第136話 四大系統を讃える
いきなり俺が考えるのもどうかと思い、一先ず俺はルイズ嬢に案を出して貰うことにした。
「火は熱いから気をつけること」
それは感謝っていうか、使用上の注意だろ……。
まさかこのノリで他の系統を?
「水は……お風呂とかに使います?」
だから感謝どこ行った?!
これは止めた方が良いな。
「土は」
「いや、もうここら辺で大丈夫だよ?
一緒にゆっくり考えていこうか!」
「……うん」
ルイズ自身も流石に式でこれを読むのはおかしいと思ったらしく、顔を真っ赤に染めて俯く。
とりあえずさっきの詩のどこが悪かったか伝えることにした。
「まずは四大系統に対する感謝を表す詩と言うことを、念頭に置かなければいけない」
「でも四大系統に対する感謝って言われても……」
「(まぁ複雑な感情もあるだろうな)四大系統というより日常の火、水、土、風に対する感謝で良いんだ。
ある意味先ほどの詩も言い方を変えてしまえば……火は我々に破壊と再生を齎すと直せば、それっぽく聞こえるだろう?」
「確かに……」
「こういった感じに自分がそれぞれの系統に思うことを簡単に考えて、その文面を式の雰囲気に合うような文面に変えると良い詩が出来るはずだよ」
「そうかな?」
「きっとね」
俺とルイズ嬢は、それからしばらく詩を考え続けたが、考えては棄却、考えては棄却を繰り返し、結局詩を完成まで持って行くことは出来なかった。
どんどん良くなってきているんだけど、それに伴って理想も高くなってきている。
因みに最後に却下された詩は、
火とは人類の叡智、破壊と再生をもたらす力の象徴
水とは生物への恵み、地に降り注ぐ恵みの雨は人々に活力を与える
土とは全ての母、大地の恵みが途絶えたとき命は滅びゆく
風とは生命の運び手、種子は風に乗り新たな地で芽吹いていく
我ら人類、他の種族に代りここに感謝の意を表する
とこんな感じの詩だった。
正直俺はもうこれでいいんじゃね?とも思ったが、ルイズ嬢がしっくりこなかったようなので没。
ふと外を見てみると日が落ちかけていた。
「もうこんな時間か……ルイズ嬢、そろそろ夕食の時間だから部屋に戻った方が良いよ?」
「もう? そうね、今日はここまでね」
「今日は?」
今日だけじゃないのか?
流石に授業の準備とかあるから、結構厳しいんだけど……。
「駄目?」
「う〜ん……今日みたいに長い時間は取れないけど、それで良いかい?」
「うん!」
まぁそれなら大丈夫かな?
でももうコツは掴んだだろうから、俺が居る意味はないと思うんだけど……。
客観的意見を求めてるのかな?
「それじゃ、一旦部屋に戻って夕食を頂いておいで」
「うん兄様! 今日はありがとう!」
「いえいえ、どういたしまして」
そういってルイズ嬢は俺の部屋を出て行った。
静かになった俺の部屋で、俺は小さくため息を吐く。
「流石に慣れない事をすると疲れるな……」
俺はそう言いながら米神を揉みほぐす。
前世からの癖で、疲れたときにやっちゃうんだよなぁ。
あまり意味はないんだろうけど、なんか疲れが取れる気がする。
「さてと……そろそろアイガのところに行こうかな?」
やっと機嫌も戻ってきたことだし、何とかしないと夏休みに帰った時大変そうだからな!
ここで気は抜けないぞ!!
俺は気合いを入れ、アイガの下に向かおうと中庭の辺りを通ろうとすると、小さな話し声が聞こえ始めた。
話し声はサイトと……シエスタか?
このイベントは、ルイズがサイトを追い出すイベントか?
でも今ルイズは部屋だろう。
なら追い出されることはないかな?
盗み聞きするのも悪いから、俺は特に気にせずアイガの下へ向かった。
「今日はルイズ嬢と四大系統を讃える詩を作ったんだ」
「ジ〜」
「ポケモンの世界だと四大系統って言われてもあんまりピンと来ないだろ?
なんてったって十七個も属性あるし……」
「ジジ」
しかもポケモンの世界において、風っていう属性は存在しない。
土は地面、岩、鋼辺りだろう。
火は普通にある。
水も水と氷がある。
でも風は……飛行が一番近いんだろうか?
「もうそろそろ夏休みも近づいてきてるし、実家に戻ったらまた色々と試してみようかな?」
「ジ?」
「その時はアイガも協力してくれよ?」
「ジ〜〜」
「いや、なぜ渋る?!
……分かったよ、岩属性のポケモン呼んであげるから手伝ってくれ」
「ジ!!」
アイガは同じ属性のポケモンと会うのが嬉しいらしく、テンションが上がった。
前にイシツブテを呼んだときは、イシツブテでお手玉してた気がするんだけど……嬉しいのか?
まぁあのときのイシツブテは楽しそうだったから良いんだけどね?