第61話 初めての授業
朝起きて、授業の準備をする……何か俺今教師やってるっていう感じがする!!
まぁ資料読んで授業計画立てていた時点で大分実感してたんだけどね?
やっぱり直前となると緊張するもんだ。
俺はどんな授業をしていくかを頭の中で確認しながら、ゆっくりと教室へと歩みを進めた。
教室の前で一回深呼吸をして、俺はドアを開ける。
「今日からあなた達の水の授業を担当するレッドです。
授業を始める前に言っておきますが、分からない部分があれば質問してくれて結構なので、挙手してください。
それでは授業を始め「ちょっと待ってください!」はい、何ですか?」
「やっぱり同い年くらいの貴方に教えられるというのは納得いきません!」
やっぱこういう意見が出てきたか……。
っていうか誰だこの子?
まぁいい、とりあえず他の生徒達も同じ意見みたいだな。
例外はモンモランシー嬢、ルイズ嬢、ギーシュという俺の知り合いと、俺に興味の無いタバサ嬢位か?
モンモランシー嬢が心配そうに俺を見ているが、他の二人はジッと俺を見ている。
タバサ嬢は本を読んでいるが……。
「ならどうすれば納得しますか?」
「まずレッド先生は何クラスですか?」
「隠していてもしょうがないですから言いますけど、水と土のトライアングルですね」
俺のクラスを聞いて半分くらいの生徒が納得してくれた。
っていうか俺のクラスを聞いて一瞬だけどタバサ嬢が俺を見た。
「そうですか……なら実力はあるみたいですね」
「(あの子何様なの? レッド兄様に向かって……)」
「でも私は貴方を教師として見れません」
「それはこれから私の授業を受けていく中で認めていってください。
僕自身も先生として完璧とは言えないので、成長しなければ成りませんしね?」
まぁ想定の範囲内かな?
っていうか半数が納得してくれただけでも予想以上だ。
それじゃあ授業を始めるとしますか!
先ずクラスのメンバーに自己紹介をしてもらったのだが、キュルケとルイズ嬢が微妙に喧嘩したりして少し波乱はあったが、特に大きな問題はなく終えることができた。
そしてここから俺の初めての授業が始まる。
「まず君たちの中にある魔法の認識を変えてもらいたい。
皆さんは水が攻撃に向いていないと思っていませんか? 実際はそんなことありません。
確かに火の魔法の様に見た目大きな怪我を負わせるのは、簡単ではありません
ですが不可能ではないのです。
治療やサポートという効果の影に隠れているせいで、水の残酷さが隠れてしまっているのです」
「水の残酷さってなんですか?」
「いい質問ですね。
貴方は一瞬で焼け死ぬのと、じわじわと息が出来なくて死んでいくならどっちが辛いと思いますか?」
俺の質問を聞いた男の子……っていうか殆どの生徒は顔を青くしている。
「それは……息が出来ない方が辛いと思います」
「そうですね……まぁ水が氷になったりした場合話が変わってくるのですが、火だって超火力で一気に焼かれてしまえば苦しみは少ないかもしれませんが、そんな火力は早々出せません。
故に先ほどの質問の意味など殆ど無いようなものです。
しかし水の魔法だろうと容易に人を傷つけることができるということが分かってもらえたと思います」
先ほどからタバサ嬢の視線が気になる。
偶に顔を上げて黒板を見ているということは、多少授業に興味を持ってもらえてるのかな?
一応成り立てとはいえ、教師になったからには授業を聞いて欲しいから頑張らなきゃな。
「攻撃力では火に負け、隠密性では風に負け、単純な防御力では土に勝てない。
しかし水は決して戦闘において無能なんかではない!
サポートを馬鹿にしている人は今すぐその考えを捨ててください。
例えばスリープクラウド……これは相手に眠りをもたらす雲を作り出す魔法ですが、これを使えば自分よりランクの低い相手を眠らせることが出来る上、同ランク以上の相手だとしても当たったら眠気は訪れる。
要するに集中力が下がるということなのです!!
魔法に大切なのはイメージと集中力、そして精神力。
それらが一つでも欠損すれば魔法は不完全なものに成り果てる」
割とみんな真剣に聞いてくれているみたいだけど、やっぱり実感が沸かないのだろう。
首を傾げている子も何人かいる。
「簡単に言うと絡め手を使えばクラスが上の相手にも勝てる可能性があるということだよ。
そして水の奇襲は避けにくい。
風も厄介だが、水も厄介なのです」
「え? でも水は目に見えてしまうし、風に比べれば……」
「確かに風の魔法は隠密性に優れていますね。
しかしそれは晴れの日に限ります。
もし雨の日ならば、雨の粒が風に飛ばされて風の通り道が見えるのです。
水の場合は相手が水上、または水中にいた場合は風の様に見えない攻撃を加えることが可能になるのです」
「おぉ〜」「確かにそうかも……」とか言う声が聞こえてくる。
タバサ嬢もしっかり俺の授業を聞いている。
そして俺の知り合い群は、俺が予想以上に真面目な授業をしているので驚いているようだ。
「そろそろ時間かな?……今日はここまでとします。
次回は水の秘薬の有用性とその副作用について説明します」
俺はそう言って教室を出て行った。
「ふぅ……なんとか無事に授業を終えたな。
まだ若干俺が教師で納得いかない子がいるようだけど、これからの態度で表すしかないからな!
頑張るとしよう」
こうして俺の初授業は幕を閉じた。