第151話 隠れ家
昼食を終え、この町に来た目的でもある武器屋に向かっている俺とタバサなわけだが、この町かなりスリが多い。
かれこれ十分位しか歩いていないにも関わらず、スリに遭遇した回数が四回。
戦争が始まりかけてるから治安が悪化してるんだろうか?
ちなみに俺又はタバサにスリを仕掛けてきた奴はスリープクラウドで眠らせて放置している。
まぁ最低でも明日の朝までは起きないレベルのやつなので、是非風邪でもひいてほしいところだ。
「さてと、そろそろ着くかな」
「よく行く所なの?」
「それほど行くとこってわけじゃないけど父さんが昔よく行っていた店らしいから、父さんの付き添いで挨拶しに行く位だな」
「そう」
「と、話してる間に見えてきたようだ」
「……どこ?」
「あぁ、初めてだと分かりにくいよな」
実はこの店一見さんお断り的なお店なのだ。
故に表立って看板とかは出していない。
唯一武器屋っぽさが見えるのは、ノッカーについた小さな剣の装飾位。
だがそれも普通の家にあるようなものなので非常に分かりにくい。
しかも俺も一人でここに来た回数は三回しかないから迷うかもしれないと不安だったのだが……今は正直安堵してる。
店知ってるって言って迷ったらカッコ悪いにもほどがあるからな!
俺はノッカーで扉を二回、一回、七回とそれぞれ少しだけ間隔を開けて叩く。
するとガチャという音と共に鍵が開いた。
扉を開け、未だにここが武器屋かどうか信じ切れていないタバサを連れて中へと入っていく。
するとそこには普通の家の居間が広がっていて、どう見ても武器屋には見えない。
だがここはそういう場所なのだ。
頭の中が疑問符でいっぱいであろうタバサはとりあえず置いといて、今は正面に座っている女性に話しかけないとな。
「いらっしゃい」
「お久しぶりです、二—ナさん」
「おや、珍しいね。 君が誰かを連れてくるなんて……もしかして彼女かい?」
「彼女は俺の生徒兼弟子みたいなもんですよ。
ところでナッシュさんは上ですか?」
「いや、今は下だ。
なにやら新しい構想が突如思いついたらしくて昨日から籠りっぱなしなんだよ」
「あ〜、じゃあ後で来た方がいいですかね?」
「いや大丈夫だ、丁度一休みしようとしていたところだからな」
その声と共に台所の方からナッシュさんが現れた。
ところどころに煤を被り、頭はボサボサ。
どうやら徹夜で打ち続けていたようだ。
「あんた! いい加減その癖直しなさいよ!」
「いやぁ、悪い悪い。
でも思いついたら即実行が俺の売りだからな」
「馬鹿……」
なんか今はほのぼのとしているけど、多分このまま放置するとR−18な展開に突入しかねないので止めることにする。
一回止めるタイミング間違えて、三十分ほど外をブラブラする羽目になったことがあったんだよ!
「えっと、すいませ〜ん」
「ん? あぁレッドか。
今日は何しに来たんだ?」
「ちょっと短剣とレイピア見せてほしくて」
「そこの嬢ちゃん用か?」
「短剣はそうです」
「そうか、ちょっと準備してくっからここで待っててくれ」
そう言い残すとナッシュさんは再び台所へと戻っていった。
多分水を浴びに行ったんだろう。
とりあえず今の内にタバサにここのこと話しておこうと思ったんだが、振り返るとそこにタバサがいない。
疑問に覚えて二—ナさんの方を向くとそこにタバサがいた。
なんか二—ナさんが盛り上がっているように見えるけど、何話してんだろ?
っていうかタバサの顔赤ッ!?
「だから男っていうのは……さえ掴んでおけば……いざとなれば既成事……で大丈夫さ」
「え……あ……う……」
「二—ナさん? 何の話してたんですか?」
「ん、あぁちょっといい物件を抑える方法かね。
あれ? ナッシュはどこ行ったんだい?」
「ナッシュさんは多分煤を流しに行ったんだと思います」
「そうかい……あ、あの馬鹿。
拭くもの持っていかなかったね!
もうしょうがないねぇ」
そう言ってどこか嬉しそうにタオルを持って台所へと向かう二—ナさん。
しかしふと思い出したようにタバサの方へ振り向く。
「頑張んなよ、後悔したくないだろう?」
「……」(コクリ)
「よし、いい子だ」
そう言い残して満足そうに再び台所へと向かって行った。
なんか話に着いていけてないが、物件を抑える方法とか言ってたから……タバサは別荘でも買うんだろうか?
とりあえずタバサにここの説明しておくか。
「もしかしたら二—ナさんに聞いてるかもしれないけど、ここについて説明するよ。
ここ、どう見ても武器屋に見えないだろ?
これは泥棒と変な貴族が来ないようにっていう対策なんだ。
ナッシュさんは結構凄い鍛冶師なんだけど、有名になりたいわけじゃないから売りたい人に売れればそれでいいらしいんだ。
だから看板も上げないし、中に入っても簡単には分からないようになってる。
タバサもここのことを人に伝えるのは極力避けてくれよ?
その条件を呑んでくれないと詳しく話せないんだ」
「分かった」
「じゃあ続きを話そう。
ここの建物は外から見ると二階建てに見えるが、その実三階建てなんだ。
地下の工房、一階の居住スペース、二階の武器屋から成り立っている。
ちなみに地下の工房の入り口は台所のどこかにあるみたいだけど、工房への立ち入りは絶対に禁止。
もし工房へ入った場合は本人だけでなくその人が紹介した相手もここへの立ち入りを永久に禁止される」
「……厳しい」
「ここは客への信用を大切にしてるからね」
「信用できない相手に俺の作品たちはやれねぇよ。
俺の作品は俺の子供みたいなもんだからな」
戻ってきた二—ナさんとナッシュさんは先ほどまで着ていた私服姿ではなく、大分グレードが高い服を着て、腰には杖を差していた。
「貴族?」
「いや俺たちの家はもう没落してるから貴族ではないな」
「ごめんなさい」
「いや、気にしなくていい。
さてと……ゴホンッ!
いらっしゃいませ、武器屋‘隠れ家’へようこそ」
ナッシュさんはそういうと顔に笑顔を浮かべて一礼した。
ディスガイアの小説は現在15話まで書き終わったところ
まだまだ先は長いけど、じっくりと進めていくことにします
ゼロ魔もね?