第130話 情報の大切さ
翌朝ドリュウズ家から使いの馬車が来て、レイアをドリュウズ領へと連れて行った。
なんかレイアはジッと俺を見ながら馬車に乗っていったんだけど。
なんだろう……ドナドナが脳内で流れたぞ?
さらに翌日ルイズ達が帰ってきて、学院は少し騒がしくなった。
突然四人の学生が揃って休んだこと、そして帰ってくる頃に広がっているアルビオン王国崩壊の噂……何かしら関係しているんじゃないかという風に考える生徒は少なくなかったのだ。
しかし誰が聞いてもハッキリとした言質は取れずにいた。
只一人を除いて……。
「で? 言い訳はあるかな?」
「……いえ、ありません」
「ギーシュ、君はこの件がどれだけデリケートなものか分かっているだろう?」
「はい」
俺がいつもなら朝練をしているギーシュに説教をしている理由は、ギーシュがモンモランシに事件の真相を話したからだ。
噂が気になるのはモンモランシも一緒だったようで、ギーシュに聞いてみたんだそうだ。
すると、最初は話せないと断っていたようだが、手を握られて頼まれると頭がボーっとなってしまい、口が勝手に……というのが話した経緯らしい。
コイツ、モンモランシに隠し事できないな……ということは機密性が高い情報を教えることは出来ないとうことだ。
はぁ……いつか部隊を持つ人間がこれでいいんだろうか?
「もし次不用意に重要な情報を人に漏らした場合、僕はギーシュ君との関わりを断たせてもらう」
「そ、そんな……」
「僕は情報が戦闘において重要なファクターだと教えているだろう?
もしギーシュ君に僕の切り札等の情報を他者にバラされた場合、僕は殺されてしまうかもしれない。
正直信頼できない味方ほど厄介な者はないんだ……」
「………」
「君もグラモン元帥の息子なら、いつか部隊を率いて戦場に立つかもしれない。
そうなったときに部隊を危険に晒したくないなら、公私混同は避けて、守るべき情報は守らないといけない」
「……はい」
「それにモンモランシ嬢に隠し事は出来ないと思っているのかもしれないが、知っているからこそ厄介事に巻き込まれることもある」
「?!」
「そうなった場合君は自分を許すことが出来るかい?」
「……多分できません」
「なら、ちゃんと考えて行動しないと行けない」
「分かりました。
今後はもっと情報の重要さを考えます」
「そうだね、慎重になればきっと大丈夫だと思うよ」
俺はそのままギーシュを部屋に帰した。
今日はギーシュの訓練は無しだ。
「……タバサだけになっちゃったけど、今日の訓練は止めておこうか?」
「やる」
「そう言うような気がしてたけど……まぁ、こういうのは継続が大事だからな」
俺とタバサは何時も通り、マインゴーシュの練習と模擬戦をした。
何時もなら模擬戦はアイガともやるんだけど、アイガの機嫌が悪いんだよね。
どうやらレイアと結構仲良くなっていたみたいで、いきなりドリュウズ領に送ったのが気に入らないみたいで……。
ここ数日毎晩アイガの機嫌取りをしてるんだよ。
「隙あり」
「ん? うぉ?!」
今夜はどんなことして機嫌を取ろうかなって考えていると、俺の首目掛けて剣を振りおろしているタバサが目に入った。
幾ら刃を潰しているとはいえ、普通当たったら痛いじゃ済まないんだぞ?!
俺は急いでバックステップして斬撃を避ける。
「危ないだろうが!!」
「気を抜く方が悪い」
まぁ、それもそうだな。
でもなんか不機嫌じゃないか?
タバサは不機嫌を身体で表すように、ドンドン追撃を加えてくる。
タバサの斬撃は重みこそないが、速さは有る。
いつか速さを売りにしたネタ技でも教えてみようかな……。
流石にワルド程ではないため、今は余裕を持って避けられるが、成長したらどうなるか分からないな。
「少し剣速が上がっているな」
「ありがとう……でも当たらない」
「そんな簡単に抜かれたら自信なくなるって……」
俺は避けきれない斬撃だけを剣で弾き、タバサの攻撃を凌いでいく。
しかしこのままでは只タバサが疲れて終わりになってしまう。
それだとあまり訓練になっていない気がする。
マインゴーシュは攻撃を受け流す剣術だから、俺が攻めないと練習にならないだろう。
故に俺は攻勢にでる。
タバサの斬撃を受け流さずに受け止めて、強く弾いて距離を取る。
「このままじゃマインゴーシュの訓練にならないから、次は俺が攻める。
ちゃんと受け流せよ?」
「……(コクリ)」
「じゃあ……行くぞ!」
俺はタバサの剣速より少し早い位の斬撃でタバサに斬りかかる。
突きは刃を潰していても危ないために使わないが、人体の急所などにも剣を振るう。
首や、腕は勿論のこと、足などにも斬られると不味い血管は存在する。
故に自身の何処を狙われても対処できるようにならなければ、マインゴーシュは完成しない。
タバサは俺の斬撃を何度か受け流したが、二の腕を狙った斬撃を流しきれずに俺の剣はタバサの首元に添えられた。
これでこの模擬戦は終了だ。
「チェック」
「……参りました」
「ふぅ、じゃあ今日はここまでかな……。
そろそろタバサも授業の準備しないと遅刻しちゃうからな」
「分かった」
そうしてアルビオンから帰ってきて初めての訓練は終了した。
さぁてと、俺も授業の準備しないとな!