さん)が?!」」」「(彼の勘は正しかった)」
何でレッドがワルドを殺したんだ?!
考えても分からないから、ルイズに直接聞くことにした。
「なんでレッドがワルドを殺したんだ?」
「それは……アイツがレコンキスタの一員だったからよ」
なんだって?!
確かにムカつく奴だったけど、裏切り者だったなんて……。
「兄様は私たちを影からサポートする任務についていた。
だから今朝私を連れ去ろうとしたアイツを見かけて、戦闘になったの」
「誘拐されそうになったのか?!」
俺が寝ている間にそんなことが……。
「でも何でルイズを誘拐しようとなんて……」
「それは知らないけど、アイツの目的は三つ有ったって兄様は言ってたわ。
一つはウェールズ王子の暗殺、一つは手紙の回収、そして最後が私の誘拐。
ウェールズ王子は……アイツに殺された。」
「ウェールズさんが?!」
幾ら戦場で散るつもりだったとしても、暗殺されるなんて……クソッ!!
「ウェールズ王子ってどんな人だったんだい?」
「あぁ、ギーシュ達は会ってないんだもんな……カッコいい人だったよ」
俺はギーシュ達にウェールズさんのことを語っていく。
アンリエッタ姫への気持ちを抑え、国民を一人でも守ろうという強い意志を持っていた王子のことを……。
〜side end〜
俺がラ・ロシェールに着いた時、まだシルフィは到着していなかった。
今回も寒かったけど、滑降に近い形だったから行きよりは短い時間で済んだ。
「お疲れ様、レイア」
「ギュイ」
俺はレイアを撫でながら、ここまで飛んでくれたことを褒めた。
レイアを撫でていた俺だったが、ふと疑問に思っていたことを聞いてみることにする。
「そう言えばレイアってオスなのか?
それともメスなのか?」
「ギュイ……」
「あぁ、こういう聞き方だったら答えられないよな。
じゃあ……オスだったら首を縦に、メスだったら横に振ってくれ」
レイアは首を横に振った。
……良かった!!
メスならレイアって名前で大丈夫だな!
「じゃあ夏休みになったらオスの竜を紹介してあげるよ」
「ギュイギュイ〜!!」
「ウオッ?! 痛い痛い!」
竜を紹介するって言った瞬間に頭を俺の腹の辺りにグリグリし始めた。
竜のじゃれ付きは普通に痛い……普通の時なら加減してくれるんだけど、テンションが上がったりすると若干加減が出来なくなるんだよなぁ。
まぁツボツボ装備しているからそこまで痛くないんだけど、衝撃は変わらないんだよ。
故に俺は今……竜に押し倒されております。
「あぁ、もう落ちつけ!」
「ギュイ?」
「今直ぐ紹介出来るわけじゃないんだから、喜びはその時に取っておけ!」
「ギュ〜イ」
「やっと離れてくれたか……」
ここが街中じゃなくて良かったなぁ……街中だったら俺が竜に襲われてるって勘違いされそうな状態だったもんな。
それにしてもまだシルフィの影も見えないな。
どうやって時間を潰そうかなぁ。
「像でも作るかな……」
俺は地面に座って杖の先を地面に付ける。
そして目を瞑って、出来る限り純度の高い水晶を錬金で地表に持ってくる。
「流石に即席だとこんなもんか」
「ギュイ……」
目を開けた俺の前には、拳一個分くらいの結晶があった。
レイアは水晶を見たことがないのか、目を輝かせて見続けている。
「さて何を作ろうかなぁ」
レイアやシルフィを作りたいところだけど、このサイズだとちょっとな……。
この大きさなら小動物だな。
前に見たエコーをモデルに作ろうかな!
それから少し地面に座ったまま、錬金を使って水晶の形を自分の作りたい形へと変えていく。
十分ほど掛けて形を整えて行くと、やっと納得のいくものが出来た。
「ふぅ、完成かな」
「ギュイ〜」
「お、丁度シルフィ達も見えてきたな」
取りあえず作った水晶像をポケットに入れて皆を待つ。
で見えてきたのは良いんだけど……なんか皆の表情が暗い。
何かあったのか?
シルフィの背中から下りた皆に近づいて、取りあえず話を聞いてみることにした。
「なんか皆暗いんだけど、どうしたんだい?」
「……ワルドのことを話したの」
あぁ、そういうことか……じゃあしょうがないか。
ワルドのことを話したってことは、ウェールズ王子のことも話したんだろう。
ならルイズとサイトのテンションが異常に低いのは分かる。
「そっか……それで皆がこんなに暗いのか。
でもこれからルイズ嬢達は王宮に報告しに行くんだろう?」
「うん……って兄様は行かないの?」
「あぁ、僕は学院長からの依頼だったから学院にそのまま向かうよ。
それに僕はあくまで影からのサポートだから……ルイズ嬢も僕のことは話さないでくれるかな?」
「そうなんだ……」
「ルイズ嬢……きっとアンリエッタ姫はこの報告を聞いて悲しみにくれると思う。
それを慰めることが出来るのは、友達の君だけだと僕は思うよ?」
「兄様……」
「後僕は王宮には行けないから、この指輪を姫様に渡してくれるかい?」
俺はそう言って風のルビーをルイズに渡した。
もしルイズ嬢の慰めでウェールズ王子のことを思い出に出来たなら、原作で来たウェールズの偽物に騙されることもないだろう。
原作で起こったあのイベントは、正直国のトップがやることではないと思う。
あまりに無責任すぎる行動だったから……この世界の姫が、原作での姫よりも王族としての自覚があることを俺は心から望む。
加筆