第58話 慎重な戦い
〜コルベール side〜
コルベールが中庭に着いた時にはもう、二人は向かい合っていた。
「レッド君、ギトー先生! 落ち着いてください!」
「あぁ、コルベール先生。
僕は落ち着いています。
今から決闘するから離れていた方がいいと思いますよ?」
「ちょうど良かった。
コルベール先生に見届け人を頼みます。
彼の負け様をしっかり見届けてくださいよ!」
駄目だ……この二人止まらない。
ならせめて危なくなったら私が止める。
それにこの決闘でレッド君がギトー先生を納得させれば今後こういったことは起こらないだろう。
唯でさえ18歳で教師になるんだから、実力を示さないと認めてもらえないかもしれない。
「分かりました……しかしルールは守ってもらいます。
一つ、相手を死に至らしめるような攻撃をしない。
二つ、気を失った場合、その時点で相手の勝ち。
三つ、杖を折られた時点で負け。
以上の三つを守ってください。」
「……分かりました」
「いいでしょう!」
「では、私が合図をしますので……」
私は諦めて、なんとか怪我がない様にすることを心に決め、この決闘を見守ることにした。
〜side out〜
コルベール先生は、本当に戦いが嫌いなんだな……。
でも今回は止まる気がない。
コイツは両親を馬鹿にした!
俺自身変わってるのは認めるし、18歳で教師になるということに疑問を抱くのも分かる。
だが、両親は関係ないだろうが!
原作でも人を下に見たり、上にあがっていく人間を妬んだりするといった小物だったが、こんなにウザったいとは思わなかった。
もし今回キレなかったとしても、いつか別の形で決闘の様なことになっていただろう。
「私が投げたコインが地面に着くのが開始の合図と言うことで……」
「分かりました」
こいつは腐ってもスクウェアだ。
実戦経験あるのか知らないけど、俺より上のランクの魔法使いだ。
なら俺が勝つためにどうすればいい?
「では……ふっ!」
コインが空に向かって飛んでいく。
俺がコイツに勝つには油断している内に一気に決めるのがベストか……。
それともアイツが知らない魔法で攻めるか?
とりあえずは、速攻かける!
そうして地面にコインが落ちる。
チィンという音と同時に俺とギトーは動きだした。
俺はその場から動かなかったが、ギトーは一回下がって詠唱を始めた。
「(ライトニングクラウドか!?)アースハンド!」
「っ!?」
俺はアースハンドでライトニングクラウドが発動する前に、ギトーの体勢を崩した。
そしてすぐに解除し、今度は逆に俺が攻勢に移る。
「ボトムレス・アース!」
俺は地面に杖を向け、少し前に出来るようになったネタ技というかネタ魔法を放った。
するとギトーの足が徐々に地面に沈んでいく。
「な、何だこれは!?」
「土土水のトライアングルスペルですよ……」
ギトーはそこから抜け出そうと足を動かすが、もがけばもがくほど身体が沈んでいく。
次第に沈んでいくギトー先生だが、今は気付いていないようだが、フライで抜けだされるかもしれない。
しかしそんなことはさせない。
「よいしょっと!」
「な! グッ!?」
俺は近くにある石を掴み、思いっきり投げつける。
痛がって背中を曲げるギトー。
しかし投げ続ける。
「やめっ! いッ! やめろ!」
「………」
5回ぐらいの投石が終わると、腰まで地面に埋まったから、そこで一旦投石を止める。
そして一回魔法を解く。
すると地面は元の地面に戻り、ギトーは土に下半身を埋めた状態で動けなくなった。
しかしこれじゃ抜けだされるかもしれない。
「錬金」
「なにをするつもりだ?!」
俺はギトーの埋まった辺りの土を鉄に錬金した。
「どうしますか?」
「何がどうしますかだ! 私はまだ魔法を唱えられ「アースハンド」る……」
土で出来た手で杖を叩き落として、腰にある剣を抜いて首に添える。
「どうしますか?」
「わた…………だ」
「はい?」
「私の……だ」
「聞こえませんよ?」
「私の負けだ!」
俺はその言葉を聞いて、コルベール先生の方を見た。
コルベール先生は苦い顔をしながら、俺の勝利を告げた。
「レッド君の勝ちですね……。
では彼の拘束を解いてください」
「分かりました」
まぁ今となっては拘束する必要もないので、普通に錬金を解く。
「すみませんギトー先生、やり過ぎたかも知れません。
しかし自分を馬鹿にする分には構いませんが、両親を馬鹿にするのは止めてください。
僕は両親を尊敬しています。
なので深く知りもしない人に馬鹿にされるのは耐えられないのです。
言うこと聞く云々の話は二度と両親を馬鹿にしないでくれるだけでいいです」
「………」
悔しそうに俺を睨むギトー先生。
コイツ絶対自分が悪いと思ってねぇな……次喧嘩売ってきたら装備してでも潰そう。
そして未だ座り込んでいるギトーを置いて、俺とコルベール先生は学院内へと戻って行った。
「レッド君……勝つためとはいえあの戦い方はどうなんだい?」
「どれのことでしょうか?」
「投石のことです!」
確かにやりすぎと感じるかもしれないけど、もしあの時石を投げなかったらフライで逃げられたかもしれない。
魔法で手痛い反撃を受けたかも知れない。
「しかし投石で集中を途切れさせなければ、魔法で反撃されたかもしれません」
「ですが!」
「僕としては絶対負けられなかったので、念には念を入れたんですが……気分を害してしまったならすみません」
「……いえ、勝つために最善を尽くすということ自体は分かりますから」
それからコルベール先生は何かを考えている様な表情で、学園長室に戻るまで終始黙っていた。
主人公の勝ち方がセコイとかいうのは聞きません!!
っていうかギトーの実力が分からないので、めっちゃ慎重に戦った結果がこれです。
最初速攻掛けて拳でフルボッコしようか迷ったんだけど、風のメイジに早さで勝てるか分からなかったんで、足を止め、身体を拘束し、杖を奪うという形にしました。
次回やっと原作キャラ達入学