第140話 竜の羽衣
今朝方宝探しに行ったメンバーが帰ってきた……ゼロ戦と共に。
パッと見たところコルベール先生のテンションがおかしい以外には、特に変わったことはないようだ。
いや、サイトの顔つきが少し変わったか?
俺は帰ってきたルイズ嬢達を労う為に校門の方へと歩を進める。
俺が校門に着くと、彼らは雑談をしていた。
「みんなお帰り」
「兄様ただいま!」
「「「「レッド(さん)ただいま!」」」」
「ただいま」
「皆怪我とかはなかったかい?」
「擦り傷位はあったけど、特になかったぜ!」
「そっか、それは良かった」
まぁ見た感じ大丈夫だとは思ったけどな。
取りあえずゼロ戦に頬ずりしている頭が眩い人はスルーして、どんなことをやったか簡潔に教えてくれそうなタバサに話を聞いてみることにした。
「宝探しはどうだった?」
「何もなかった」
「そっか……でも何もなかったのなら、この鉄の塊はどうしたのかな?」
「タルブの街で譲ってもらった」
「何かの道具かい?」
「空を飛ぶ事が出来るって彼が言ってた」
「これが空を飛ぶの?!」
流石に飛行機って言うわけにもいかないし、こういうしかないんだよな。
あぁ違和感のない演技出来てるかな?
俺がタバサとゼロ戦について話していると、コルベール先生が声を張り上げた。
「分かりました。
少し時間が掛かるかもしれませんが、やってみましょう!」
「コルベール先生、どうかしましたか?」
「レッド先生……このゼロ戦という乗り物が飛ぶのには‘がそりん’と言う燃料が必要らしいのです。
それをサイト君に錬金してくれと頼まれましてね。
いやぁ、鉄で出来たこれがどの様に空を飛ぶのか今からとても楽しみですよ!!」
うわぁ……顔が緩んでるよ。
キュルケとギーシュ、ルイズ嬢はそれを見て引いている。
科学者として、発明家としては優れているんだろうけど、もう少し周りを良く見た方がいいぞ?
「ところでタバサ嬢、他には何かあったかい?」
俺がそう聞くと、タバサは少し眉をひそめた。
なんだ?
俺はタバサの言葉を少しの間待つことにした。
すると彼女は小さな声で呟くように言った。
「彼が初めて実戦を経験した」
「……そっか、相手は?」
「オーク」
「人型か……」
「彼は戦闘後顔を青くしていた」
「初めての実戦だからね、しかし今の彼は何時も通りに見える。
何か自分を納得させるだけの理由を見つけたのかな?」
「彼がオークを斬った時は、シエスタが危険だったから咄嗟にと言った感じだった」
と言うことは、割り切ったのか?
それとも殺さなければ守れなかったという免罪符で、自分は悪くないと思っているのだろうか?
もし後者なら……どっちにしろ一回、しっかり話をしないといけないな。
「後彼はガンダールヴらしい」
「ガンダールヴ……あの始祖の使い魔の一角かぁ」
「武器を持つと使い方が頭に入ってくると言ってた」
「そういうことか、道理で彼の身体能力が身体に見合っていないわけだ」
「恐らくガンダールヴの能力は武器の使用方法と身体能力の強化」
「流石は伝説の使い魔だね」
俺は一応ガンダールヴだってことは知ってたけどね?
コルベール先生と学院長も知ってるし。
っていうかまだ知られてなかったのか……。
「レッドなら分かると思うけど、この事は……」
「分かっているよ、他の人に喋らなければいいんだね?」
俺自身知られたくないことがあるから、人のことも話さないさ。
でもルイズ嬢はアンリエッタ姫に話してしまう気がする。
友達らしいしな。
「そういえば宝探し中の訓練は?
やっぱり出来なかった?」
「何時も程じゃないけど、基礎訓練だけはやった」
「まぁ実戦も何度かあったのなら、おそらく問題ないかな」
「オークだと実戦と言うより……」
「オークを相手にしても、一つの経験にはなるよ?
オークは人型だから、弱点も人に近い。
確かにキュルケの様に何処に当たっても、結果として全身が燃える火ならあまり意味はないけれど、水は攻撃力が低いものが多いから、急所を狙わなければ仕留めることが出来ない時もある。
タバサ嬢も一撃で仕留められなかった敵がいたでしょう?」
「……何匹か」
「一撃で仕留めなければ、思わぬ反撃を受けてしまうかもしれません。
今後はそういったところに気をつけてみてください」
「分かった」
「さて、他の人達もぼちぼち部屋に帰り始めたし、タバサ嬢も疲れているでしょう?
今日はゆっくり休みなさい」
「……ありがとう」
そう一言言ってタバサは自身の部屋へ戻った。
俺もゼロ戦を撫でまわしているコルベール先生に一回ため息をついて、部屋へと戻った。