第47話 新旧相棒対決
長い間馬車に揺られて、やっと家に到着した。
長期の休みには帰ってきていたけれど、やっぱり家は良いな!
すると母さんは俺より先に馬車を降りて、両手を広げた。
「おかえりなさいレッド」
なんか凄く嬉しかった。
恥ずかしかったから抱きつきはしなかったけど、出来うる限りの笑顔で
「ただいま母さん」
と一言だけ返した。
とりあえず母さんとはそこで分かれて、俺は父さんに帰って来たことを伝えるために、父さんの部屋へと向かった。
因みにアイガは俺の後ろをついてきてる。
父さんにも顔合わせしておきたいしね。
俺は父さんの部屋のドアをノックし、中へ入る。
父さんは休憩中だったらしく、椅子に座りながらグラエナの頭を撫でていた。
「ただいま父さん」
「あぁ、おかえりレッド。
後ろにいるのは、お前の使い魔か?」
「うん、俺の相棒アイガだよ」
「ジ!」
父さんとグラエナもやっぱりアイガが気になるらしい。
まぁ見た目はゴーレムだしね。
それにグラエナにとっても興味深い存在だろう。
なんてったって一度も会ったことの無い伝説級のポケモンなのだから。
それに前回の休みの時は、馬車の大きさの問題でアイガを連れてこれなかったから話だけはしていたから、ゴーレムと間違えることは無かったようだ。
「本当に見た目ゴーレムのままなんだな」
「見た目だけだよ……実質この子殆ど無敵だから」
「どういうことだ?」
「この子にコアは存在していないらしくて、一度に欠片も残さず消滅させなければ、周囲から石を手繰り寄せて自分の身体を再生できるから……」
「………何だその凄まじい能力は?!」
しょうがないじゃないか……本来ならクリアボディっていう特性のはずなんだけど、図鑑の説明が特性になってしまってるんだもの!
「いや、他にも凄い攻撃方法を持っていたりするんだけど?」
試してないけど大爆発、破壊光線、アームハンマー、電磁砲辺りは威力がとんでもないことになってそうなんだよ。
「いや……もういい、充分だ。
アイガとやら、あまり派手なことをするなよ?」
「…………ジ」
「レッド!!
コイツ絶対何かやらかすぞ!」
「いや、父さん。
アイガの茶目っ気だよ………たぶん」
確かにアイガは、派手にぶっ放すの好きだからなぁ……。
指示を正確に与えないと、とんでもないことになるかも知れない。
流石に味方に被害を与えるほど、馬鹿じゃないのが唯一の救いかな?
その後学園でどんな事があったとかを父さんに説明してたんだけど、ある程度話が終わったので一旦部屋に戻ることにした。
「じゃあとりあえず、俺部屋に戻るよ」
「あぁ夕食の時にまた会おう」
俺はそういって、アイガを連れて部屋を出る。
アイガは何かを考えるように若干下を向いていたが、特に問題は無いと思ったのでそのまま自分の部屋へと向かった。
そして自分の部屋に戻った俺は、久しぶりにこの世界における、初代相棒ことニューラを呼び出すことにした。
しばらく会ってないから、俺も会うのが楽しみだ。
「来いニューラ!」
いつも通り光の中から俺に向かって飛び出すニューラ。
だがそこからはいつも通りじゃなかった。
「ジ」
「ニャ!?」
ニューラの進行方向、俺の前にアイガの大きな手が翳されたからだ。
飛んできたニューラは、ベチャっとアイガの手に顔からぶつかった。
それはまるでアメリカンコミックの様に……。
「………大丈夫か?」
「ニャーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「ジ!」
何かアイガが誇らしげに胸を張っているのが気になるが、とりあえずニューラは顔を押さえながらゴロゴロと転がっている。
そりゃ痛いわ……石の壁に突っ込んだ訳だからな。
ニューラもしばらく転がっていたが、痛みが治まったのか立ちあがって、再び俺に向かおうとしたが、やはり立ちはだかる石の壁。
「……ニャニャ!」
「ジ!」
なんか視線で熱いバトルをしている気がする。
たぶん「どきなさい!」「だが断る!」と言ったところかな?
………なんでアイガはニューラをこんなに敵視する?
「アイガ?
ニューラは敵じゃないぞ?」
「ジ………チッ」
舌打ち!?
なんか異様に腑に落ちないんだが……。
何かニューラも機嫌が悪そうだし、とりあえず自己紹介させようか。
「とりあえず俺の使い魔でレジロックのアイガ」
「………ジ」
「俺が最初に呼び出した子のニューラ」
「………」
「ニューラ?」
「………ニャ」
「これから二人は良く会うことになると思うから、仲良くな?」
「「………チッ!」」
だから何で舌打ち!?
っていうかアイガは舌ないだろ……どうやってんだ?
こんな感じにいきなり波乱が起こったが、ニューラの姿を見て改めて実家に帰ってきたなぁと感じた俺だった。
その後も夕食の時間までまだ時間があるので、ニューラに学園での話を話して聞かせていると機嫌は段々戻って行った。
しかしそれもアイガの召喚をするまでの話。
アイガが出てきてからは、少しずつ頬が膨らんでいき、顔もソッポを向いて行った。
なんかそんな姿も可愛かったから、とりあえず頭を撫でていたら、今度はアイガが微妙に機嫌が悪い気がする。
具体的に言うなら俺の肩を小突いている。
地味に痛い。
「どうしたアイガ?」
「………ジ」
アイガが機嫌悪い理由も分からないままニューラを撫でていると、ニューラが一瞬アイガの方を向いて嗤う。
瞬間二人は立ちあがって距離を開けた。
アイガは腕をニューラへと向け、ニューラは爪を伸ばす。
俺はいきなり始まった一触即発の空気に戸惑いながらも止めるために動いた。
「待て待て!
なんでそんなに仲が悪いんだ?」
「ジジ!」「ニャー!」
「いや、分からないから……」
俺はとりあえず翻訳を頼むために、ホロを呼び出した。
すると二人の言い分は「新入りが生意気」「私こそが相棒にふさわしい」ということだった。
正直嬉しいが、仲たがいは困る。
故にとりあえず苦笑いしているホロに礼を言ってから戻し、二人に話しかけた。
「俺は二人とも相棒だと思ってるし、大切だ。
だから仲たがいされると……その、困る」
俺の言葉を聞いてくれたのか、なんとか戦闘態勢は解いてくれたが、互いの顔は見ようとしない。
ちょっとずつ仲良くなってもらうしかないか……俺はこれからの苦労を思うと少し頭が痛かった。
もうそろそろPVが百万………何これ怖い。
嬉しいけどね!!