第145話 ギリギリの戦い
目の前にあるのは、上半分が吹き飛んだ石の棺。
その内側は完全に黒く焦げており、人が生き残れるようには見えない。
「少し多かったかしら?
これじゃ死体が確認できないじゃない……」
シェフィールドは小さく呟いた。
一応レッドの死体を捜すが、やはり見つからない。
小さな密室に爆弾をぶち込んだようなものなのだから、それも当然なのかもしれない。
周囲を見回していると、ふと赤い何かが目に映る。
確認のために近付いた彼女が手に取ったものはレッドのものと思われる焦げた小さな肉片。
「これは……ふふふ♪」
嬉しそうに笑いながらシェフィールドは肉片を放り投げる。
邪魔者の排除を終えた彼女には早く自分の主の元へ帰ることしか頭に存在しない。
「ジョゼフ様、今帰ります!」
そう力強く宣言し、狂王の従者はその場を後にした。
去り際の彼女の顔には満面の笑みが張り付いていたことだろう。
ボコッという音と共に地面に穴が開く。
そこから這い出してきたのは所々傷つき、腕から血を流すレッドだった。
「いないか……危ないところだった。
あと一歩遅かったら木端微塵だったな」
なぜレッドは生きているのだろうか?
なぜ地面の中にいるんだ?
その腕の怪我はどうしたんだ?
それらの疑問の答えは、シェフィールドに魔石を撃ち込まれる少し前に遡る。
「貴方土メイジだったのね、てっきり風メイジだと思っていたわ」
俺はシェフィールドの声が上から聞こえてきた瞬間、上を見た。
すると小さな穴が開いているのがわかって、一瞬にして青褪めた。
この逃げ場のない場所で魔石を撃ち込まれたら……死ぬ!
どうする?! この石の檻を解除するには少し時間が足りない。
何かないか?
幸い既に石の檻は唯の物としてここに存在している。
故に魔法は使える。
でもこの状況を打破できる魔法はないような気がする。
この逃げようがない石の檻の中で俺は……ん?
そうだ!!
逃げる必要はないんだ。
隠れてしまえばいい!!
そう思い至ると俺は急いで地面を錬金して、俺が膝を抱えて入れるくらいの穴を作る。
「まぁどちらでも良いのだけどね」
その声と共に小さな穴から赤い石が連続して数個投げ込まれる。
火属性の魔石かよ?!
でもこれはチャンスかもしれない……俺は意を決して、剣を突き刺して肉をエグり取った。
とてつもなく痛い!!
だが死ぬよりはマシだと自分に言い聞かせながら、エグリ取った自分の肉片を壁隅っこの方に叩き付ける。
これで勘違いしてくれればいいけど……。
時間がない俺は急いで穴の中に入り込み、自分の周りを鉄に錬金して簡易シェルターを作り上げる。
次の瞬間爆音と共に凄い振動が襲う。
鉄のシェルターの上部が少し歪んだ事からもこの威力の高さが察せられる。
振動が収まった瞬間に上部の表層を土に錬金し直した。
これで穴を掘らない限りここが見つかることはないはずだ。
十分ほど経っただろうか……流石に酸素が無くなってきて苦しくなってきた。
もう大丈夫だろうか?
もしこれで上にまだシェフィールドがいたら運任せで催眠術するしかなさそうだな。
俺は覚悟を決めて地面から這い出した。
そうして現在に戻る。
俺は腕の傷を自己再生で治すと、改めて周囲を見渡した。
周囲には大小様々な黒い石の塊が転がっている。
「どう考えても人間一人相手の火力じゃないだろ……どんだけオーバーキルする気だったんだよ」
もしあのとき少し隠れるのが遅れていたらここに、石と一緒に飛び散っていたであろう自分を想像すると……いや止めよう。
ところであの腕の破片は役立ったんだろうか?
もし何の意味もなかったなら、痛い思いした意味がないんだけどな。
俺は周囲をよく見回してみると、少し離れたところに赤黒い肉片が転がっているのが見えた。
「壁に付けた筈だから、見つけて捨てたのか?
それとも爆風で吹っ飛んだんだろうか?
まぁ今となってはどっちでもいいか……さてと!
サイトたちももう帰ったみたいだし、俺も学園に戻らないとな」
またテレポートの連続で帰らなきゃならないと思うと、微妙に面倒臭いけど流石に召喚→空を飛ぶってわけにもいかないしな。
俺は一度大きくため息をつくと学園に向けてテレポートを始めた。
そして行きと同じ位の時間で学園に帰ってきたわけだが……正直滅茶苦茶疲れた!
戦闘の陰からの支援だけでも大変だったのに、シェフィールドとの戦闘。
もうしばらく何もしたくないなぁ。
そう思いながら部屋のドアを開けると、見覚えのある青髪の少女の姿があった。
しかも目が合っている。
とりあえず笑顔でドアを閉める。
「うん……なんでタバサが俺の部屋に?」
部屋の外で疑問を抱いていると、その悩みの種が部屋から出てきた。
「何故閉めるの?」
「いや……むしろなんで俺の部屋に?」
「ルイズがタルブに行ったと聞いて、その話を聞きに来た」
「それなら本人に聞けばいいんじゃないか?」
「まだ帰ってきていない」
あぁそうか、そういえば王女に報告したりしなきゃいけないんだっけ?
いや、だとしても何故俺に聞きに来る?
そんな疑問を抱いている俺の心情を読んでかタバサが言ったセリフは、俺に衝撃を与えた。
「だってタルブに行ってた」
なんか最近民主党が今まで以上にボロを出し始めていて、このままだと日本がどうなるか不安でしょうがない
あと約3年も民主党だったら……日本はどうなるんだろうか