第32話 戦友
「俺はジェイク・ド・グラモンだ!
今回は俺をしっかり守ってくれよ坊や?」
「はい……(えっと微妙に喧嘩売られてる?)」
なんかこの人めんどくさいなぁと思いつつ、俺はジェイクの私兵に混ざって行進していた。
最初この人達に合流した時、こんな子供が?という目を凄い来たわけだが、俺の父さんのことを知っている人がいたらしく、その人が他の人に耳打ちして行くにつれて「あぁあの人の子供か」という納得の視線に変わっていった。
え? この知名度何?
兵たちがザワザワしてきたので、ジェイクさんが登場。
俺を発見して今に至るわけだ。
「念のため聞いておきますが、今回討伐か捕獲のどちらを?(まぁ普通なら討伐何だけどこの人は何となく……)」
「当然じゃないか! 捕獲に決まってるだろう!!」
「……理由をお聞きしても?」
「ワイバーンなど恐るるに足らん!討伐なんて簡単すぎる!
ならば選択は一つ……捕獲しかあるまい!」
この人危ういな、慢心が過ぎる。
確かに10人以上の数の私兵を連れた状態なら、ワイバーン一頭を討伐するのは容易いかも知れない……だが捕獲は話が別だ。
殺さないように手加減しなければならないということは、通常以上に気を使わなければならない。
そして手負いの獣程厄介なものは、そういない。
それに腐っても竜の一種だ。
一度噛みつかれてしまったら、その部分は容易く噛み千切られてしまう。
俺は周囲の兵達を見回した。
メイジは5人か……少なくは無いけどどうだろう。
俺の視線に気づいた周りの兵達は苦笑していたが、苦笑の中に覚悟があった。
この人達にもプライドがあるのだろう。
自分たちがジェイクさんに信用されているなら、命を掛けてでもそれに応えて見せようという気概。
この人達が納得しているなら、俺としては言うことは無いだが、俺もそこに組み込まれていると考えると一言言いたくなった。
「簡単でも安全を取った方がいいのでは?」
「なんだ怖いのか? でもそうだな、子供には厳しい内容かもしれないな! ハッハッハッハッハ」
「(いや歳3つしか変わんないから!)」
「父さんが連れて行けというくらいだから、どれだけ凄いメイジかと思えば唯の怖がりの子供じゃないか」
「はぁ……」
ヤバい位やる気が失せる。
正直周りの兵たちが俺の肩を叩いて、苦笑いしてなかったら任務ほっぽり出して帰りたいぐらいだよ。
その後俺とジェイクは山に入るまで声を交わすことは無かった。
「そろそろ報告にあった巣穴が見えてくるはずなんだが……あった!
お前達警戒しながら散開、巣穴を取り囲むように整列しろ。
レッド君、君は俺の隣にいたまえ」
「え? 何でですか?」
「君は俺の隣で確りと俺の兵達と、俺の魔法がワイバーンを捕える様を見ていなさい。
危ないからな!」
「(悪い人ではないみたいだな)そうさせてもらいます」
一応援護は、しないとな。
あの人たちに死んでほしくないし……。
「それじゃあ3つ数えたら一斉に魔法を放ち、その後出ていたワイバーンに向かって弓を一斉掃射、そして弱ったところで、眠りの鐘を使用し任務終了だ。
じゃあ行くぞ!3!2!1!発射!!」
ファイアーボール3つとエアハンマーが2つ洞窟の中へと飛んで行った。
すると轟音と共に、洞窟内が一瞬明るくなった。
中に一瞬だけ黒い影が見えた。
「みんな気を抜くなよ?」
ジェイクがここからが本番だという感じで、杖を構え出した。
父さんから聞いた話だと彼は土のトライアングルメイジらしい。
俺は先輩と言っても過言ではない人が、どんな魔法を使うのか一時も目を離さずに自分の糧にしようとしてた。
ズシンズシンという音が洞窟から聞こえてきて、徐々に地響きが大きくなってくる。
弓を引き絞り、魔法の呪文を唱え始め、剣を抜く。
こちらはもう準備万端だ。
出てきた瞬間に戦闘は始まる……。
暗い洞窟の中からワイバーンの頭が見えた瞬間、一斉に弓と魔法が向かって行った。
ジェイクも「アースハンド」と唱えてワイバーンが逃げられないようにした。
俺は小さい声で「ロックスピア」を唱えて足の甲を縫いとめた。
動けなくなったワイバーンは弓の一斉掃射と魔法の直撃を受け、断末魔の咆哮を上げてその場に倒れた。
「あれ?捕獲じゃなかったんですか?」
「まぁ、あれくらいじゃワイバーンは死なないよ。
飛竜の生命力は半端じゃないからね」
「そうなんですか……」
ジェイクを甘く見ていたようだ。
慢心ではなく、事実だったのか……。
兵たちが眠りの鐘を使ってワイバーンを眠らせているときジェイクが話しかけてきた。
「そういえば、援護感謝する。
先ほどは唯の子供扱いして悪かった」
と言いながら頭を下げた。
俺の援護に気付いたんだ……それに謝ってくるとは、正直予想外だった。
「頭を上げてください!
俺が子供なのはその通りですし、周囲の視線も気になります!」
「そうだったな、すまんすまん」
「気付いてたんですね、俺の魔法に」
「生憎耳は良い方でね」
彼はそういうと、指で自分の耳を指さしながら俺にウィンクをした。
様にはなっているが、俺にするなと言いたい。
「アースハンドだけでも事足りたと思いますけど……」
「それでもさ、援護してくれたのは事実だろ?」
普通にいい人だなこの人。
俺はグラモン家が基本根がいい人なんだと感じた。
その後帰り道は土魔法の活用法や、錬金のコツについて延々と話し続け、グラモン邸に着く頃には友達のようになっていた。
この世界初めての男友達。
「もし困ったことがあったら遠慮なく俺に言いに来ればいい。
相談くらいには乗ろう」
「それはありがたいですね。
ジェイクさんも困ったことがあったら言ってくださいよ?」
「ハハハハ、そうだね。
何かあったら頼らせてもらうよ!」
「それじゃあ僕は行きますね……」
「気をつけて帰るといい。
あぁそれと次から俺のことはジェイクと呼んでくれ、さん付けは少しこそばゆい」
「分かりました。
じゃあ僕もレッドと呼んでくださいね」
そうして俺の初の護衛依頼は特に何もなく終わった。
俺に報酬は無かったけど、掛替えの無いものを手に入れた気がする。
〜ジェイク side〜
レッド……予想以上だったな。
俺のアースハンドの隙間を縫うように弧を描いたロックスピアを発動するとは、凄い制御能力だ。
確かそろそろ学園に入学するとか言っていたな。
あの子がいるなら楽しい学園生活だったろうなぁ……。
そうだ! 今度会う時に弟達を紹介しよう!
きっと仲良くなれる筈だ。
「ジェイク、依頼御苦労。
疲れただろう、今日は早く休みなさい」
「いいえ父さん、それよりも俺に新しい友人ができました」
「レッド君か?」
「はい」
「あの子は早熟故に、悩みを多く抱えているかもしれない。
偶に相談に乗ってあげなさい」
「言われなくともそのつもりですよ。
なんてったって戦友なんですから!」
短い間でも一緒に戦った友。
そいつが困ってたら助けになるのは当然だ。
いつでも頼ってくれよレッド!
………金銭面は無理だけどな!!
〜side out〜
「俺はジェイク・ド・グラモンだ!
今回は俺をしっかり守ってくれよ坊や?」
「はい……(えっと微妙に喧嘩売られてる?)」
なんかこの人めんどくさいなぁと思いつつ、俺はジェイクの私兵に混ざって行進していた。
最初この人達に合流した時、こんな子供が?という目を凄い来たわけだが、俺の父さんのことを知っている人がいたらしく、その人が他の人に耳打ちして行くにつれて「あぁあの人の子供か」という納得の視線に変わっていった。
え? この知名度何?
兵たちがザワザワしてきたので、ジェイクさんが登場。
俺を発見して今に至るわけだ。
「念のため聞いておきますが、今回討伐か捕獲のどちらを?(まぁ普通なら討伐何だけどこの人は何となく……)」
「当然じゃないか! 捕獲に決まってるだろう!!」
「……理由をお聞きしても?」
「ワイバーンなど恐るるに足らん!討伐なんて簡単すぎる!
ならば選択は一つ……捕獲しかあるまい!」
この人危ういな、慢心が過ぎる。
確かに10人以上の数の私兵を連れた状態なら、ワイバーン一頭を討伐するのは容易いかも知れない……だが捕獲は話が別だ。
殺さないように手加減しなければならないということは、通常以上に気を使わなければならない。
そして手負いの獣程厄介なものは、そういない。
それに腐っても竜の一種だ。
一度噛みつかれてしまったら、その部分は容易く噛み千切られてしまう。
俺は周囲の兵達を見回した。
メイジは5人か……少なくは無いけどどうだろう。
俺の視線に気づいた周りの兵達は苦笑していたが、苦笑の中に覚悟があった。
この人達にもプライドがあるのだろう。
自分たちがジェイクさんに信用されているなら、命を掛けてでもそれに応えて見せようという気概。
この人達が納得しているなら、俺としては言うことは無いだが、俺もそこに組み込まれていると考えると一言言いたくなった。
「簡単でも安全を取った方がいいのでは?」
「なんだ怖いのか? でもそうだな、子供には厳しい内容かもしれないな! ハッハッハッハッハ」
「(いや歳3つしか変わんないから!)」
「父さんが連れて行けというくらいだから、どれだけ凄いメイジかと思えば唯の怖がりの子供じゃないか」
「はぁ……」
ヤバい位やる気が失せる。
正直周りの兵たちが俺の肩を叩いて、苦笑いしてなかったら任務ほっぽり出して帰りたいぐらいだよ。
その後俺とジェイクは山に入るまで声を交わすことは無かった。
「そろそろ報告にあった巣穴が見えてくるはずなんだが……あった!
お前達警戒しながら散開、巣穴を取り囲むように整列しろ。
レッド君、君は俺の隣にいたまえ」
「え? 何でですか?」
「君は俺の隣で確りと俺の兵達と、俺の魔法がワイバーンを捕える様を見ていなさい。
危ないからな!」
「(悪い人ではないみたいだな)そうさせてもらいます」
一応援護は、しないとな。
あの人たちに死んでほしくないし……。
「それじゃあ3つ数えたら一斉に魔法を放ち、その後出ていたワイバーンに向かって弓を一斉掃射、そして弱ったところで、眠りの鐘を使用し任務終了だ。
じゃあ行くぞ!3!2!1!発射!!」
ファイアーボール3つとエアハンマーが2つ洞窟の中へと飛んで行った。
すると轟音と共に、洞窟内が一瞬明るくなった。
中に一瞬だけ黒い影が見えた。
「みんな気を抜くなよ?」
ジェイクがここからが本番だという感じで、杖を構え出した。
父さんから聞いた話だと彼は土のトライアングルメイジらしい。
俺は先輩と言っても過言ではない人が、どんな魔法を使うのか一時も目を離さずに自分の糧にしようとしてた。
ズシンズシンという音が洞窟から聞こえてきて、徐々に地響きが大きくなってくる。
弓を引き絞り、魔法の呪文を唱え始め、剣を抜く。
こちらはもう準備万端だ。
出てきた瞬間に戦闘は始まる……。
暗い洞窟の中からワイバーンの頭が見えた瞬間、一斉に弓と魔法が向かって行った。
ジェイクも「アースハンド」と唱えてワイバーンが逃げられないようにした。
俺は小さい声で「ロックスピア」を唱えて足の甲を縫いとめた。
動けなくなったワイバーンは弓の一斉掃射と魔法の直撃を受け、断末魔の咆哮を上げてその場に倒れた。
「あれ?捕獲じゃなかったんですか?」
「まぁ、あれくらいじゃワイバーンは死なないよ。
飛竜の生命力は半端じゃないからね」
「そうなんですか……」
ジェイクを甘く見ていたようだ。
慢心ではなく、事実だったのか……。
兵たちが眠りの鐘を使ってワイバーンを眠らせているときジェイクが話しかけてきた。
「そういえば、援護感謝する。
先ほどは唯の子供扱いして悪かった」
と言いながら頭を下げた。
俺の援護に気付いたんだ……それに謝ってくるとは、正直予想外だった。
「頭を上げてください!
俺が子供なのはその通りですし、周囲の視線も気になります!」
「そうだったな、すまんすまん」
「気付いてたんですね、俺の魔法に」
「生憎耳は良い方でね」
彼はそういうと、指で自分の耳を指さしながら俺にウィンクをした。
様にはなっているが、俺にするなと言いたい。
「アースハンドだけでも事足りたと思いますけど……」
「それでもさ、援護してくれたのは事実だろ?」
普通にいい人だなこの人。
俺はグラモン家が基本根がいい人なんだと感じた。
その後帰り道は土魔法の活用法や、錬金のコツについて延々と話し続け、グラモン邸に着く頃には友達のようになっていた。
この世界初めての男友達。
「もし困ったことがあったら遠慮なく俺に言いに来ればいい。
相談くらいには乗ろう」
「それはありがたいですね。
ジェイクさんも困ったことがあったら言ってくださいよ?」
「ハハハハ、そうだね。
何かあったら頼らせてもらうよ!」
「それじゃあ僕は行きますね……」
「気をつけて帰るといい。
あぁそれと次から俺のことはジェイクと呼んでくれ、さん付けは少しこそばゆい」
「分かりました。
じゃあ僕もレッドと呼んでくださいね」
そうして俺の初の護衛依頼は特に何もなく終わった。
俺に報酬は無かったけど、掛替えの無いものを手に入れた気がする。
〜ジェイク side〜
レッド……予想以上だったな。
俺のアースハンドの隙間を縫うように弧を描いたロックスピアを発動するとは、凄い制御能力だ。
確かそろそろ学園に入学するとか言っていたな。
あの子がいるなら楽しい学園生活だったろうなぁ……。
そうだ! 今度会う時に弟達を紹介しよう!
きっと仲良くなれる筈だ。
「ジェイク、依頼御苦労。
疲れただろう、今日は早く休みなさい」
「いいえ父さん、それよりも俺に新しい友人ができました」
「レッド君か?」
「はい」
「あの子は早熟故に、悩みを多く抱えているかもしれない。
偶に相談に乗ってあげなさい」
「言われなくともそのつもりですよ。
なんてったって戦友なんですから!」
短い間でも一緒に戦った友。
そいつが困ってたら助けになるのは当然だ。
いつでも頼ってくれよレッド!
………金銭面は無理だけどな!!
〜side out〜