第131話 サイトの決意
アルビオンから帰って来てから数日経った。
俺はその日の夜、いつも通り授業資料を整理していた。
そして、ちょうど一段落しようとするとノックが聞こえてきた。
「あいてるよ〜」
「じゃあ、お邪魔します」
「あぁ、誰かと思えばサイト君じゃないか」
夜の訪問客と言えば、ルイズ嬢かタバサ、偶にシルフィが来るくらいだから三人の内の誰かだと思ったんだけど……珍しい客が来たな。
それにどうやら遊びに来たって感じじゃなさそうだ。
「遊びに来た……って感じじゃないね」
「あぁ、今日はレッドに頼みごとがあって……レッドって剣使えるだろ?」
「嗜み程度だけどね?」
何でいきなりそんなことを聞くんだ?
まぁ何となく見当はつくんだけどな……。
「アレは嗜みってレベルじゃないだろ……」
「アレ?」
「昨日タバサとレッドが、剣で戦っているのを見たんだ」
「覗き見とは……少し趣味が悪いね」
俺鈍ったのかな……いや、敵意とか感じなかったから気付けなかったのかな?
どっちにしろ本来なら、見られてもそんなに困るものじゃない。
「それに関しては謝る……でもあれを見て決めたんだ!
レッド! 俺を鍛えてくれ!」
こうやって厄介なことにならなければの話なんだけど……。
取りあえず俺は二人の訓練でも結構手いっぱいなんだよなぁ。
「それはちょっと……無理かな?」
「何でなんだ?!」
「二人教えるのだって結構大変なんだ」
「そこを曲げてなんとか!」
「なんでそこまで鍛えてほしいんだい?」
一番気になる部分はそこなんだよ。
あり得る理由としては、ワルドに負けた悔しさから?
それとも、ルイズの危機的状況に気付けなかった後悔か?
「俺はワルドと決闘して……負けた」
「うん、それはルイズ嬢に聞いた」
「あの時は負けて、悔しいって思うだけで済んだんだ……でも、もしあれが殺し合いだったら俺は今ここに居ないんだ!
俺は死にたくない、元の世界に帰りたい……ついでに言うと彼女も欲しい!」
最後の一言余計だなぁ。
まぁ、あってもなくても俺の答えは一つなんだけどな。
俺もサイトを鍛えるのは賛成なんだけど、実際二人の訓練で時間はギリギリなんだよね。
サイトが加わると二人の訓練密度が下がる……それは避けたいからな。
「だから俺は、元の世界に帰るまで死ねない!
だから頼む、レッド……俺を鍛えてくれ!」
「二人の訓練で手いっぱいだから、やっぱり無理かな?」
「そんな……頼むよ! この通りだ!」
土下座されても……いや、待てよ?
個人レッスンの時間は取れなくても、あの二人との模擬戦って形にすれば鍛えられるか?
それなら大丈夫かもしれないな。
「頭を上げてくれないか」
「なら!」
「僕自身が個人的に鍛えることは、時間的に出来そうない」
「……」
「でも二人との模擬戦と言う形で訓練に参加するのはいいよ?」
「本当か!?」
サイトは勢いよく立ちあがって、俺の手を掴んだ。
テンション高いなぁ……まぁ命に関わるかもしれないからしょうがないか。
「ただし!」
「なんだ? 流石にお金はないぞ?」
「いやそんなことじゃなくてね、あの二人に許可を取らなければ参加は出来ないよ?
あくまで訓練のメインはあの二人だから」
「二人って言うと……ギーシュとタバサか」
ギーシュはあんまり気にしないだろうな……タバサはどうだろう。
訓練の時間が短くならなければ大丈夫かな?
「明日もあの場所で訓練するので、その時二人に聞いてみると良い」
「分かった!」
「そうと決まったら、明日も早いですから部屋に戻った方がいいよ?」
「あぁ、遅くまでごめんな!
それじゃあお休み!」
「お休みなさい」
そう言ってサイトは、俺の部屋から出て行った。
あぁそういえば、ガンダールヴのルーンがどこまで身体強化出来るか試させた方がいいかもな。
本来サイトが戦うはずだったワルドはもう居ないし、いきなりタルブで空中戦だとキツイかもしれない。
それにデルフの魔法吸収能力も開花してない。
あれがないとガンダールヴは厳しいだろう。
「タバサと魔法ありで戦えば開花するかな?」
「お姉さまがどうかしたのね?」
「うぉ?! なんでシルフィがこんなところに?!」
「そんなの一緒に寝るためなのね、きゅいきゅい!」
こんな風にアルビオンから帰って来てから、ちょくちょくシルフィが俺と一緒に寝ようとしてくる。
本人曰く、俺の匂いが落ち着くらしい……俺マイナスイオン出してる?
「だからいつも言っているだろ?
男と女は同じベットで寝ちゃ駄目なんだ!」
「何でなのね!?」
「間違いがあったら困るからだよ!」
「じゃあ間違いってなんなのね?」
いつもこうなるんだよ……どう言えばいいんだ?
露骨に言って引かれるのも正直嫌だ。
そうして迷っているとこれ又いつも通り……ドアが開いた。
「また……」
「あ! お姉さまからも言ってよ!」
「いいから、帰る」
「痛ッ、痛いのね!
耳を引っ張らないで〜、るーるー」
「タバサ、シルフィお休み」
「お休み」
「痛たたたたた、私はレッドと寝るのね〜〜〜〜!!!」
「黙る」
「ギャン!?……キュ〜〜〜」
……流石に大声で言う内容じゃないからなぁ。
もしタバサがサイレント掛けてなかったらヤバかったよ。
それにしてもタバサの顔が赤かったが、そんなに怒ってたのか。
シルフィ……無事に明日を迎えられるんだろうか?
いつか総合評価で一万超えることを夢見ながら、これからも頑張る!!