第35話 女神の再現
俺使い魔召喚したら、ポケモンと戯れるんだ………。
そんな死亡フラグっぽいものを立てながら、俺は今馬車に乗っている。
夏休みに入って実家に帰ろうと思ったのだが、突如送られてきたジェイクからの手紙。
内容は弟のことを紹介したいから、夏休みにでも遊びに来てくれとのこと。
「実家に帰れるか?」
まぁそんな遠いところでもないし、大丈夫だろう。
俺は馬車に揺られながら、グラモン領に着々と近づいて行った。
「やぁ、久しぶり! 学院生活はどうだい?」
「慣れないことも多いし、大変な時もあるけど友達も出来たから充実してるかな?」
「そっか、それは良かった。
遠路遥々来てもらったところ悪いんだけど、早速弟たちと会ってくれないか?
君のことを話したら会ってみたいと言って聞かないんだよ」
「そんなに興味引くことなんかやった覚えないんだけど……」
「いや帰り道で君が話してくれた、水晶で作ったゴーレムを見てみたいって4番目の弟が興奮しているんだよ」
4番目……ギーシュか!?
原作でもゴーレムにワルキューレとか名前つけてたし、機能性より見た目重視してたもんなぁ。
因みに俺はルイズ嬢やカトレアさんに水晶を用いた像や、装飾品をプレゼントしていたためか、水晶の扱いが上手くなっている。
地中にある石英の純度を錬金する前に分かる程度には、慣れたわけで……。
それでゴーレムを作ることも可能になった。
まぁ硬度的にも確か硬度7とかだったはずだから、かなり硬めなんだよ?
でも問題は1体作るのに30秒近く掛かる上に、3体までしか操れない。
これだったら普通のゴーレムを10体作った方がまだ効率的だ。
故に戦闘時に使うことはほぼ無いだろう。
「今から呼んでくるからそれまでに、一体でいいから作っておいてくれないか?」
「まぁ別にいいですけど……見た面関して何か指定はありますか?」
「出来れば女性型にしてくれると嬉しい」
「(ジェイクもしっかりグラモン家の血をひいているみたいだな……)分かりました」
まぁ別に作るのは1体だから奮発しよう。
ギーシュ! これこそがワルキューレというものを見せてあげよう!!
俺は自重というものを何処かに一時的に捨て去り、前世でゲームに出ていたワルキューレを完全再現することに全てを掛ける!!
髪はロングストレートの金髪、胸部と腕に緑と金色の鎧、手に持つものはロングソードと緑と金色の盾、羽のついた赤と金の兜、目の色は青みがかっていて端正な顔立ち!
そう、サンドラとセットで出てくるあのワルキューレだ!
流石に金は錬金出来ないので純度の高くない黄水晶をあえて使い、せめて黄色に見えるように。
肌はミルキークォーツ、赤は水晶砂を使用。
剣は煙水晶で、髪の毛は純度の高い黄水晶。
髪の毛が風になびく様を見たかったが、それは水晶で再現するのは難しすぎる。
故にここら辺で妥協しなきゃならんか……。
問題は青い水晶がないことだけど……黒水晶でどうにかしよう。
「よしこれで完成だ!!」
「「………」」
我ながらいい出来だ!
ここに石英が多く埋まっていてよかった。
流石に人型は結構大きなものだから、多くないと作れないところだった。
「これは……予想以上に」
「う……美しい!」
「ん? いつの間に来てたんですか?」
「あ、あぁ君が彼女の顔の造形をしていた時かな?」
「そんなに早く来ていたんなら、声を掛けてくださいよ」
「いや、とても集中していたみたいだったからね。
それにしても素晴らしいな、このゴーレムは!!」
「そんなに褒めてくれると嬉しいですね!」
「これを見たら褒めずにはいられないよ……これはまさに戦女神じゃないか。
ん? そういえばギーシュはどこにいった?」
「あぁ連れてきていた子なら、さっきから横でジッとゴーレム見てますよ?」
「この女性にモデルはいるんですか!?」
「(流石にゲームに出てきたとは言えないしなぁ)いや、特にいないけど……」
「凄い!! ぜひ僕にこのゴーレムの作り方を「いや、まず君は誰?」あぁ申し遅れました。
僕の名前はギーシュ・ド・グラモンです。
でさっきの話の続きですが、このゴーレムの作り方を……」
「そう君がジェイクの弟さんか。
ゴーレムの作り方だけど、作るのは環境と時間が必要だし、かなり練習が必要だからお勧めしないよ?」
「練習……どれくらいで出来るようになりましたか?」
「う〜ん、僕は10年以上掛かったかな?」
「10年以上……」
「別にこれと同じものを作る必要はないんじゃない?
というよりもあくまでこれはゴーレムだし、しかもこれは余り戦闘に向かない」
「え? でも水晶なら硬いから戦闘向きじゃないんですか?」
「さっきも言ったんだけど、作るのに時間が掛かるんだよ。
それに水晶がある場所でしかこのゴーレムは作れない。
さらに言うと、関節部分も水晶だから動かすのが大変なんだよ」
「そうなんですか……」
「だからゴーレムを作るのにここまで凝らなくてもいいんじゃないかな?
彼女でも作った方が早いと思うよ?」
俺がそう言うと、ギーシュは少し迷っていたが、やがて納得したかのように頷いた。
「そうですね……僕にはまだ見ぬバラ達が僕のことを待っている!!
ゴーレムを作るよりもバラ達を愛でることの方が大事ですね!」
「(うわぁ……ギーシュだなぁ)そうかもしれないね」
「でもゴーレムを女性型にするという考えは真似させてもらってもいいですか?」
「別に構わないけど……」
「何時か僕だけのワルキューレを完成させるぞ!」
「(あれ? 俺きっかけになってない?)」
「今さらだけどレッド君、今日はゆっくりして行ってくれ」
それからは、いつかの帰り道のようにジェイクとギーシュと夕食まで話し続けた。
まぁ殆ど女性の魅力と魔法についてだったけど……。
夕食を御馳走になり、夜も遅くなってきたから馬車で実家に向かうことにした。
ついでに作ったゴーレムも持って帰ることにした。
……実家の部屋に置いておこうと思ってなんかいないんだからな!
「今日は、あまりもてなしもできなくて済まなかったね」
「いいえ、夕食も御馳走になりましたし、ジェイクとギーシュ君との会話も楽しかったですから」
「そうか、それは良かった!
また会おう、レッド!」
「また会いましょう、ジェイク!」
俺はジェイクに別れを告げ、実家への帰り道を馬車で走り始めた。
ニコ動見て出したくなった。
後悔はしていない!!
まぁこれから先出てくることは、おそらくないですがw