第147話 買い物の約束
せがまれたので、ルイズ達の活躍を若干ぼかしながら説明したわけだが、タバサの目の輝きっぷりが半端じゃない。
そう言えばタバサはイーヴァルディの勇者って作品が好きって聞いたな……英雄譚とか好きなんだなぁ。
まぁ自身の状況が状況だから、弱きを助け強きを挫く、囚われの姫を助けるなぁんていう勇者を夢見るのも無理はないだろう。
実際王族の血が流れてるから、姫って言われても間違いじゃないわけだしな。
「って訳で、俺も帰ってきたんだが……タバサ?」
「………」
目で続きを催促してくるがコレは物語じゃないし、その後ルイズ達は城に行って事後報告したはずだけど俺はついて行っていない。
故に知っているはずがない情報ってことで続きは存在しない。
続きはないことを伝えると目に見えてテンションが下がった。
もし彼女に尻尾と犬耳が生えていたならブンブンと振っていた尻尾は止まり、耳は垂れているはずだ。
やっぱり英雄譚に重ねて最後は褒美もらってめでたしめでたしというのを期待していたんだろう。
「いや、そんな顔されても困るんだが……というかそれ以前に、タバサは剣の研ぎ方を聞きに来たんじゃないのか?」
「……そうだった」
そう言って顔を僅かに朱に染めた。
その後はタバサが来た本来の目的である剣の研ぎ方を伝授することになったわけだが、その前に……。
「そろそろお下がりじゃなくてタバサにしっかり合う剣探すか?」
「……なんで?」
首をかしげる少女。
本当に15歳以上なんだろうか……動作がマジで幼いんだが?
とりあえず俺は何故今の剣のままじゃいけないのか教えることにした。
「今使ってる剣は俺のお下がりだろう?
それは俺の癖が付いちゃってるんだ。
幾ら金属製とはいえ、何年も使ってると柄の部分にも自分の癖が移る。
正直もう少し早めにタバサに合う剣探すべきだったんだけど……ごめんな?」
「別にいい」
正直言うともっと早い段階でタバサ用の剣を見繕う予定だったけど、長く使うものだからじっくりと選ばないとと思うと、まとまった時間が必要になる。
それに本人も連れて行かなければならない。
と言うわけでなかなか行く機会がなかった。
でも流石にいい加減彼女に合った剣を使ってもらわないと、俺の癖がそのまま移ってしまう。
「だから今度の休日に予定がなければ、一緒に剣を探しに行こう」
「………え?」
「ん? だから今度の休みに剣探しに行こうって……」
「わ、分かった。 了解した」
「じゃあ今度の休日に部屋まで迎えに行くから、待っててくれ」
そう俺が伝えると、タバサは一言「お邪魔しました」と言って若干早足で俺の部屋を後にした。
それにしても急にどもったけど、どうしたんだ?
しかもなんか気合い入ってたし……自分の剣を選ぶのが楽しみなのか?
とりあえず俺は扉に鍵を掛け、今度こそ誰も入ってこない様に練金で溶接した。
「よし!
これでやっと休めるな……」
正直今日の出来事は俺の体力と精神力をガッツリ削り取っていた。
実はタバサと話している時点でかなり限界に近かったわけで……俺はベットに横たわると、泥のように眠り始めた。
〜タバサside〜
レッドに剣の研ぎ方と、どこに行ってたのか確かめるために部屋で待ってたけど、戻ってきたレッドは凄く疲れているように見えた。
一端出直そうとも思ったけど、余り長居するつもりもなかったから少し申し訳なく思いながら話を聞くことに決めたけど……まさかルイズが物語の中のような体験をしているとは思わなくて、予想より長く話してしまった。
しかも剣の研ぎ方を教えてもらうことはなかったけど、代わりにレッドと一緒に剣を選ぶ約束をすることに……少し緊張する。
「どうしたのね、おねえさま?」
「!?」
声に反応して即座に振り向くと、そこには心配そうな顔でこちらを見ているシルフィード(人間に変化した)の姿があった。
なんとなく緊張していたことを知られるのが恥ずかしいと思い、できる限りいつも通りの顔になるように意識する。
「別に」
「でも表情がいつもより硬いのね!
何かあったの?」
一緒にいる時間が長いからか、それとも韻竜の感受性の高さからか私の感情も読み取れるようだ。
でもよく考えたらレッドと出かける際の移動手段は、シルフィードに乗ることになるはず……なら隠さなくてもいいと思って話すことにした。
するとシルフィードの顔がドンドン笑顔になっていく。
「きゅいきゅい!!
レッドとデートなのね!」
「デート……」
「そうなのね!
ちょっとロマンチックじゃないけど、デートなのね!!」
私とレッドがデート……。
胸の鼓動が早くなり、顔に熱が集まっていくのを自分でも感じる。
それを見て、シルフィードはより一層笑顔になっていく。
「いつなのね?
デートはいつ?!」
「……次の休日」
「明後日!?
もう余り時間がないのね!」
突然忙しなく部屋の中を荒らし回るシルフィード。
そしてドンドン目の前に私の服が積み上がっていく。
「何をやっているの?」
「今日と明日でデートに着ていく服を決めないといけないのね!!
おねえさまはどれがいいのね、きゅいきゅい!」
私は少しシルフィードの行動に呆れつつも、真剣に服を見回す。
明後日……レッドは何時来るんだろう?
もし矛盾や変な部分があったら教えていただけると嬉しいです