第16話 暖かい村人
無事川を堰き止めていた岩を壊した俺だが、服がびしょびしょになってしまったため村長宅にお邪魔することに。
濡れた服を乾かしている間、服は息子さんの昔の服を一時的に借りることになった。
乾くまで時間がかかるためしばらく村を見て回ることになったんだけど……。
服が変わったからか、俺を見ても貴族と気付かない。
そのままうろうろとしていると、
「坊主、どこから来たんだ?」
なんか変なおっちゃんが話しかけてきた。
迷子とでも思ったのだろうか?
とりあえず
「あっちの方かな?」
と曖昧に返すとおっちゃんは、豪快に笑った。
そして俺の方を見て
「親は一緒じゃないのか?」
「お使いだから」
「そっか! 偉いな!!」
なんか騙している様で罪悪感が沸く。
話を切り上げて村長の家に戻ろうとすると、おっちゃんが家に誘ってきた。
「(まさかショタコンなのか!?……そんなわけないか)僕村長のところに戻らないといけないから……」
そういうと少し驚いたような顔をしていた。
まさか俺が貴族だと気付いたのか?
「そっかお前さん貴族だったのか……」
やっぱり気付いたのか。
はぁ、バレたくなかったのに……。
「なら尚更だ! 俺の店の飯食っていってくれ!!」
「は?」
「お前さんだろ? あの川の大岩ぶっ壊してくれたの!
その礼がしたいんだ!」
まったく……他の貴族にこんな口のきき方したら大変だぞ?
俺はそんなことを思いながら、表情には苦笑が浮かんでいた。
その後俺はおっちゃんに連れられて、おっちゃんが経営している飲み屋へと入って行った。
店はあまり大きくなかったが、定食も出しているらしく昼でも客がいるようだ。
厨房には奥さんと思わしき女性が料理を作っていて、娘さんなのかウェイトレスが一人いた。
「ここが俺の店‘青い鳥の宿り木’だ!」
「「いらっしゃいませ〜!」」
アットホームな感じの店だな。
客層も荒っぽそうな人はいないし……昼だからかな?
「この子があの大岩ぶっ壊してくれたぞ!!」
おっちゃんはサラッと暴露してくれやがった。
店の中は一瞬シーンと沈黙した後、ざわざわし始める。
「あんな子供が?」「っていうことは貴族か?」とか聞こえてきて微妙に居辛い空気なってきたから、俺は静かにその場を離れようとすると、おっちゃんに肩を掴まれ止められた。
「ザワザワすんじゃねえ!
まずはこの子にいうことがあるんじゃねぇのか!」
客たちは再び沈黙すると、今度は喋らなかった。
だが代わりにおっちゃんの奥さん?が厨房から出てきて、俺に近づいてくる。
「へぇこんな小さい子があの大岩をねぇ!
凄いんだね坊や」
「いえ、魔法を使うのに年齢はあまり関係ないですから」
俺がそういうとおっちゃんの奥さんは楽しそうに笑った。
それに触発されたのか客も口々に「ありがとうよ貴族様!」「今度うちの店にも来てくれ!」とか言い始める。
一気に活気づいた店内の空気についていけない俺は戸惑いながらおっちゃんを見た。
「みんなあの岩に困ってたんだよ!
特に家は酒場兼飯屋だから余計に困ってたんだぜ?」
俺はそれを聞いてこの騒ぎっぷりに納得した。
でもこの貴族へのフレンドリーっぷりはなんだ?
普通貴族は平民に恨まれたり、怖がられたりするんじゃないのか?
「何で貴族にそんなに親しい風に接するんですか?
僕は気にしませんけど、普通の貴族だったら大変なことになりますよ?」
「それはな、ドリュウズさんの息子だからだよ!」
「父さんと会ったことあるんですか!?」
また父さんか……今度は何やったんだ?
「いや、ドリュウズさんと何処かの貴族様がうちの店に飲みに来たことがあって、その時偶々ガラの悪い客が来てて乱闘になったんだよ。
それを止めたのがドリュウズさんとその貴族様だったんだ。
力づくの喧嘩両成敗だったんだけどな!!
それ以来ドリュウズさんは、偶にウチの店に酒を買いに来てくれるようになったんだ」
今回はまだまともか?
いや……でも待てよもう一人の貴族って誰だ?
「えっと、もう一人の貴族の名前って覚えています?」
「ん? 結構前のことだからなぁ……確かグラタン伯爵だったか?」
いやそんなおいしそうな伯爵はいません。
それにしてもあなたでしたか……グラモン伯爵!!
でもヴァリエール公爵とかじゃなくてよかったぁ。
もしそうだったら俺はまた父さんに話を聞きに行かなければならなかったところだ。
その後もぶどうジュースや料理をごちそうになったり、他の客に絡まれたりしたわけだが、村長さんが俺の服が乾いたことを伝えに来てくれたから、俺は村長宅に戻ることに。
おっちゃんは「また来いよ!」と言ってくれた。
客の人たちも「帰り道気をつけろよ!」とか「今度はもっとゆっくりして行きなさいよ」とか暖かい言葉を掛けてくれて、少し泣きそうになったのは秘密だ。
俺が村長宅に服を戻りに行く途中村長さんが申し訳なさそうに言った。
「あやつらには厳しく言っておきますので……」
「いえいえ、俺も楽しかったですし、父さんのお酒も頂いたのでので気にしないでください」
「そうですか? そう言って戴けると気が楽です。
あやつらもあの大岩には困っていたので、嬉しかったのでしょう」
そんな会話をしつつ、村長宅で服を受け取った俺は村長に別れの言葉を告げると、村を後にした。
夕焼けの中俺は、酒場での喧騒を思い出しながら帰り道をゆっくりと飛んでいく。
因みに家に帰って父さんに任務の結果を伝えて、おっちゃんから預かった酒を渡すと少し驚いていた。
「お前あそこに行ったのか?」
「うん! 父さんとグラモン伯爵の武勇伝も聞いたよ!」
「……そうか」
俺がそういうと父さんは少しだけ恥ずかしそうに窓から外を見ていた。
無事川を堰き止めていた岩を壊した俺だが、服がびしょびしょになってしまったため村長宅にお邪魔することに。
濡れた服を乾かしている間、服は息子さんの昔の服を一時的に借りることになった。
乾くまで時間がかかるためしばらく村を見て回ることになったんだけど……。
服が変わったからか、俺を見ても貴族と気付かない。
そのままうろうろとしていると、
「坊主、どこから来たんだ?」
なんか変なおっちゃんが話しかけてきた。
迷子とでも思ったのだろうか?
とりあえず
「あっちの方かな?」
と曖昧に返すとおっちゃんは、豪快に笑った。
そして俺の方を見て
「親は一緒じゃないのか?」
「お使いだから」
「そっか! 偉いな!!」
なんか騙している様で罪悪感が沸く。
話を切り上げて村長の家に戻ろうとすると、おっちゃんが家に誘ってきた。
「(まさかショタコンなのか!?……そんなわけないか)僕村長のところに戻らないといけないから……」
そういうと少し驚いたような顔をしていた。
まさか俺が貴族だと気付いたのか?
「そっかお前さん貴族だったのか……」
やっぱり気付いたのか。
はぁ、バレたくなかったのに……。
「なら尚更だ! 俺の店の飯食っていってくれ!!」
「は?」
「お前さんだろ? あの川の大岩ぶっ壊してくれたの!
その礼がしたいんだ!」
まったく……他の貴族にこんな口のきき方したら大変だぞ?
俺はそんなことを思いながら、表情には苦笑が浮かんでいた。
その後俺はおっちゃんに連れられて、おっちゃんが経営している飲み屋へと入って行った。
店はあまり大きくなかったが、定食も出しているらしく昼でも客がいるようだ。
厨房には奥さんと思わしき女性が料理を作っていて、娘さんなのかウェイトレスが一人いた。
「ここが俺の店‘青い鳥の宿り木’だ!」
「「いらっしゃいませ〜!」」
アットホームな感じの店だな。
客層も荒っぽそうな人はいないし……昼だからかな?
「この子があの大岩ぶっ壊してくれたぞ!!」
おっちゃんはサラッと暴露してくれやがった。
店の中は一瞬シーンと沈黙した後、ざわざわし始める。
「あんな子供が?」「っていうことは貴族か?」とか聞こえてきて微妙に居辛い空気なってきたから、俺は静かにその場を離れようとすると、おっちゃんに肩を掴まれ止められた。
「ザワザワすんじゃねえ!
まずはこの子にいうことがあるんじゃねぇのか!」
客たちは再び沈黙すると、今度は喋らなかった。
だが代わりにおっちゃんの奥さん?が厨房から出てきて、俺に近づいてくる。
「へぇこんな小さい子があの大岩をねぇ!
凄いんだね坊や」
「いえ、魔法を使うのに年齢はあまり関係ないですから」
俺がそういうとおっちゃんの奥さんは楽しそうに笑った。
それに触発されたのか客も口々に「ありがとうよ貴族様!」「今度うちの店にも来てくれ!」とか言い始める。
一気に活気づいた店内の空気についていけない俺は戸惑いながらおっちゃんを見た。
「みんなあの岩に困ってたんだよ!
特に家は酒場兼飯屋だから余計に困ってたんだぜ?」
俺はそれを聞いてこの騒ぎっぷりに納得した。
でもこの貴族へのフレンドリーっぷりはなんだ?
普通貴族は平民に恨まれたり、怖がられたりするんじゃないのか?
「何で貴族にそんなに親しい風に接するんですか?
僕は気にしませんけど、普通の貴族だったら大変なことになりますよ?」
「それはな、ドリュウズさんの息子だからだよ!」
「父さんと会ったことあるんですか!?」
また父さんか……今度は何やったんだ?
「いや、ドリュウズさんと何処かの貴族様がうちの店に飲みに来たことがあって、その時偶々ガラの悪い客が来てて乱闘になったんだよ。
それを止めたのがドリュウズさんとその貴族様だったんだ。
力づくの喧嘩両成敗だったんだけどな!!
それ以来ドリュウズさんは、偶にウチの店に酒を買いに来てくれるようになったんだ」
今回はまだまともか?
いや……でも待てよもう一人の貴族って誰だ?
「えっと、もう一人の貴族の名前って覚えています?」
「ん? 結構前のことだからなぁ……確かグラタン伯爵だったか?」
いやそんなおいしそうな伯爵はいません。
それにしてもあなたでしたか……グラモン伯爵!!
でもヴァリエール公爵とかじゃなくてよかったぁ。
もしそうだったら俺はまた父さんに話を聞きに行かなければならなかったところだ。
その後もぶどうジュースや料理をごちそうになったり、他の客に絡まれたりしたわけだが、村長さんが俺の服が乾いたことを伝えに来てくれたから、俺は村長宅に戻ることに。
おっちゃんは「また来いよ!」と言ってくれた。
客の人たちも「帰り道気をつけろよ!」とか「今度はもっとゆっくりして行きなさいよ」とか暖かい言葉を掛けてくれて、少し泣きそうになったのは秘密だ。
俺が村長宅に服を戻りに行く途中村長さんが申し訳なさそうに言った。
「あやつらには厳しく言っておきますので……」
「いえいえ、俺も楽しかったですし、父さんのお酒も頂いたのでので気にしないでください」
「そうですか? そう言って戴けると気が楽です。
あやつらもあの大岩には困っていたので、嬉しかったのでしょう」
そんな会話をしつつ、村長宅で服を受け取った俺は村長に別れの言葉を告げると、村を後にした。
夕焼けの中俺は、酒場での喧騒を思い出しながら帰り道をゆっくりと飛んでいく。
因みに家に帰って父さんに任務の結果を伝えて、おっちゃんから預かった酒を渡すと少し驚いていた。
「お前あそこに行ったのか?」
「うん! 父さんとグラモン伯爵の武勇伝も聞いたよ!」
「……そうか」
俺がそういうと父さんは少しだけ恥ずかしそうに窓から外を見ていた。