第129話 報告
ルイズ達と別れて学院に戻った俺は学院長室に報告に来ていた。
飛竜に乗って学院に戻ってきたために、多少注目されたが貴族の子息達にとってはそれほど驚くことでもなかったので、あんまり問題はないだろう。
「レッド・ド・ドリュウズ、ただいま戻りました」
「御苦労じゃったな。
それでは報告を頼もうかの?」
「分かりました」
俺は学院長にアルビオンで起こったことを話始めた。
フーケが脱獄していたこと、グリフォン隊の隊長ワルドのこと、ウェールズ王子が暗殺されたことなどを話したのだが、話を聞けば聞くほど学院長の顔が険しくなっていった。
「以上が今回の顛末になります」
「大変だったようじゃな……それにしてもフーケの脱獄を許すとは、看守は何をしておったんじゃ?
いや……レコンキスタにフーケを解放させることが出来る立場の者がいるということなのかの?」
「その可能性は高いですね。
実際グリフォン隊の隊長がレコンキスタの一員なくらいですから」
「全く嘆かわしい限りじゃ……それもこれもマリアンヌ様が喪に服し、アンリエッタ姫が国の頂点になってから国の上層部が役に立たなくなってきておる」
「ちょ! 誰かに聞かれたらどうするんですか?!
「大丈夫じゃ、サイレントを掛けておるからの」
「なら大丈夫かもしれませんが……」
「心配性じゃのぅ、なんにせよレコンキスタはこの国の中に相当数紛れ込んでおるじゃろう。
早くアンリエッタ姫にも王族の自覚をもってほしいものじゃ」
俺と学院長は少しの間この国の未来について話していたが、学院長はふと思い出したように飛竜について触れてきた。
「そう言えばお主飛竜買ったじゃろ?
ラ・ロシェールの店から請求書が届いておるんじゃが……」
「えぇ、学院長も任務に行く前に仰ってくれたじゃないですか。
飛竜で行く方がいいって……駄目でしたか?」
「いや、別にいいんじゃが少し高かったんでのぅ。
おぉ、そうじゃった! 報酬の話もなければの!
色々あったようじゃから、2000エキューと言ったところかの?」
そんなにくれるのか?!
まぁ嬉しいけど、そんなにもらえるなら……。
「学院長」
「ん? 流石にこれ以上は出せんぞ?」
「いえ、違います」
「じゃあ、どうしたんじゃ?」
「飛竜に掛かった費用を依頼料から引いておいてください」
「ホ? 何故じゃ?
あれは儂が払うことになっとったじゃろ」
「僕としても少し高い買い物だと思うので、少し罪悪感が……」
「お主はまだ20前なのじゃから、そんなこと気にせんで良いいんじゃぞ?」
「これは僕が自己満足するためですから……」
「損な性格しておるのぉ。
分かった、遠慮なく引かせてもらう。
じゃがただ引かせてもらうと、今度は儂の気が済まん。
故に宝物庫の品を一品だけお主に譲ろう」
「それでは僕が貰いすぎになってしまいます!」
「良いんじゃよ。
宝物庫で腐っているよりも、誰かに使ってもらった方良いじゃろう?」
正直嬉しいけど、いいのか?
普通に2000エキューより高いものとかあると思うんだけど……。
「まぁ流石に何品か駄目なものもあるんじゃが、それ以外じゃったら何でも良いぞ?」
「……分かりました。
ありがたく受け取らせていただきます」
「選びに行く際にはコルベール君を連れて行くと良いじゃろう。
彼ならどれが駄目なものか分かるからの」
「ありがとうございます」
「では話はこのくらいかのぅ」
「それじゃあ僕は部屋に帰って着替えたいと思います」
「帰ってきてそのままじゃからの……良く見なければわからんが服に穴も空いておるようじゃ」
そう言えばそうだったな……ワルドに服斬られたんだった。
斬られたって言うか刺されたんだけどな。
「そうですね……後で直しておきます」
「うむ、今日はゆっくり体を休めると良いじゃろう」
「そうさせてもらいます」
俺はそう言って学院長室を後にした。
部屋に帰ってきた俺は布を服に当てて、錬金を用いて直し、クローゼットに仕舞った。
そしていつもの部屋着に着替えて、ベットに寝転がった。
「ふぅ……やっと終わったか」
学院長への報告も終わり、これで俺の任務は完全に終了した。
原作の流れとは結構変わってしまったけど、これからの流れはどうなるんだろうか?
確か次に起こる大きなイベントは、タルブでの戦いだったはず……何か変わるだろうか?
「まぁ、考えても分からないな……。
取りあえず明日になったら、レイアをドリュウズ領の誰かに迎えに来てもらおう」
流石にずっとここで世話するわけにもいかないしな……。
後で手紙送っておこう。
「少し昼寝でもしようかな……」
俺は旅の疲れでも溜まっていたのか、直ぐに眠りについてしまった。
その頃アイガは……
「ジ(初めまして)」
「ギュイ(初めまして)」
なんかレイアと話していた。
どうやらレイアがレッドの匂いを感じて、アイガのいる所に来たらしい。
「ギュイギュイ……ギュ?(貴方から主人の匂いがするんだけど……なんで?)」
「ジジ(それは僕がレッドの使い魔だからかな)」
「グルルル(そうだったかぁ)」
「ジジ?(そう言う君は?)」
「ギュイ(私も似たような感じかな)」
「ジジジ(それじゃあこれからよろしくね)」
「ギュイ!(よろしく!)」
レッドのいないところで二匹は友情を深めていた。
因みにレイアは明日ドリュウズ領に行くことを知らない……。
修正