第43話 使い魔品評会
もうそろそろ使い魔品評会の時期。
フリッグの舞踏会? そんなものは知らん!!
……俺は壁の花通り越して、食べる機械だったよ。
仲のいい女の子いなかったしね。
因みにテリーとアンディは、最初俺の隣で料理を摘まんでいたんだけど、女の子達が勇気を出して連れて行ってしまった。
………くそう、リア充め!!
結局マリーとマイという女の子が争奪戦に勝利したらしく、二人はそれぞれ連れたってどっか行った。
俺は聞いたことがある名前のような気がしたが、気にしたら負けだと思ってスルー。
とりあえず使い魔品評会まで1週間切ったわけだが、俺はとても悩んでいる。
あの決闘から微妙に周囲から向けられる目が変わった。
悪い方に変わったわけじゃないし、戦い方は少しメイジっぽくなかったかもしれないけど、しばらくしたら元の状態に戻るだろと放置している。
それはあまり関係ないのだが、今の俺の悩みは品評会で何をやるかということだ。
「なぁアイガ、どうしようか?」
「ジ!」
「いや、それは駄目だ!」
「ジ〜」
アイガは自身の腕を取り外そうとしていたので、即効で止めた。
皆の前でクレーター作れって言うのか?!
それは目立つっていうより、怖がられるだろ。
「なんか品評会で使えそうな技あったかな……あ! ロックオンって使えたよな!」
「ジ!」
「それを事前に用意した的に掛けておいて、それを空中で打ち抜くってどうだろうか?」
「ジジ!」
アイガも首を縦に振り、賛成してくれたようなので、俺達は次の日の夜から練習を始めた。
夜を選んだのは、テリー達にも隠しておくためだ。
テリーも何やるか俺に言わないみたいだし、何をやるかはお互い本番でのお楽しみということだろう。
ならば俺もそれに乗ろうということで、俺はテリーと時間が被らないように夜に森の中で練習している。
「何個までの的ならいける?」
「ジ………ジ!」
「7個?」
アイガは自身の顔を手で指し、目を点滅させた。
俺はそのことを聞いてから、俺は木一本から錬金で的を出来るだけたくさん作った。
的の山になったが、まだ5日ある。
むしろこれで足りるか心配なぐらいだ。
「じゃあ始めるか!」
「ジ!」
そこから俺とアイガの射撃訓練が始まった。
俺が的を上に向かって投げ、それをアイガが打ち抜く。
ひたすらそれの繰り返し。
品評会前夜くらいになると、ロックオンを使わなくても4枚までなら撃ち抜けるようになった。
流石に俺の肩も限界が近い。
「今日はこのくらいにして明日に備えよう」
「ジジ!」
そして俺とアイガは最後の特訓を終えて明日に備えるため、それぞれの寝床へと戻った。
翌日、ついに使い魔品評会当日。
俺とアイガが会場に到着すると、既に結構な人数が揃っていた。
そこにはテリーの姿もあった。
ここ最近は格闘訓練もお休みしていたので、授業以外であまり会うことが無かったが、一体何をやるのかとても楽しみだ。
そんな俺の視線に気づいたテリーは、俺に向かってニカっと笑い、口パクで「楽しみにしてるからな」と伝えてきた。
それに俺も「そっちこそ」と返して品評会に集中する。
その後次々と色んな使い魔が現れては、その特技を披露して行く。
コカトリスの石化、イービルアイの透視、他にもジャイアントモールの穴掘りやドリアードの踊りなんて言うのもあった。
そしてついにテリーの番に。
「23番テリー、召喚した使い魔は火竜です」
「それでは始めなさい」
テリーはその声を合図に、火竜の背中をポンと軽くたたくと火竜は強く羽ばたき始める。
そして次の瞬間飛び立ったのだが、その軌道は曲芸飛行に限りなく近いものだった。
その軌道はジェットコースターが描くような軌道から、ハンマーヘッドのような本物の曲芸飛行まで様々だ。
あまり目にすることの無い飛び方に観客達の眼は釘付け。
「流石テリーだ……でも曲芸飛行なんて良く思いついたなぁ。
まぁきっと色々試して、カッコ良さそうとかいう理由で選んだんだろうな。
でも俺達も負けてない。
方向性は違うけど、有用性は分かる人は分かってくれるからな」
テリーの発表も大歓声の中終了し、俺の番がやってきた。
「24番レッド、召喚した使い魔はロックゴーレムです」
「それでは始めなさい」
俺達の発表は長いものではない。
むしろ一瞬で終わる。
俺は手に持っていた7枚の木の的を、しっかり握った。
「じゃあ行くぞ、アイガ!」
「ジ」
俺は深く息を吸うと、勢い良く息を吐くのと同時に上向かってに木の板全て投げた。
空でバラける木の板をしっかりと目視し、自身の腕から小さな石の弾丸を浮かばせるアイガ。
木の板の上昇が終わり、落下し始めたところでアイガは、的のある方に向け腕を突き出した。
「アイガ、射出!」
「ジ!」
俺の掛け声を合図に浮かばせていた石の弾丸を放つと、それぞれが違う軌道を描きつつ的へと向かって行く。
数秒もしない内に全ての的を打ち砕いた弾丸は、そのまま飛んでいくと危ないからアイガに落としてもらった。
「以上です」
「………わかりました。
凄い腕ですね」
「ありがとうございます」
俺の発表が終わった時、殆どの生徒は特に感じたものはなさそうだったが、ごく一部がジッとアイガの方を見ていた。
弾丸の軌道が一個一個違うことに気付いた人たちだろう。
昔やった実験で特殊技が命中率によって効果範囲が変わることが分かったんだが、今回の射撃訓練で物理射出系は対象に向けて若干ホーミングするということが分かった。
その軌道は物理法則を無視して、不可解な軌道を描き必中する。。
……ロックオンは予想以上に有用な技だった。
きっとアイガをジッと見ている人達は、避けられない弾丸を放つゴーレムが敵にまわった時にどれだけ厄介か分かったのだろう。
そんな視線を感じていると、テリーが近づいてきた。
「アイガ凄いな! あの石つぶては避けれそうにないぜ!」
「テリーこそ、いつの間にあんな飛行覚えさせたんだ?
あんな軌道描かれたら魔法なんて当たらないぞ?」
俺とテリーは互いを讃えながら、その後の品評会を二人で鑑賞した。
次は主人公自分の理想の姿になるの巻