第138.5話 生き物を殺すと言う事
〜サイト side〜
宝探しって聞いて、面白そうだから来たんだけど……。
そうだよな、ここファンタジーの世界だもんな!
モンスターも居るよな!
「サイト! ボォっとしてないでそっちのをどうにかしてくれ!」
「分かってる!!」
俺たちを取り囲んでいるのはオークの群れ。
オークっていうのは初めて見たけど、本当に豚みたいな顔をしてるんだな。
後すげぇ臭い……ルイズたちは気にならないんだろうか?
「面倒くさいわねぇ……ファイアー・ボール!」
「ジャベリン」
「こんなのアイガとの模擬戦に比べれば……ブレッド!」
「まぁ頭を狙えば問題ないわね!」
キュルケは火の魔法で焼き、タバサは氷の槍で貫く。
ギーシュは岩の弾丸で貫き、ルイズは頭を爆破していく。
俺は……一体のオークと戦闘している。
みんなが魔法を使ってドンドンオークを倒していく中で、俺はたった一匹のオークを相手し続けている。
「クソ!」
「相棒、落ち着けよ」
「だって俺だけが一匹も倒してないんだぜ?!」
「何にでも相性ってのはあるもんだ」
俺だってこいつをとっとと倒して他のオークを倒したい。
俺の後ろで震えているシエスタのためにも早くこいつらを倒さなければ!
でもどうしても人型をしている奴に斬りかかる踏ん切りがつかない。
このままじゃ駄目だって分かってるのに!!
そんな風にイライラしていた所為で、俺はもう一匹が近づいてきているのに気づけなかった。
気づいたときにはオークはシエスタに棍棒を振りかぶっていた。
その光景を見て、背中に氷柱が差し込まれた様な気がした
あのままじゃシエスタは……そう考えると、俺の体は勝手に動き出した。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「サイトさん?!」「相棒?!」
俺は目の前に居たオークを棍棒ごと叩き斬り、シエスタを攻撃しようとしたオークの首を切り落とした。
その二匹を斬り殺しても俺は止まらない。
目に見えるオークに斬りかかっていく。
そのままどれだけの時間が経っただろうか……数時間にも感じたし、数秒にも思えた。
気付けば周囲にオークは居なかった。
「サイト、やるじゃないか!」
「流石ダーリン!」
「意外」
「お疲れ様」
魔法使い組も周囲に敵がいなくなったために、こっちに来たようだ。
しかし俺はそれどころじゃなかった。
俺は自分の手に残る、敵を殺したときの感覚。
オークたちの断末魔。
それが頭の中をグルグル回り続ける。
そんな俺の異常に気付いたのか、みんなが心配している様な目を向けている。
「あぁ……ありがとう」
「あんた……顔色悪いわよ?」
「ダーリン具合悪いの?」
ルイズとキュルケが、しゃがみ込んだ俺の背中を擦ってくれている。
正直すごく助かる。
俺は今にも吐くところだったから……。
「あなた……実戦は初めてだったの?」
タバサの問いかけに、俺は俯きながら首を縦に振った。
恐らく彼女が聞いている実戦とは殺し合いのことだろう。
「初めてだったのか……なら具合悪くもなるかもしれないな」
「それならそうと言ってくれれば良かったのにぃ」
俺としては、自分自身がこんなに精神的ダメージを受けるとは思ってなかったんだよ……。
いや、分かったつもりになってたんだ。
命を奪うって事を甘く見ていた。
気がつけば俺の口は心情を漏らし出していた。
「斬ったときの感触が消えないんだ……」
「相棒……」
「あいつらの苦しむ顔が消えないんだよ!!」
「サイトさん!!」
突然俺の視界が真っ暗になった。
シエスタが俺の頭を抱きかかえてくれたみたいだ。
あぁ……暖かい。
「サイトさんは悪くありません!
サイトさんは私を守ってくれたんですから!!」
「でも俺は!」
「もしあそこで助けて頂けなかったら、私は今頃死んでいたんです!!」
シエスタの叫びを聞き、俺はさっきの事を忘れることは出来なくても、振り切ることが出来た。
いや……振り切った訳じゃない。
唯少しだけ気持ちが楽になったんだ。
もしあそこで俺が斬るのを躊躇していたら、シエスタは死んでいたという事実があるから……それをオーク達殺す理由として、自分を納得させる事が出来た。
正直自分勝手な理由だろうけど、こう考えておかないと俺は潰れてしまいそうだ。
これからもこういった戦闘はあるだろう……早く慣れないとな。