第144話 狂王の使い魔
突如攻撃をし始めたシェフィールド。
俺は飛んでくる魔法具と思わしき石を回避する。
きっと当たったら何かしらのヤバい事が引き起こるのは目に見えている。
よく見ると飛んでくる石には色がついており、どうやら四種類の色がある様だ。
赤は火、青は氷、茶は石、緑は雷を表しているらしく、衝撃を受けると中の魔力でそれぞれの効果を引き起こすことが分かった。
一個一個の威力はそれほど高くないのだが、こっちとしてはあまり目立つことをするわけにはいかないし、仮面を脱がされてはいけないという縛りがある。
あまり長期戦になったり、激しい戦いをすると援軍が来てしまう。
それは困る……物量で押されるとかなりキツイものがあるのは事実だし、それで顔がばれてジョゼフに目を付けられたりしたら、もう死亡フラグなんてもんじゃない!
俺は飛んでくる魔石達を避けながら、この状況をどうにかする策をひたすら考え続ける。
「どうしたの?
このまま避けて弾切れを待っているのかしら?」
「そうなってくれれば万々歳ですねぇ」
「お生憎様、今放ったものも一定時間すればまた使用できる様になるの。
そして自動的にこの袋に戻ってくるから、弾切れなんて存在しないわ」
「それは……」
厄介な情報ありがとうございます。
さて、どうする。
何とか正体がバレず、この人から逃げる方法は無いか?!
一番良い方法はテレポートなんだけど、テレポートするためには一旦立ち止まらなきゃ駄目だ。
この人がそんな隙を見逃すわけがない。
殺すのも一つの手段だけど……殺したらきっとまた召還して、見たこともない奴がジョゼフの使い魔になる。
それだったらまだ顔が分かるこの人の方がマシだ。
気絶を狙うか、一か八かで催眠術狙ってみるか?
でも催眠術は命中率が高い訳じゃ無い。
ギャンブル性が高すぎるか……やっぱり気絶狙いだな!
俺は一旦大きく避け、シェフィールドから距離を取った。
「あら、決心がついたのかしら?」
「あんまりしたくない決心だけどな……」
「正直なのね、嫌いじゃないわ」
「そりゃ光栄なことで」
「でも私の心はあの御方の物……私の手も、脚も、顔も、体も全て全て全て!
あぁご主人様、今貴方の忠実なる僕が敵を殲滅して帰ります。
どうか褒めてください、可愛がってください、愛してください!
私は貴方の為に全てを捧げます。
だからどうか貴方の寵愛を私に!
アハハハハハハハハハハハ!!」
あぁ……ヤバイこの人。
両手に四つずつ魔石を持ちながら、両腕を大きく広げている。
まるで天を仰いでいる様だ。
彼女の目にはジョゼフしか見えていないんだろう。
俺を殺そうとするのも、ジョゼフの障害になるかも知れない存在を消したいと思っての行動だろう。
こんなに思われているジョゼフがうらやま……しくないな。
普通に怖いよ、ヤンデレ怖いよ!!
見た目綺麗なんだけどなぁ。
うおっ!
攻撃が再開した?!
「死になさい、さぁ死になさい、私のために、私たちのために!
覚悟を決めたなら早く死になさい!!」
「死ぬ覚悟を決めたんじゃねぇよ!」
さっきよりも苛烈になった攻撃を避けるが、流石に完全に回避するのが難しくなってくる。
服の端が燃え、氷り、斬れ、貫かれる。
仮面だけは何とか死守しているが、それも時間の問題だろう。
早く攻撃に移らないと不味い!
「取りあえずその袋をどうにかする!
‘サイコキネシス’!」
「さっきあいつらを落としていた魔法……でもそれは対象が見えなくても使えるのかしら?」
そう言うと彼女は茶色の魔石を四つ地面に落とした。
すると地面から三メートル位の鉄の壁が現れた。
「攻撃以外にも使えるのか?!」
「これは自分のイメージによって発動する物を変えることが出来るのよ。
だからこんな事も出来るわ!」
そういうと壁の上から石が放射線を描きながら飛んできた。
先ほどよりも速度が遅く、避けやすかったので少し動いて、回避した。
しかし石はまるで吸い寄せられる様に俺に向かってくる。
「追跡弾?!」
「貴方に当たる様にイメージすれば、こういう事も出来るわ。
さっきよりも石の回復が遅くなるのが難点だけれどね」
「クソ!」
「さぁドンドン増やすわよ!」
そう言って新たに四つの石を投げてきた。
計八つの魔石が俺目掛けて飛んでくる。
曲線で、直線で、直角で……唯俺を仕留めようと追いかけてくる。
剣で切ろうとすると、そこで魔石に込められたものが発動する。
‘サイコキネシス’では八つ同時に対処することは出来ない。
なら一旦耐えて、魔力が回復する前にケリを付ける!
「プリズンロック!」
瞬間俺の周囲に石の壁が出来る。
次々と石の壁にぶつかり、壁を削っていく。
八つの衝撃が終わったのを確認して、今度はこっちから攻撃だ!と思い魔法を解こうとすると
「貴方土メイジだったのね、てっきり風のメイジだと思っていたわ。
まぁどちらでも良いのだけどね」
そう言う声と共に、いつの間にか石の壁の上に乗っていた彼女は手に持っていた新たな八つの魔石を、先ほどの攻撃で出来た小さな穴から中へと打ち込んだ。
次の瞬間石の牢獄は内側から爆発した。
友人何人か連絡着かなくて心配だし……怪我とかしてないと良いなぁ