第21話 修羅場の兆し
俺も10歳になって、小学校で言えば4年生だ。
修行は順調、ポケモンは可愛い。
全てはいつも通りだ。
「今年はどんなお友達を見せてくれるのかしら?」
あぁ……本当にいつも通りだ。
〜回想〜
「さぁ起きなさいレッド!」
ある日俺は、そんな母さんの声で起こされた。
俺は眠い目を擦りながらベットから出て準備を始めた。
何の準備かって?
ルイズ嬢の6歳の誕生日だよ。
……正直あんまり行きたくない。
いやルイズ嬢は良いんだよ?まぁ積極的に仲良くなりたいとは思わないけど、小さいころから「レッドにぃ! レッドにぃ!」と言って慕ってくれてたからね。
問題はヴァリエール夫妻だ。
ここ3年位ヴァリエール夫妻からの眼が怖い。
まぁ自分の娘と親しい男だから警戒してるのもあるかもしれないが、何やら二人っきりで部屋に籠って何やっているのかということが気になるらしい。
ちなみに毎年何やっているか聞かれるけど、その度動物と遊んでいると言っている。
ポケモンのことをバラすわけにもいかないわけだし、動物っちゃあ動物だから嘘はついていない。
カトレアさんにも聞いているらしいが、約束は守ってくれているようで、ポケモンのことは話さないでいてくれている。
その代わり動物と遊んでいるとも言わないが……。
娘から言質が取れない→怪しい→俺に聞くというループが年々続いているわけだ。
しかも徐々に視線が怖くなっていくオマケつきで!
そりゃ行きたくなくなるさ!!
でも行かないわけにもいかない。
せっかくプレゼントも用意したわけなのだし……。
因みにルイズ嬢へのプレゼントは毎年水晶で作った花を渡している。
カトレアさんには毎年ポケモンの水晶像をあげている。
何故花かと言うと、前世で彼女いない歴=年齢の俺にとって、花は女性全員が好きなものという固定概念があったために、花を選んだわけだ。
正直普通の花なら子供向けではないかもしれないけど、水晶の花ならキラキラして綺麗だし良いかなと思って贈っている。
今年の花は、紫水晶を主に用いたアイリスだ!
俺は余り花に詳しくないので、ゲームに出てきた花や有名な花くらいしか知らない。
因みに、アイリスを知っている理由は、友人にサクラ大戦を好きなやつがいて、そいつがキャラの写真と花の写真をセットで俺に見せ、その関係性を語っていたからだ。
まぁ基本聞き流してたわけだが、花の写真は綺麗だったから覚えていた。
毎年ルイズ嬢に水晶花を渡しているが、顔を赤らめて喜んでくれるので、俺の選択は間違えていないはずだ。
俺も自分が綺麗だと思う花を渡してるから、共感を得ているようで少し嬉しい。
今まで渡した水晶花は、王道で赤いバラ、母の日に贈るくらいだから縁起がいいはずだと思って白いカーネーション、少女マンガで思い出した白いマーガレットの三本だ。
でも初めて水晶花を渡した時にカトレアさんが、怖い笑顔をしながら俺を部屋に引きずり込んで
「どういうことなの?」
と聞いてきたので、何か不手際があったのかと思って
「女の子なら花が好きかと思って……」
と返したら呆れたようにため息をついて、いつもの笑顔に戻ったということがあった。
女性にも花が嫌いな人がいるっていうことなのかなと、自分なりに結論付けた当時7歳の俺だった。
そんな昔の誕生会に思いを馳せながら用意を済ませると、ドアの前で待っていてくれた母さんと共に馬車へと向かって行った。
馬車に揺られてしばらくして、目的のヴァリエール邸に到着。
俺と両親は客間に案内されて、夫妻を待っていた。
そして数分後、ドアの前に人の気配がしたと思ったら、ドアが静かに開いた。
「久しぶりだなドリュウズ!」
「こちらこそ久しぶりになります、ヴァリエール殿」
父はここ最近忙しく二年ほど、ヴァリエール邸には来ていなかった。
それにしても相変わらず公爵夫人は威圧感が半端じゃない……ヤバ!目があった。
「レッド君、今日もカトレアの部屋で‘動物’と遊ぶのですか?」
「は……はい」
「そうですか、一度私も行ってみようかしら」
「いえ! 唯動物たちと触れ合っているだけなので、見ても楽しくなんてありませんよ?」
「そうかしら……」
ヤバい! 端じゃなくヤバい! 冷や汗が……。
俺やましいことなんかしてないはずなんだけどなぁ。
そんな針のむしろに座っている様な気分の俺に、幸運が訪れた。
「レッド君が来たって本当!?」
「兄様!?」
カトレアさんとルイズ嬢が入室したことで、夫人の追及が止んだのは本当に嬉しかった。
とりあえず二人に挨拶すべく、ドアの方へと歩いて行った。
決して夫人から逃げているわけじゃないよ?ホントだよ?
「久しぶりカトレアさん、ルイズ嬢」
「「お久しぶり!」」
「ルイズ嬢もまた大きくなりましたね。
はい、今年のプレゼントです」
「ありがとうレッド兄様!」
「ルイズ? ここで開けないのかしら?」
「いえ……部屋で開けさせてもらいます」
「喜んでもらえると嬉しいな」
「はい!」
いやぁ喜んでもらえると嬉しいもんだ。
ましてや手作りのものだから尚更嬉しい。
それにしてもさっきからカトレアさんの頬が少し膨れている気がするんだけど、気のせいか?
「じゃあカトレアさん、今日も動物と戯れるとしますか!
それではルイズ嬢、またパーティで会いましょう」
俺がそういうとカトレアさんは花が咲いたような笑顔で、大きく頷いた。
何故か今度はルイズ嬢が膨れていた気がするが、気のせいだろう。
あと夫人お願いですから杖を仕舞ってください!
母さんも笑ってないで、夫人を止めてくださいよ!
〜回想終了〜
「今回は誰がいいでしょうか……前回はゾロアでしたよね?」
「えぇあの可愛らしい子犬のような子でしたわ」
「それじゃあ今回はカッコいい系で行きます。
来いアブソル!!」
俺がそういうと光の中から白い獣が出てきた。
1.2メートルというなかなかの大きさなため、結構威圧感があるけどまるで忠犬のように俺の指示を待っている姿は、宛らバトラーの様だ。
俺は召喚の見届け、安心からか欠伸が出てしまった。
「レッド君眠いの?」
「実はルイズ嬢のプレゼントに予想以上に手間がかかって、あまり寝てないんだ」
「そうなんだ……それじゃあ少し眠ってもいいのよ?」
「正直嬉しいですが、暇じゃないですか?」
「いいの、それにアブソル君もいるし!」
「それじゃあお言葉に甘えて。
アブソル、少しカトレアさんを頼んだよ」
アブソルは俺に小さく頭を下げ、了承の意を示した。
俺はカトレアさんが貸してくれた枕に頭を乗せ、目を閉じた。
〜カトレア side〜
「もう眠ってしまった?」
私は小さな声でレッド君に話しかけてみた。
返事は返ってこない。
ぐっすりと眠っているようだ。
私は立ちあがって、ゆっくりとレッド君に近づいていく。
しかし私のまえにアブソル君が立ちふさがった。
まるで彼を私から守るように……。
私はアブソル君のまえにしゃがみ、言った。
「大丈夫よ。
酷いことなんかしないわ。
少し枕を変えるだけ」
アブソル君は私の眼をジッと見つめて、そこから退いてくれた。
私は彼の頭の辺りに座って、彼の頭を少しだけ持ち上げた。
そして枕をずらし、彼の頭を私の膝へと乗せ換えた。
わずかな重みと暖かさが、とても落ち着く。
「起きた時、貴方はどんな顔をするかしらね?」
私はそう呟きながら彼の髪を梳いていく。
赤くなっているであろう私の顔をアブソル君は、ジッと見ている。
本当に今日のお友達は心配性の様だ。
私は小さく笑いながら、彼が起きるまで髪を梳いていた。
俺も10歳になって、小学校で言えば4年生だ。
修行は順調、ポケモンは可愛い。
全てはいつも通りだ。
「今年はどんなお友達を見せてくれるのかしら?」
あぁ……本当にいつも通りだ。
〜回想〜
「さぁ起きなさいレッド!」
ある日俺は、そんな母さんの声で起こされた。
俺は眠い目を擦りながらベットから出て準備を始めた。
何の準備かって?
ルイズ嬢の6歳の誕生日だよ。
……正直あんまり行きたくない。
いやルイズ嬢は良いんだよ?まぁ積極的に仲良くなりたいとは思わないけど、小さいころから「レッドにぃ! レッドにぃ!」と言って慕ってくれてたからね。
問題はヴァリエール夫妻だ。
ここ3年位ヴァリエール夫妻からの眼が怖い。
まぁ自分の娘と親しい男だから警戒してるのもあるかもしれないが、何やら二人っきりで部屋に籠って何やっているのかということが気になるらしい。
ちなみに毎年何やっているか聞かれるけど、その度動物と遊んでいると言っている。
ポケモンのことをバラすわけにもいかないわけだし、動物っちゃあ動物だから嘘はついていない。
カトレアさんにも聞いているらしいが、約束は守ってくれているようで、ポケモンのことは話さないでいてくれている。
その代わり動物と遊んでいるとも言わないが……。
娘から言質が取れない→怪しい→俺に聞くというループが年々続いているわけだ。
しかも徐々に視線が怖くなっていくオマケつきで!
そりゃ行きたくなくなるさ!!
でも行かないわけにもいかない。
せっかくプレゼントも用意したわけなのだし……。
因みにルイズ嬢へのプレゼントは毎年水晶で作った花を渡している。
カトレアさんには毎年ポケモンの水晶像をあげている。
何故花かと言うと、前世で彼女いない歴=年齢の俺にとって、花は女性全員が好きなものという固定概念があったために、花を選んだわけだ。
正直普通の花なら子供向けではないかもしれないけど、水晶の花ならキラキラして綺麗だし良いかなと思って贈っている。
今年の花は、紫水晶を主に用いたアイリスだ!
俺は余り花に詳しくないので、ゲームに出てきた花や有名な花くらいしか知らない。
因みに、アイリスを知っている理由は、友人にサクラ大戦を好きなやつがいて、そいつがキャラの写真と花の写真をセットで俺に見せ、その関係性を語っていたからだ。
まぁ基本聞き流してたわけだが、花の写真は綺麗だったから覚えていた。
毎年ルイズ嬢に水晶花を渡しているが、顔を赤らめて喜んでくれるので、俺の選択は間違えていないはずだ。
俺も自分が綺麗だと思う花を渡してるから、共感を得ているようで少し嬉しい。
今まで渡した水晶花は、王道で赤いバラ、母の日に贈るくらいだから縁起がいいはずだと思って白いカーネーション、少女マンガで思い出した白いマーガレットの三本だ。
でも初めて水晶花を渡した時にカトレアさんが、怖い笑顔をしながら俺を部屋に引きずり込んで
「どういうことなの?」
と聞いてきたので、何か不手際があったのかと思って
「女の子なら花が好きかと思って……」
と返したら呆れたようにため息をついて、いつもの笑顔に戻ったということがあった。
女性にも花が嫌いな人がいるっていうことなのかなと、自分なりに結論付けた当時7歳の俺だった。
そんな昔の誕生会に思いを馳せながら用意を済ませると、ドアの前で待っていてくれた母さんと共に馬車へと向かって行った。
馬車に揺られてしばらくして、目的のヴァリエール邸に到着。
俺と両親は客間に案内されて、夫妻を待っていた。
そして数分後、ドアの前に人の気配がしたと思ったら、ドアが静かに開いた。
「久しぶりだなドリュウズ!」
「こちらこそ久しぶりになります、ヴァリエール殿」
父はここ最近忙しく二年ほど、ヴァリエール邸には来ていなかった。
それにしても相変わらず公爵夫人は威圧感が半端じゃない……ヤバ!目があった。
「レッド君、今日もカトレアの部屋で‘動物’と遊ぶのですか?」
「は……はい」
「そうですか、一度私も行ってみようかしら」
「いえ! 唯動物たちと触れ合っているだけなので、見ても楽しくなんてありませんよ?」
「そうかしら……」
ヤバい! 端じゃなくヤバい! 冷や汗が……。
俺やましいことなんかしてないはずなんだけどなぁ。
そんな針のむしろに座っている様な気分の俺に、幸運が訪れた。
「レッド君が来たって本当!?」
「兄様!?」
カトレアさんとルイズ嬢が入室したことで、夫人の追及が止んだのは本当に嬉しかった。
とりあえず二人に挨拶すべく、ドアの方へと歩いて行った。
決して夫人から逃げているわけじゃないよ?ホントだよ?
「久しぶりカトレアさん、ルイズ嬢」
「「お久しぶり!」」
「ルイズ嬢もまた大きくなりましたね。
はい、今年のプレゼントです」
「ありがとうレッド兄様!」
「ルイズ? ここで開けないのかしら?」
「いえ……部屋で開けさせてもらいます」
「喜んでもらえると嬉しいな」
「はい!」
いやぁ喜んでもらえると嬉しいもんだ。
ましてや手作りのものだから尚更嬉しい。
それにしてもさっきからカトレアさんの頬が少し膨れている気がするんだけど、気のせいか?
「じゃあカトレアさん、今日も動物と戯れるとしますか!
それではルイズ嬢、またパーティで会いましょう」
俺がそういうとカトレアさんは花が咲いたような笑顔で、大きく頷いた。
何故か今度はルイズ嬢が膨れていた気がするが、気のせいだろう。
あと夫人お願いですから杖を仕舞ってください!
母さんも笑ってないで、夫人を止めてくださいよ!
〜回想終了〜
「今回は誰がいいでしょうか……前回はゾロアでしたよね?」
「えぇあの可愛らしい子犬のような子でしたわ」
「それじゃあ今回はカッコいい系で行きます。
来いアブソル!!」
俺がそういうと光の中から白い獣が出てきた。
1.2メートルというなかなかの大きさなため、結構威圧感があるけどまるで忠犬のように俺の指示を待っている姿は、宛らバトラーの様だ。
俺は召喚の見届け、安心からか欠伸が出てしまった。
「レッド君眠いの?」
「実はルイズ嬢のプレゼントに予想以上に手間がかかって、あまり寝てないんだ」
「そうなんだ……それじゃあ少し眠ってもいいのよ?」
「正直嬉しいですが、暇じゃないですか?」
「いいの、それにアブソル君もいるし!」
「それじゃあお言葉に甘えて。
アブソル、少しカトレアさんを頼んだよ」
アブソルは俺に小さく頭を下げ、了承の意を示した。
俺はカトレアさんが貸してくれた枕に頭を乗せ、目を閉じた。
〜カトレア side〜
「もう眠ってしまった?」
私は小さな声でレッド君に話しかけてみた。
返事は返ってこない。
ぐっすりと眠っているようだ。
私は立ちあがって、ゆっくりとレッド君に近づいていく。
しかし私のまえにアブソル君が立ちふさがった。
まるで彼を私から守るように……。
私はアブソル君のまえにしゃがみ、言った。
「大丈夫よ。
酷いことなんかしないわ。
少し枕を変えるだけ」
アブソル君は私の眼をジッと見つめて、そこから退いてくれた。
私は彼の頭の辺りに座って、彼の頭を少しだけ持ち上げた。
そして枕をずらし、彼の頭を私の膝へと乗せ換えた。
わずかな重みと暖かさが、とても落ち着く。
「起きた時、貴方はどんな顔をするかしらね?」
私はそう呟きながら彼の髪を梳いていく。
赤くなっているであろう私の顔をアブソル君は、ジッと見ている。
本当に今日のお友達は心配性の様だ。
私は小さく笑いながら、彼が起きるまで髪を梳いていた。