第46話 卒業
ついに俺が学院から卒業する日が来た。
長いようで短かった学院生活。
思い出されるのは……テリーとアンディとの訓練の日々。
あとアイガとの触れ合い。
他? 知らんがな!!
決闘や舞踏会なんてなかった!
「レッド、どうした?」
「いや、なんでもないよ?」
実は現在卒業パーティの真っ最中。
俺はテリーとアンディと一緒に食事を摘まみながら、過去を懐かしんでいた、
「レッドはこの三年間どうだった?」
「僕は結構楽しかったよ。 そういうテリーは?」
「俺も楽しかったぜ! レッドにも会えたしな!!」
「……ぼ、僕もだよ」
そんなストレートに言うなよ!
照れるだろうが!!
「レッド、兄さん……何か怪しい空気になってる気がするよ?」
「ん? なにがだ?」
「………」
ん? さっきから変な視線が……何を見ている女子!!!
そんな目で俺達を見るんじゃない!!
そこ! 頬を赤らめるな!!!
「なんかレッドの顔色が凄く赤いんだけど……」
「どうした? 風邪か?」
「いや、なんでもない。
とりあえずこの話はもう終わりにしよう」
終わらないと俺が困る。
俺はノーマルなんだ!!
「ところでテリーは卒業したらどうするんだ?」
「あぁ俺は実家に戻って、親父の手伝いしながら、色んな事学ぶつもりだ」
「以外とマトモで、僕はビックリだよ。
てっきり全てぶん投げて旅にでも出るかと思ったよ」
「俺は、お前がどんな目で俺を見ていたか気になるぞ?」
「もちろん頼れる友人さぁ」
「うっわ、凄い腹立つ顔しやがって!」
笑顔でドツキ合う俺とテリー。
そしてそれをちょっと離れた位置から、微笑みながら見ているアンディ。
周囲には女子がなんか変な顔で俺達をジッと見ている。
何だこのカオス。
「はぁはぁはぁ……ところでレッドは卒業してからどうするんだ?」
「僕も似たようなものだよ」
「ほぉ……俺はてっきり森にでも引きこもって、隠居するのかと思ったぜ?」
「へぇ……テリー、君覚悟できているよね」
「上等だ!!」
「「表に出ろ!」」
「まぁまぁ、落ち着きなよ二人とも」
そんな馬鹿話ばっかりしながらパーティの時間は過ぎ去っていく。
途中コルベール先生と学院長が今度家の両親に挨拶に行くという宣言があったりした。
そしてそんなパーティも終わり、学院最後の夜がやってきた。
最初はベットに入ってすぐに寝ようとしたんだが、学院での3年間を思い出すとなかなか眠れない。
俺は気分転換に、アイガに会いに行くことにした。
アイガとはこれでお別れと言う訳ではないが、アイガにとってここは短い間ではあるが最初の住処になるわけだ。
何か思い入れもあるのかもしれない。
そんなこと思いながら使い魔宿舎へと向かって行った。
「アイガ、お前は学院生活楽しかったか?」
「ジ?…………ジ!!」
「そっか、俺も楽しかったよ」
「ジジ」
「そういえばアイガには、まだ俺の家のこととか話してなかったな」
俺はその後、父さんと母さんのこと、俺の昔話とかをアイガに話して聞かせた。
アイガは言葉を喋ることは出来ないが、相槌や首振りで俺の話に反応してくれていたのでとても話しやすく、俺は眠気に襲われながらもつい話し続けてしまったが、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
そんな俺にアイガは周囲から干し草を集めて掛けてくれた。
「ジジジジ……」
俺が学院を出る朝。
それぞれが自分の家の馬車なり、何なりで帰っていく。
良く見るとテリーに告白している女の子達がいた。
殆どが断られていたが、マリーの返事だけは色よい返事を返したらしい。
なんか顔と顔が近づいて行ったので、俺はマッハで顔を背けた。
しばらくすると、テリーはマリーを見送ったのか、こっちに近づいてくる。
「よぉレッド、なんでそんな目でこっちを見るんだ?」
「いやぁ、お幸せにね?」
「あぁ見てたのか……」
「まぁね……それは良いんだけど、もうあまり時間なさそうだね」
テリーの家の使用人がこっち見てるし。
「あぁ、でもお前に言っておきたいことがあってな」
「?」
「今日俺達は学院からでて、家に戻る。
だが……いつでも会いに来てくれよ!
お前は俺の相棒だからな!」
「テリー……。
うん!そうだね!
テリーこそ何時でも来てくれていいから!」
「「また会おう!」」
俺はテリーを見送って、テリーの乗る馬車が見えなくなるまで手を振り続けた。
横にいるアイガも小さく手を振っていた……微妙に萌えたのは俺の中だけの秘密。
テリーも見えなくなってしばらく経つと、俺の家の馬車がやってきた。
「レッド! 迎えに来たわよ!」
「母さん!? 何で母さんが!?」
「なによ〜迎えに来ちゃいけないって言うの?
私の知っていたレッドはもういないのね……よよよ〜」
「(テンション高くね?)いやいや!母さんが迎えに来てくれて嬉しいなぁ!
すっごくうれしいなぁ……」
「ワザとっぽいけど許してあげるわ。
それよりその子が貴方の使い魔?」
「ジ?!」
母さんのテンションについていけていなかったアイガは、いきなり自分のことに話が飛んで驚いているようだ。
「あ、うん。 アイガって言うんだ。
アイガも挨拶して?」
「ジ!」
「あらあら」
アイガは、上半身を90度曲げてお辞儀をした。
母さんは見た目に似合わずコミカルな動きをしたアイガに興味津々なようだ。
これは馬車の中で色々聞かれそうだ……頑張れアイガ!
俺はアイガに重量操作の魔法を掛けて馬車へと乗せた。
こうして俺の学院生活は幕を閉じた。
相棒とのしばしの別れを経験し、俺はまた少し成長できた気がする。
今度会う時までにもっと強くなろう……テリーに笑われない様に!
「ジーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「あらあら、もっとお話をしましょう?」
………とりあえず今は母さんからアイガを助けることに集中しよう。
さぁまた実家フェイズだ!!!!