第38話 テリーの修行
「もっと一歩を大きく!地面を蹴るように!!」
「わかったって!」
今テリーに箭疾歩を教えています。
理由? いやバーンナックルを諦めきれなかったので……
俺思ったんですよ!
ラインだったらしっかり制御すればイケるんじゃないかって。
拳に直接纏わせると火傷する。
なら耐火の手袋着けた上で、拳に炎を纏う際内側の炎を外側に、外側の炎を内側に向けることによって使えるんじゃないかと!!
多少の熱さは感じるかもしれないけれどね。
要するに炎を圧縮して、グローブを作るわけだ。
まぁ包むように下まで覆ってしまうと、熱風で火傷してしまうから拳の上の部分のみのグローブになるんだけどね。
「そこまで! 次は炎を制御する訓練をしよう」
「炎を制御ってどういうことだ?
いつもしている魔法の訓練じゃないのか?」
「炎を精密に制御することで、燃やしたい対象以外を燃やさないように出来るんだよ?
だからフレイムゲイザーを使うのにも役立つはず!
それに制御が完璧になったら身体に纏わせることだって出来る……かもしれない。
もし制御が完璧になったら僕からプレゼントを用意するよ?」
「身体に炎を纏う……なんかカッコいいな!!
よし、頑張るぜ!
それにレッドからのプレゼントっていうのも気になるしな!」
よっしゃ乗ってくれた!!
実際出来て損になる技術でもないから、OKでしょ。
「じゃあ先ず炎の形を変えてみることから始めよう」
「OK、どんな形にすればいい?」
「別になんでもいいんだけど、じゃあ壺作ってみてくれる?」
「壺か……やってみる」
テリーが目の前に火の玉を作り出し、その中心に穴が作っていく。
余程集中しているのか、額には汗が流れて眉間にしわが寄っている。
そこからは穴が火の玉を貫通しない様に細心の注意を払いながら、穴を徐々に広げていく。
しかし壺っぽくなってきた次の瞬間、炎の壺がはじけ飛んだ!
危ないと思った俺は急いでテリーと俺の前に土で出来た壁を作り出し、爆発から身を守った。
「すまん、制御間違えた」
「一回目だし、しょうがないよ」
「でも悔しいな……もう一回だ!!」
その後も惜しいところまでは行くんだけど、完成まではたどり着けない。
まぁ流石に一回目の訓練で出来るとは思ってなかったんだけど、徐々に制御が上手くなってきている。
この調子なら炎のメリケン完成も夢じゃないな!
俺も手袋用意しなきゃな……。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ………くっそ! 出来ねぇ!!」
「今日はこれくらいにしておいた方が良さそうだね。」
「あぁ〜〜〜〜〜〜〜早く出来るようになりてぇ!!!」
自分でも精神力の限界だと分かったらしく、俺の終了の合図に文句は無い様だ。
「明日も頑張ろう!
もしさっきみたいに爆発したとしても、僕が何とかするから」
「すまない……よし、明日こそ完成させるぜ!」
俺とテリーは明日の訓練に向けて気合を入れながら、今日の講義へと向かって行った。
後ろから自分達を見る目に気付かずに……
〜コルベール side〜
「ん? あれは1年生のテリー君とレッド君じゃないか?」
朝からこんなところで何をやっていたんだ?
私は彼らが来た方向に足を向けた。
「な!! これは一体……。」
そこには何かが爆発したような痕と盛り上がった土があった。
(実は何時もレッドが訓練後の地面を錬金で元に戻していたんだけど、今回は少し訓練に時間を掛けてしまったために最低限の錬金しか行わなかったのだ)
「爆発したような痕と言うことは、火の魔法……でもこの規模の爆発はラインに成り立てのテリー君では起こせないはず。
それにこの土の不自然な盛り上がりは、一体どういうことだ?
おそらくレッド君が何かしたんだろうけど……考えても分からないな」
学院長に話してみよう。
〜side out〜
特に何事もなく授業を終え、寮に帰る前に朝練した場所を完全に元の状態に戻そうと、俺は森の近くに向かって行った。
俺はいつもの場所に着いて、早速錬金をしようとしたんだが、なにか引っ掛かる。
地面に残る爆発の痕、若干盛り上がっている土、そして俺達の足跡。
本来ならそれだけのはず……だけどここにはもう一つ俺達よりも大きな足跡がある。
しかもその足跡の主はこの近くをグルグル回っていたようだ。
「(これは朝の訓練を誰かに見られたのか?)」
誰だ? 先輩か? 先生か?
先輩なら目をつけられるのはウザったいが、まぁ大して問題ないだろう。
先生なら……少し面倒くさい事になるかもしれない。
俺達がやっている訓練は結構特殊だから、あまり受け入れられない。
もしかしたら止めるように言われるかもしれない。
「(駄目だ!! まだテリーは技を完成させていない!!)」
なんとか訓練を続けられるだけの理由を考えるか……はぁ、頭が痛い。