第45話 炎蛇からの問い
「レッド君、少し話をしないか?」
「はぁ……」
スレイプニルの舞踏会からしばらく経ったある日。
俺は授業の後にコルベール先生の部屋へと招待された。
部屋の中はコルベール先生らしく、発明品が至る所に転がっている。
ヘビ君とかヘビ君とかヘビ君とか………。
「あぁ少し片付いていないが、そこら辺に椅子があると思うから、そこに座ってください」
「はい」
少し……少しか?
まぁコルベール先生だし、しょうがないね!
「今失礼なこと考えなかったかい?」
「いえ、そんなことはありませんよ?」
「そうか……ならいいんだ」
いやぁビックリしたぁ!
所で俺は何で呼ばれたんだ?
今回は俺何もやってないんだけどな。
「今回呼んだのは、少しレッド君と話をしてみたくてね」
「そうなんですか」
話ねぇ……。
「いきなりだけどレッド君、君は力の使い方についてどう思う?」
「えっと……ちょっと話の意図が見えないのですが」
「君は鍛えている、それこそ他の生徒たちとは段違いな位に……。
その力は何のために使う気なんだい?」
「(そういうことか……)前に話したと思うんですが?」
「確かに聞きましたが……のんびり暮らすのに何故あれほどの力が必要なのですか?」
「これほどと言うと?
僕は唯のラインメイジですが?」
なんのことを指している?
格闘技? いや危険な技は学園で練習していないからあり得ない。
魔法か? 確かに圧縮は高威力だけど、そこまで騒ぐほどじゃないだろう。
じゃあなんだ?
「君自身の魔法もそうだが、それ以上に君の使い魔……アイガ君と言いましたか?
彼の能力は正直異常だ」
見せていない自己修復機能が一番ヤバいんですが……言えねぇ、絶対言えねぇ。
「品評会の時に披露した同時射撃は、弾の一つ一つが違う軌道を描きながら、動く的へと吸い込まれるように当たっていった。
もしあれが人を的にしたのなら、容易に命を奪うことが出来るだろう。
君は一体何処を目指しているんだ!!
そうだ、それにこの間の舞踏会で見た君の理想の姿も気になった!
何だあの人物は?!」
アーカードさんです……。
やっぱりあの時の視線の一つは、コルベール先生だったか。
「まるで化け物じゃないか!!
あんな威圧感を放つ相貌に今まで私は会ったことが無い!
君は彼の何処を理想としているのだね!」
「いや、それは……」
それはある意味当然です。
あの人吸血鬼ですし、数えるのが馬鹿らしくなる位人殺しまくってますから。
それでも彼は化け物としてのプライドがあるから、無駄な殺しはしませんよ?
っていうかこの世界にあの方居ないし、いたら大変なことになってますよ。
主にロマリア辺りが……。
「いや、それは良いとしよう。
私が聞きたいのは君の力の使い方についてだ!
君はまだ力の使い方を間違ってはいないが、間違ってしまってからでは遅いんだ!」
コルベール先生……貴方が心配してくれているのはわかる。
でも貴方は自身の過去に捕われ過ぎていると俺は思う。
軍において上官の命令は絶対なのだから……。
まぁコルベール先生のような経験をしたことがあるわけじゃないから、ハッキリは言えないんだけどね。
「僕の力の使い方は、のんびり暮らしていくためですよ」
「本当のことを言いなさい!」
「貴方は僕を何だと思ってるんですか……。
本当のことですよ」
「……なら詳しく聞いてもいいですか?」
「のんびり暮らすといっても、もし盗賊や魔獣が領に攻めてきたらのんびり所じゃないですからね。
もし飛竜が来たりしたら今の僕じゃ撃退出来ないかもしれない。
ならもっと鍛えなければ、静かに暮らすことなんかできない」
「……本当にのんびり暮らしたいというのが理由みたいですね」
何を当り前なことを言うかね。
俺信用なさすぎだろ……。
隠しごとも少なくないからしょうがないか?
「一応舞踏会で成った人は、自身で何でもできるという万能性に憧れていたので、あの人の姿になったんだと思います。
因みに威圧感とかは、きっと傭兵とかやってたせいだと思います」
「そうだったのですか」
ごめんコルベール先生。
これに関してはボカシまくってる。
流石に吸血鬼って言ったら正気を疑われそうだし、下手にロマリアに情報がバレたら俺異端審問されるよ。
コルベール先生は、原作でフーケことロングビルにめっちゃ情報漏らしてたし……あんまり口が堅くなさそうだもの。
「どうやら私の考え過ぎのようでしたね。
疑ってしまってすいません」
「いえ、気にしてませんから」
「それはありがたいです」
その後は延々と火の力を使った発明品の説明や、今作っているものの説明をされた。
………凄いとは思うんだけど、如何せん長い。
しかも下手に反応すると、話が伸びていくから相槌も考えなきゃならん。
話が終わる頃には、俺の精神疲労はMAXに近かった。
お疲れ俺……今日は早く眠ろう。