第141話 空を飛ぶために
夜、俺は何故かコルベール先生の部屋に居た。
何でこうなったかと言うと……。
〜回想〜
「レッド先生!」
そう言って誰かが俺の部屋に突然入ってきた。
頭部に光が反射して、誰か判別できない……いや、反射しているってことは?
「コルベール先生ですか?」
「何を言っているんですか?!
私以外の誰に見えるのですか?!」
「すいません」
だって顔見えないんだもの。
っていうか何の用だろう?
「ところで何か急いでいたようですが、どうかしましたか?」
「そうだ!!
レッド先生、少し手伝っていただきたいことがあるんです。
ついてきてください!」
そう言うとコルベール先生は早足で俺の部屋から出て行った。
正直いきなりのことで何が何だか分からなかったから少し茫然としていると、足音が戻ってくる。
「何をしているんですか!
急ぎましょう!!」
「正直何が何だか……」
「サイト君が持ってきた‘ぜろせん’とか言う乗り物の燃料になる‘がそりん’を錬金したいのです!
レッド先生も気になるでしょう?!
それにサイト君にも頼まれましたし」
あ〜……そういえばガソリン殆どなかったんだっけ。
にしてもそんな簡単にガソリンなんて錬金出来るもんなのか?
ガソリンを作る方法は、原油を熱し、沸点の低いガソリンを蒸発させて分離させるって言うのが正攻法なんだけど、この世界に原油あるのか?
原油があるなら出来なくもないだろうけど。
「分かりました、手伝います。
ですがガソリンが何からできているかは分かったんですか?」
「ハッキリとは分かっていませんが、原油に近いものなのではないかと思うのです」
原油あるんだ?
だとしたら出来るかもしれないな。
「取りあえず私の部屋に来てください!」
「はい」
〜回想終わり〜
こんな感じでコルベール先生の部屋に連れてこられたわけだけど……汚いし、油臭い。
床には蛇の玩具みたいなものが転がっているし、机の上は何かの設計図だらけだ。
「さぁこれです!」
「あ、はい」
机の上に乗っていた設計図などを床に落として、瓶に入ったガソリンを置いた。
ホントに少ししかないな。
「それでこのガソリンはどれくらい必要なんですか?」
「樽で3つ分は必要ですね」
「樽3つ分?!」
結構な量だな……それだけの量を錬金するとなったら、確かにコルベール先生だけだと結構キツイかもしれないな。
原油は樽に入った状態で部屋の隅っこに積み上げられている。
これは時間が掛かりそうだ。
「そう言えば原油に近いものと言うことは分かったと言ってましたけど、どうやってガソリンを作るんですか?」
「取りあえずこの‘がそりん’というものは気化する温度がかなり低いことが分かっているから、原油を 蒸発させてみようと思うんだ。
それで‘がそりん’に近いものが出来たら、錬金出来ると思う」
すげぇ!
一発でガソリンの作り方を当てたぞ?!
「ですが原油はすぐに火がついてしまいます。
なのでゆっくりと温度を上げて行きます。
幸いにも私は火のメイジですからね」
そう言うとコルベール先生は手際良く準備を始めた。
そこからはトライ&エラーの繰り返し。
温度調節が難しいらしく、直ぐに引火してしまう。
一回気化したガソリンもどきに引火して軽い爆発も起こった。
そしてついに……。
「出来た……出来たぞ!!」
「やりましたね!」
「そうか、この温度で原油を気化させれば良かったのですね」
凄く嬉しそうだな。
でもこれ3樽分作らなきゃいけないんだけどな。
「よし、これで錬金することが出来るよ!
レッド先生手伝ってください!」
「はい」
それから俺とコルベール先生は時間も忘れてガソリン作りを行った。
流石に朝まで掛かりはしなかったけど、夜中までは掛かってしまった。
「これで最後です、‘錬金’!
ふぅ、これで3樽分出来ましたね。
レッド先生、ありがとうございます」
「いえいえ、少し大変でしたが面白かったですし、あれが飛ぶ姿を見てみたかったですから」
流石にゼロ戦が飛んでるところなんて見る機会早々ないからな。
やっぱり戦闘機が飛んでいるところって何かカッコいい感じがするんだよね。
「ふぁ〜あ、流石に疲れましたね。
今日もう解散しますか。
そして明日‘ぜろせん’にガソリンを入れましょう」
「そうですね……僕も疲れましたし」
「それじゃあお休みなさい」
「お休みなさい」
俺は少しふらつきながら部屋へと戻って行った。
もう眠気がピークだよ……
「それにしてもコルベール先生は発明家として一級だな。
自力でガソリンの作り方までたどり着いて、蒸気機関とかの構想を考えだしたんだから」
現代に居たらノーベル賞とか取れる発明しそうだ。
でもこの世界だと変わり者扱い……この世界では早すぎるってことかな?
まぁ魔法が発達している分、科学の発達が遅いのはしょうがない部分があるかもしれないけどな。
「さてと……軽く訓練して寝ようかな?」
俺は頬を軽く叩いて気合を入れると、いつもの訓練場所へと向かった。
修正