第138話 宝探し
いつもの訓練も終わり、三人に解散を伝えようとしたのだが、ギーシュが俺に話しかけてきた。
「レッドさん、出来れば数日旅行に行きませんか?」
「いきなりだね……流石に授業もあるから厳しいと思うよ?」
「やっぱりそうですよね……」
ギーシュは落胆したように、若干項垂れた。
でも何でいきなり旅行なんて?
「旅行ってどこに行く気だったんだい?」
「宝探し」
「キュルケに誘われてね……それに僕も男だし、宝探しには少し興味があるんだ。
もし見つかればモンモランシーへのプレゼントにもなるから気合いは十分さ!」
「タバサ嬢も行くのかな?」
「………行くことになった」
何だ?
行きたくなかったのか?
そんな疑問を抱いていると、それの答えをサイトが述べた。
「タバサは最初断ってたんだけど、キュルケがどうしても来てくれって頼み込んだんだよ」
「何で断ってたんだい?」
「そんなのレッドと「少し黙る」イエッサー!」
「僕?」
「何でもないんだ、きっとそういうことにしておかないと俺がヤバい」
「よく分からないけど、分かったよ」
何でタバサはサイトに杖を向けたんだ?
言えないわけでもあるんだろうか……なんか少し仲間はずれ間があって微妙な気分だ。
「ならその宝探しに行く人はキュルケ、タバサ嬢、ギーシュ、サイト、ルイズ嬢の五人かな?」
「いや……あとシエスタが一緒に行く」
「シエスタ?
何で彼女が一緒に?」
「シエスタがどうしても来たいって言うし、それに料理を作れる人がいなかったからある意味丁度良かったんだよ……」
いや、それ後付けの理由だろ?
だってサイト、あからさまに俺の方見てねぇし。
でもデートにしては少し危ないんじゃないか?
「宝探しと言うことは、危険もあると思うんだけど……シエスタは大丈夫なのかい?」
「確かにシエスタはメイドだし、身を守る方法とか無いと思ってたんだけど、どうやら昔狩りとかしたことがあるみたいで、結構動けるんだよ」
「そうだったんですか」
タルブのイメージはワインしかないから、あんま分かんないんだよなぁ。
それに猪とかなら別に大丈夫だろうけど、オークとか出てきたら危ないよな。
まぁメイジ四人いるし、サイトもいるから大丈夫だろうとは思うんだけどね?
一応助言しておくか。
「宝探しに行くことは分かりました。
ですが念のために一つ言っておくことがあります」
「なんかあるのか?」「どうかしましたか?」「?」
「君たちだけなら、恐らく問題は無いでしょう。
メイジ四人、剣士一人なら殆ど危険は無いでしょう。
ですが守る対象が居ると話は変わります。
思考が守る対象にも向けられるために、思わぬ攻撃を受けるかもしれません」
良くある話の様に恋人守って自分が死ぬような展開が起こるかもしれない。
シエスタはまだ恋人じゃ無いようだが、サイトならやりかねない。
何てったって七万に突撃する度胸を持ったやつだからな!
恐らくガンダールヴの反射速度なら不意打ちされても対応しきれるような気もするが、戦闘において絶対は無い。
「故に例えたった一体の敵だったとしても、決して油断しないように。
敵が一体なら、周囲に他の敵が潜んでいるかもしれないという考えを常に持っていなさい」
「分かった」「分かりました」「(コクリ)」
何で俺がここまで心配するかと言えば、正直このイベントでどんなことが起こるか覚えていないんだよ……。
唯一覚えているのは、タルブで零戦を手に入れる位だ。
「ところで宝探しには、いつ出発するんだい?」
「一応用意があるから、明日の朝に行くらしい」
「……ちゃんと学院長に許可は取っているんだろうね?」
これがないと唯のサボりになるからなぁ。
まぁ貴族だから様々な理由で授業を休む事がある。
だから届けさえ出してしまえば、特に問題はない。
しかしこれを出さないと、下手をすれば親に連絡が行く。
タバサやキュルケはあまり問題ないかもしれないけど、ルイズ嬢やギーシュは不味い。
カリーヌさんは特にヤバい。
あの人が怒ると若干地形が変わる可能性があるんだよ……人の形をした台風のようなものだからね。
「もちろん取ってあります」
「それなら問題ないですね。
ですがいくら許可を取っても、授業の遅れをどうにか出来るのは自分だけなので、出来るだけ早く帰ってくるように……分かったね?」
「「「ハイ」」」
「では僕は出来る限り怪我をしないで帰ってくるように祈ってます」
正直着いていってあげたいと思わなくもないが、他の生徒たちの授業を無視するわけにはいかない。
取りあえずイレギュラーが起こらないことを祈るしかないな。
解散してそれぞれの部屋へと戻っていく彼らの背中を見ながら、俺は旅が無事で終わるよう祈った。