第139話 青銅の薔薇の憂鬱
サイト達が宝探しに出かけた翌日。
俺はいつも通り授業を行っていた。
タバサ達の席が空席になっている以外は何も変わりなく……いや、一人様子がおかしい子がいるな。
他の生徒が俺の講義を聴いてメモを取ったり、俺の言葉に頷いたりする中、その子は窓の外をボゥっと見ている。
一応何度か注意はしたけど、やっぱり授業に身が入らなかった。
授業が終わり、教室を出ようとするとその子が俺に話しかけてきた。
「レッド先生、少しお話があります!」
「どうかしましたか、モンモランシ嬢。
授業に集中できていなかったようですが……」
「それに関してはごめんなさい」
俺に話しかけてきたのは、授業中ソワソワとしっぱなしだったモンモランシーだった。
彼女は授業に集中していていなかったことに対し、しっかり謝罪してくれた。
まぁ普段はしっかり聞いてくれる真面目な子だからなぁ。
今日集中できなかったのは、恐らく今ここに居ない子達の事が気になったんだろう。
……それにしてもギーシュは話していかなかったのか?
「聞きたいことがありますので、後でお部屋にお邪魔しても大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ?
では後ほど僕の部屋で話を聞きましょう」
俺はそういって教室を後にした。
廊下を歩いている間、俺は今頃サイト達がどうしているかなとか考えながら部屋へと歩みを進める。
部屋に戻った俺は軽く掃除を行ってモンモランシーが来るのを待つ。
こんなところギーシュが見たら変な勘違いしそうだな。
部屋の掃除が終わる頃、丁度コンコンというノックの音が聞こえてきた。
「開いてますよ?」
「失礼します」
今思えば彼女がこの部屋に来るのも、大分久しぶりだなぁ。
それだけギーシュとの仲が進んでいるのかな?
「さて、じゃあ早速だけど話って何なのかな?」
「えっと、ギーシュ……じゃなくて!!
今日居なかったルイズ達はどこに行ったんですか?!」
……仲が良さそうで何より。
別にギーシュがどこに行ったかで良いと思うんだけどなぁ。
顔を真っ赤にしながら訂正してるから、何も言わないけどね?
「ギーシュ達は宝探しをしに行ったみたいだよ?」
「宝探し?」
「どうやらキュルケが宝の地図を手に入れたらしくて、ギーシュ達はそれに誘われたらしい」
「そうだったんですか……」
ギーシュが誘わなかった理由は、たぶん危険があるかもしれない場所に連れていくことが不安だったのだろう。
まぁモンモランシーも何となく分かっているからか、何も言わないな。
微妙に不機嫌そうだけど……。
「恐らく数日もすれば戻ってくると思うよ?」
「そうですよね!」
「それにもしかしたらすごい宝物を見つけて、モンモランシ嬢にプレゼントしてくれるかもしれないね」
「そうだったら……嬉しいなぁ」
モンモランシ家は裕福ってわけじゃないから、あんまり宝物とかに縁がなかったからな。
女の子としては、宝石とかで着飾ってみたいとか考えたことがない訳じゃ無いはずだ。
もしギーシュが何か見つけて、彼女にプレゼントしたら好感度は鰻上りだな。
「話は終わりかな?」
「そうですね……あ! 今日の授業で聞きたいことがあったんです!」
そこからはしばらく講義の解説や、質問への応答などをしてからモンモランシーは自分の部屋へと帰っていった。
彼女が帰るのを見送ると、俺はそのまま自分の机に向かう。
モンモランシが疑問に思った部分の講義資料に手を加え、より分かりやすくなるように書き換えるためだ。
俺がミスト先生の資料に助けられたように、俺の次にこの学院に来る教師がこの資料でより分かりやすい講義が出来るようにしてあげたい。
まぁ普通はどっかの貴族の家庭教師とかが引き継ぐんだろうから、問題ないんだろうけどね?
作業を始めて約二時間弱。
改めて見ると、もっとここをこうした方が良いんじゃないか?
俺の説明に不備はなかったかとか考えると、時間はすぐに過ぎていく。
作業が終わった頃には日は落ちてしまっていた。
「そろそろ訓練の時間かな?」
俺は朝に自分自身の訓練を出来なくなったので、夜に森の中で行っている。
主な内容は無呼吸連撃の継続時間を長くしたり、新しいネタ技の練習だったりするんだけど……。
ネタ技は基本的に漫画やゲームの技を模倣するわけで、難易度が高い技ばかりなんだよ。
魔法を使う技はそうでもないんだけど、今まで格闘技系の技は習得するのは結構大変だった。
剛体術も何回か骨折したし……。
問題は人間の限界を超えた様な技の模倣が難しい。
剛体術は何とか出来るようになったが、未だ六式は出来る気がしない。
指銃、鉄塊は装備を使えば出来なくもないけど……嵐脚、剃、月歩辺りはマジで出来る気がしない。
紙絵だってバキで言う消力みたいな感じだから、簡単じゃない。
いくら脱力しても出来ないぞ?
CP9って凄かったんだな!!
夏休みに入ったらもうちょっと訓練に力を入れようかな?
修正