第41話 怒髪天を突く
召還の儀式の後。
俺はレジロックに’アイガ’という名前を付けた。
ひっくり返すとガイアになるという安易なネーミングだったが、気に入ってくれたようだ。
名前も付け終わったことだし、俺はアイガの能力を確かめることにした。
「アイガ、お前なにが出来る?」
「ジ!」
「お前喋れたのか……っておい! 腕取れたぞ!!」
「ジー!」
「いやジーじゃなくて!!」
アイガの腕はいきなり肘位から先が取れ、地面に落ちた。
流石にいきなりの非常事態に俺はあたふたしていたが、アイガが無くなった腕の部分を地面に向けると、地面から石が浮き上がってきて腕にくっつき始める。
10秒くらいで元の腕に戻ったアイガを見て、俺は安堵のため息をついた。
「お前……ビックリさせるなよ」
「ジジ」
「いやまぁ出来ることを教えてって言ったから、しょうがないのかも知れないんだけどな?」
「ジ!」
「はぁ……まぁいいや。
それでこの取れた手はどうするんだ?」
俺が地面に落ちている岩を指差すと、アイガは真ん中の目を点滅させた。
すると岩が、俺の目の前まで浮かび上がる。
とりあえず俺はアイガの方を見たんだが、何か「ドウダ!スゴイダロ?」って言っているような気がした。
イラッとしたのでとりあえず否定してみることにする。
「いやぁ……浮かばせるだけじゃなぁ」
「ジ!?」
「せめて飛ばせないとなぁ」
俺がそういうと、アイガは左右6つの目を点滅させてながら腕を空に向ける。
すると岩はグングンと高度を上げていく。
俺は「いや、高さの問題じゃなくてな?」と突っ込みを入れようとした次の瞬間開いた口がふさがらなくなった。
アイガの目が一瞬強く光ると、アイガの腕だった岩の塊が流星のごとく降って来たのだ。
そして響く轟音。
「………いやいやいや、どうすんだよこれ」
「ジ!」
目の前には10メートル位のクレーター。
しかも中心には50センチくらいの大穴が開いている。
これ直撃したらミンチになるぞ?
「凄いけど………これ学院で使用禁止な?」
「ジ?!」
「こんなの使ったら退学になるわ!!」
「ジ〜……」
残念そうにしているが、この子大丈夫か?
俺はこれからの生活に色々と嫌な予感を感じつつ寮へと歩いていく。
てっきりバレて怒られるかと思ったが、何とかバレなかった様でお咎めなしだった。
それから特に何も無く数日が経過、ついに俺に二つ名が付きました!
‘石繰’のレッド。
普通! やったね普通!!
まぁ若干馬鹿にされてる感も否めないけど……だってアイガ見ながら鼻で笑う人いたからね。
ぱっと見普通のゴーレムまんまだからしょうがないかも知れないけど、多分戦ったらミンチ量産機になるよ?
ちなみにテリーは、‘火柱’のテリー……やったね! 厨二っぽいよ!!
まぁ授業中にフレイムゲイザーぶっ放したからしょうがないんだけど。
ちなみにその時コルベール先生が俺のことガン見してたけど、気付かない振りをしたのは内緒の話。
結局その後テリーと俺はコルベール先生に呼び出しを食らって、説教2時間くらいされた。
ちなみに殆どが手加減を覚えなさいとか、周りを見て行動しなさいとかだったよ。
何で俺は呼ばれたのか終始謎だったわけだが、最後に一言「レッド君も見てたなら、止めなさい」とのこと。
え? 俺ストッパーなの?
とりあえず「基本放任主義なんで……」と言って逃げました。
流石にテリーの自由奔放な行動にストップかけるのは難しい。
俺とテリーとアンディは、いつも通り朝の鍛錬を終えて朝食を取りに行った。
これまたいつも通りテリーが山盛りのパンを食べ、俺とアンディが普通に食べる。
ここまでは、何の問題も無かった。
しかしそれは使い魔の宿舎で起こったのだ。
俺達は授業にアイガ達を連れて行くために、使い魔用の宿舎へと向かっていた。
しかし何故か宿舎前に人だかりが出来ている。
俺達は行かないわけにも行かなかったので、急ぎ宿舎へ向かうとそこには拳を振り上げたアイガの姿があった。
「止めろアイガ!!!」
「ジ?!」
俺の声で何とか拳は振り下ろされなかったが、アイガの前には俺の同級生と思わしき人物がいた。
まぁ尻餅をついて目を瞑っているが、おそらく同級生だったはず……多分。
そいつは既にアイガが拳を納めていることにやっと気付いたのか、羞恥で顔を赤く染め、急ぎ立ち上がった。
周囲にいた生徒達も笑いが堪え切れなかったようだ。
爆笑の中心にいる彼は、次第にわなわなと震えだし、カッと俺の方を睨んだ。
「貴様のゴーレムは、何を考えている!
いきなり俺に殴りかかろうとするなんて非常識だぞ!」
「は? いや僕は今来た所なんで状況がうまく飲み込めないんだけど?」
なんか彼が言うには、使い魔を迎えに来た彼に突然殴りかかったという話らしいが……それはちょっとありえないな。
一応知能はあるから、いきなり殴りかかったりはしないはずなんだけど。
「えっと……とりあえずごめん」
「謝って済む問題か!
危害を加えようとしたんだぞ!!
即刻壊してしまうべきだ!」
「は?」
「そうだ、それが良いに違いない!
どうせなら俺が壊してやろう!」
「いやちょっと待とうよ」
俺は周囲にいる生徒達を見たが、みんな微妙に顔を歪めている。
なんだ? 何か知っているのか?
俺は取り合えず近くにいる子に話を聞いてみることに。
すると大分話が違うことが分かった。
まず分かったのは彼の名前がリークだと言うこと。
何でも彼はテリーのことが好きだった女の子に振られて、その腹いせで何時もテリーの近くにいる俺の使い魔であるアイガを蹴ったりしていたらしい。
まぁ岩だから逆に自分の手足を痛める結果になったんだが、そこで彼はアイガに向けて俺の悪口を言い始めた。
「テリーの腰巾着」「平凡で何も取り得がない」などの言葉を言っていたが、最初はアイガも特に動くこともせずにジッとしていたみたいなんだが、そのことを良い事にどんどん好き勝手なことを言い始めた辺りから様子が変わっていったようだ。
拳が小さく振るえ、まるで怒りを堪えているようだったそうだ。
そして彼が「あんなやつ別にいなくても誰も困らない」と言った瞬間、アイガはゆっくりと立ち上がって、彼の方に向かっていった。
そして殴ろうとして今に至ると言うことらしい。
「………」
「あいつウゼェな」
「駄目だよ兄さん! はっきり言っちゃ!」
「いや要するに八つ当たりして切れられたから、逆切れしてるんだろ?
全部あいつの自業自得じゃねぇか」
「まぁそうだけど……」
「そして俺はそれ以上に、あいつがレッドを馬鹿にしたのが気にいらねぇ」
「テリー、僕は別に気にしてないよ?」
「いや、お前が気にしてようが、なかろうが俺は気にいらねぇ!」
「それには僕も賛成かな?」
「アンディまで……」
「何せお前は、」
「僕達の、」
「「先生だから(な)!」」
二人の先生発言は周囲の生徒に疑問を抱かせたが、今回は彼の方が悪いと思う人が多く、周囲の目は彼へと集まった。
彼は未だ「ゴーレムは壊してしまうべきだ」と騒いでいるが、周囲の目はどんどんと冷めていく。
ここに彼の味方はいなかった。
それが分かったのか、彼は突如言い放った。
「決闘だ!!」
「は?」
「お前が負けたら、お前のゴーレムは破壊させてもらう!」
「いや、何で僕がそんなデメリットしかない決闘に応じなければならないの?」
「五月蝿い! お前は大人しく決闘を受ければいいんだ!」
「レッド、この決闘俺がやっても良いか?」
「いや、僕がやるよ兄さん。」
「二人とも、少し下がっててくれないか?」
「「え?」」
「流石に俺にもね、我慢の限度ってものがあるんだよ……。
まず八つ当たりでアイガへの暴行、この時点でアウト。
俺への暴言? そんなものはどうでもいいし、屁でもない。
問題は自分のしたことを棚上げした挙句、アイガを壊す?
壊すって何だよ! まず認識が間違えてんだよ!
アイガは生き物だ!! 自我を持つ生物だ!
そして俺の相棒だ!
てめぇが生き死にを決めていい相手じゃねぇんだよ!
決闘? 上等じゃねぇか、やってやんよ!」
「「(誰これ?!)」」
「………ハッ!?よ、よしじゃあヴェストリ広場で待ってるぞ!」
そういってリークは逃げるように去っていく。
俺はその後姿を見て我に返った。
「………どうしよっかなぁ。」
「いや……どうしよっかなっていうか、さっきのはなんだ!!」
「そうだよ、説明してくれないかな?」
「ちょっと怒り心頭って言うか、我を失ったって言うか」
「「だとしても性格変わりすぎだろ!!」」
なんか周りの子達も頷いてる。
あぁ……やっちゃったよ。
目立ちたくないのに、駄目なんだよなぁ昔から。
自分のものとか傷付けられると直ぐ頭に血が上る。
事故なら何とか大丈夫なんだけど、故意だとどうしても耐え切れない。
「取りあえず広場に向かいますか」
「はぁ……まぁ負けるとは思ってないけど、一応気をつけろよ?」
「油断はしないでね?」
俺はギャラリーを引き連れて、広場へと向かった。
テンションが上がりすぎた結果がこれ
後悔だらけだが、やりたいことをやらせてみた
ここ直した方がいいよ?等のアドバイスが有ったら気軽に一言物申してやってください
この回は自分でもヤバイかなぁと思っていますので、案があれば普通に修正入れます。
ただし決闘する事に関しては変えたくないのでそこら辺はご了承くださいませ。