第22話 思いの自覚
十分な睡眠がとれたのか、俺は目覚め始めていた。
意識がゆっくりと覚醒して行く。
周辺状況確認。
場所:カトレアさんの部屋
出したポケモン:アブソル
俺の今の体制:横たわっている
目の前にあるもの:カトレアさんの笑顔
何だ何も問題ないな……ん?いやなんかおかしい。
カトレアさんの顔が近い。
この状態になるには、俺の顔をのぞきこまない限りあり得ない。
しかし俺に見えるのは覗きこんでいる姿ではなく、丸くなって寝ているアブソルを見るカトレアさん。
ならなんでこんなに近くに見える?
いやそもそも枕の質感が変わってないか?
そんなことを寝ぼけた頭で考えていると、俺が起きていることにカトレアさんが気付いた。
「おはようレッド君。
ぐっすり眠れたみたいね?」
「あ、うん」
「まだルイズのパーティまでは時間があるから、横になっていていいのよ?」
「ありがとう」
「それに私も、もうちょっと膝枕っていうものを堪能していたいしね」
「そうか、それじゃあお言葉に甘え……って膝枕!?」
「あら? 気付いてなかったの?
レッド君が寝苦しそうにしていたから、枕のせいかなと思って咄嗟に私の膝を貸してあげたのだけれど……嫌だった?」
「とんでもない!
嫌なんかじゃないけど……足痺れなかった?」
「そっか、よかった。
大丈夫よ、これでもお友達との散歩で鍛えているんだから!」
カトレアさんはそういって力瘤を作るようなポーズをした。
その姿見て俺は吹きだした。
カトレアさんが少し膨れたが、ちょっとすると彼女も吹きだした。
そして二人目を合わせると、示し合わせたように笑い声を上げていた。
しばらく笑い続け、一先ず膝枕をしてくれた礼を言うと、カトレアさんは恥しそうに微笑んだ。
ルイズのパーティまであまり時間がなくなってきたため、俺は起き上がって、アブソルを起こしに行った。
「アブソル、今日はありがとうな。
還ってゆっくりしてくれ」
「またね、アブソル君」
俺とカトレア嬢はアブソルに別れを告げ、二人でパーティ会場へと向かって行った。
「相変わらず大きなパーティホールだなぁ」
「そうなの? あまり気にしたことなかったのだけれど……」
パーティホールに着いた俺とカトレアさんは、互いの両親の元へ行くため分かれた。
「レッド、遅かったな」
「遅刻よ?」
「ごめん父さん、母さん」
両親と少し話した後、俺は今回の主賓であるルイズ嬢に挨拶に行った。
まだ流石に周囲に客がいるから、俺は後で行こうと思って料理を食べにに行こうとすると、
「兄様!」
と俺を呼ぶルイズ嬢の声がした。
振り返ってみると俺の方に向かってきているルイズ嬢が見えた。
周りの客たちは、「ヴァリエール家に男児なんて居たか?」「あれはドリュウズ家の……」等の声が聞こえてきて、俺はかなり焦った。
目立ちたくない俺としてはこの状況はかなりキツイ。
そんなことを知ってか知らずか、彼女は俺の前に立って優雅にお辞儀をした。
「この度はお越しいただき、誠にありがたく感じております。
レッド・ド・ドリュウズ殿」
「こちらこそ、お誕生日おめでとうございます。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール様」
子供二人が精いっぱい堅苦しい挨拶をしている姿に、周りの貴族たちは微笑ましく見守っていた。
よかった……さっきの視線よりは数倍マシだ。
そう思って安堵しているとルイズ嬢が小声で話しかけてきた。
「プレゼント開けさせてもらいました。
とても嬉しかったです!」
「そっか、喜んでもらえて何よりだよ」
「ところで兄様、花言葉って知っていますか?」
「あぁ、花にそれぞれ付いている意味のことだろ?」
「し、知っているならいいんです」
「?」
俺は赤くなっているルイズ嬢に首を傾げながら、周りを見渡した。
カトレアさんがこっちをガン見している。
なんだ?なんか恐いぞ?
「それでは兄様、パーティ楽しんでいってくださいね!」
「あ……あぁ」
ルイズ嬢はそういうと、貴族の塊の中へと戻って行った。
まだカトレア嬢がこっちを見ている。
っていうかこっちに歩いてきてる。
なんだ? 足が震えるぞ?!
俺が何かしたのか?!
「レッド君?」
「はい! 何でしょう!」
「さっきルイズと何を話していたのかしら?」
「花言葉についてです、sir!」
「!? そう……それで貴方はどう答えたの?」
「知っていると答えました、sir!」
「貴方、知っていて贈っていたの!?」
「? 知っていますが何か問題があったのでしょうか?」
カトレア嬢は何かを考えるようにそこから去ってしまった。
何だったんだろう……。
〜カトレア side〜
花言葉を知っていてあの花の水晶を贈っていたというの?
「ということはレッド君は、ルイズのことを好きなの?」
そう言葉に出した瞬間、私の胸が締め付けられるように痛んだ。
しかしまだレッド君の気持ちを直接聞いたわけではない。
……あれ? 私なんでこんなに拘っているのかしら。
可愛い妹に優しい彼氏が出来る事なんて、とても喜ばしい事なのに……。
それが納得いかない。
まだ早い? そうじゃない。
もっとカッコいい人がいる?確かに探せばいるだろう……でもそうじゃない。
身分の差? それもあまり関係ない。
ならば何が私は納得いかないの?
「レッド君だから?」
ストンと当てはまった気がする。
そっか……私レッド君を取られたくなかったんだ。
初めて会った時は、不思議な動物と友達な小さな男の子。
一年に一回だけ会うお友達。
ルイズが生まれてからは一年に二回。
会えば会うほど彼に惹かれていた気がする。
彼の口からオーク退治の話を聞いたときは、柄にもなく怒ってしまった。
風の噂で彼が山賊退治をしたと聞いたときは、とても心配だった。
これが恋なのか、それとも親愛なのかそれはまだ分からない。
でもこれが恋なら、例え可愛い妹でも譲れない。
「負けないわよ、私の可愛いルイズ」
〜side out〜
十分な睡眠がとれたのか、俺は目覚め始めていた。
意識がゆっくりと覚醒して行く。
周辺状況確認。
場所:カトレアさんの部屋
出したポケモン:アブソル
俺の今の体制:横たわっている
目の前にあるもの:カトレアさんの笑顔
何だ何も問題ないな……ん?いやなんかおかしい。
カトレアさんの顔が近い。
この状態になるには、俺の顔をのぞきこまない限りあり得ない。
しかし俺に見えるのは覗きこんでいる姿ではなく、丸くなって寝ているアブソルを見るカトレアさん。
ならなんでこんなに近くに見える?
いやそもそも枕の質感が変わってないか?
そんなことを寝ぼけた頭で考えていると、俺が起きていることにカトレアさんが気付いた。
「おはようレッド君。
ぐっすり眠れたみたいね?」
「あ、うん」
「まだルイズのパーティまでは時間があるから、横になっていていいのよ?」
「ありがとう」
「それに私も、もうちょっと膝枕っていうものを堪能していたいしね」
「そうか、それじゃあお言葉に甘え……って膝枕!?」
「あら? 気付いてなかったの?
レッド君が寝苦しそうにしていたから、枕のせいかなと思って咄嗟に私の膝を貸してあげたのだけれど……嫌だった?」
「とんでもない!
嫌なんかじゃないけど……足痺れなかった?」
「そっか、よかった。
大丈夫よ、これでもお友達との散歩で鍛えているんだから!」
カトレアさんはそういって力瘤を作るようなポーズをした。
その姿見て俺は吹きだした。
カトレアさんが少し膨れたが、ちょっとすると彼女も吹きだした。
そして二人目を合わせると、示し合わせたように笑い声を上げていた。
しばらく笑い続け、一先ず膝枕をしてくれた礼を言うと、カトレアさんは恥しそうに微笑んだ。
ルイズのパーティまであまり時間がなくなってきたため、俺は起き上がって、アブソルを起こしに行った。
「アブソル、今日はありがとうな。
還ってゆっくりしてくれ」
「またね、アブソル君」
俺とカトレア嬢はアブソルに別れを告げ、二人でパーティ会場へと向かって行った。
「相変わらず大きなパーティホールだなぁ」
「そうなの? あまり気にしたことなかったのだけれど……」
パーティホールに着いた俺とカトレアさんは、互いの両親の元へ行くため分かれた。
「レッド、遅かったな」
「遅刻よ?」
「ごめん父さん、母さん」
両親と少し話した後、俺は今回の主賓であるルイズ嬢に挨拶に行った。
まだ流石に周囲に客がいるから、俺は後で行こうと思って料理を食べにに行こうとすると、
「兄様!」
と俺を呼ぶルイズ嬢の声がした。
振り返ってみると俺の方に向かってきているルイズ嬢が見えた。
周りの客たちは、「ヴァリエール家に男児なんて居たか?」「あれはドリュウズ家の……」等の声が聞こえてきて、俺はかなり焦った。
目立ちたくない俺としてはこの状況はかなりキツイ。
そんなことを知ってか知らずか、彼女は俺の前に立って優雅にお辞儀をした。
「この度はお越しいただき、誠にありがたく感じております。
レッド・ド・ドリュウズ殿」
「こちらこそ、お誕生日おめでとうございます。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール様」
子供二人が精いっぱい堅苦しい挨拶をしている姿に、周りの貴族たちは微笑ましく見守っていた。
よかった……さっきの視線よりは数倍マシだ。
そう思って安堵しているとルイズ嬢が小声で話しかけてきた。
「プレゼント開けさせてもらいました。
とても嬉しかったです!」
「そっか、喜んでもらえて何よりだよ」
「ところで兄様、花言葉って知っていますか?」
「あぁ、花にそれぞれ付いている意味のことだろ?」
「し、知っているならいいんです」
「?」
俺は赤くなっているルイズ嬢に首を傾げながら、周りを見渡した。
カトレアさんがこっちをガン見している。
なんだ?なんか恐いぞ?
「それでは兄様、パーティ楽しんでいってくださいね!」
「あ……あぁ」
ルイズ嬢はそういうと、貴族の塊の中へと戻って行った。
まだカトレア嬢がこっちを見ている。
っていうかこっちに歩いてきてる。
なんだ? 足が震えるぞ?!
俺が何かしたのか?!
「レッド君?」
「はい! 何でしょう!」
「さっきルイズと何を話していたのかしら?」
「花言葉についてです、sir!」
「!? そう……それで貴方はどう答えたの?」
「知っていると答えました、sir!」
「貴方、知っていて贈っていたの!?」
「? 知っていますが何か問題があったのでしょうか?」
カトレア嬢は何かを考えるようにそこから去ってしまった。
何だったんだろう……。
〜カトレア side〜
花言葉を知っていてあの花の水晶を贈っていたというの?
「ということはレッド君は、ルイズのことを好きなの?」
そう言葉に出した瞬間、私の胸が締め付けられるように痛んだ。
しかしまだレッド君の気持ちを直接聞いたわけではない。
……あれ? 私なんでこんなに拘っているのかしら。
可愛い妹に優しい彼氏が出来る事なんて、とても喜ばしい事なのに……。
それが納得いかない。
まだ早い? そうじゃない。
もっとカッコいい人がいる?確かに探せばいるだろう……でもそうじゃない。
身分の差? それもあまり関係ない。
ならば何が私は納得いかないの?
「レッド君だから?」
ストンと当てはまった気がする。
そっか……私レッド君を取られたくなかったんだ。
初めて会った時は、不思議な動物と友達な小さな男の子。
一年に一回だけ会うお友達。
ルイズが生まれてからは一年に二回。
会えば会うほど彼に惹かれていた気がする。
彼の口からオーク退治の話を聞いたときは、柄にもなく怒ってしまった。
風の噂で彼が山賊退治をしたと聞いたときは、とても心配だった。
これが恋なのか、それとも親愛なのかそれはまだ分からない。
でもこれが恋なら、例え可愛い妹でも譲れない。
「負けないわよ、私の可愛いルイズ」
〜side out〜